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INTELのセットトップボックス市場参入のNEWSで考えたこと

3月12日にWSJ(ウォールストリートジャーナル)に掲載されたインテルのセットトップボックス(以下STB)市場参入のNEWSは非常に興味深かった。以前このBLOGにも書いたTV市場で生き残れる可能性の話がこんなに早い段階で現実味を帯びてきたという事もさることながら、インテルの壮大な構想を垣間見ることができたからだ。インテルは以前からGOOGLEをはじめとしたインターネット系のTVメーカーにチップセットを供給しているのだが、今回は自ら、このコンスーマー市場への参入を決定した(まだ100%確定ではないらしい…)。 BtoBを主体としてチップセットでは長年王者として君臨してきたインテル(未だに半導体市場の20%を抑えている)が、今回STBへの参入によって同社がこの先、このシステムとを利用して、さらにホームネットワーク市場の根幹を牛耳ろうというわけだ。勿論APPLEをはじめ、この先多数の強豪の参入は必至だがチップセットでイニシアティブをとっている点が同社の最大の強みだろう。
半導体エキスパートの先輩からの報告で、今年のCESでINTELは自社のブースでスマートフォンとTVをワイヤレスでつないでアプリケーションを走らせるDEMOを披露していたという。勿論これは、将来的にスマートTVに参入してくるメーカーに彼らのチップセットを売り込むためのものとも思えるのだが当然自社製品として、その技術をSTBに集約すれば彼ら自身がホームネットワークプラットホームの中心を抑える事も可能になる。想像するに家の中に設置されたインテルのSTBは、スマートフォンをリモコンとしてのインターネットTV機能に加え、ブルートゥースでの映像配信が完成すればICチューナを複数搭載することにより、家の中にある数台のディスプレイへの通常のブロードキャスティングの個別映像配信も可能になり、加えて家中のいろいろな家電製品のコントロールを可能に…といった具合に、次々を多様性のある機能(この部分はCLOUDに集約)を実現することができるものになる。そうなると市場としては一家に1台の需要が考えられるのだ。ここまで先を見越した戦略が本当であれば、とにかく凄い。こう考えるとICメーカーであるインテルが昨年セキュリティソフト大手のMcAfeeを買収するという一見無縁に見えたNEWSも(勿論SSDの普及により最近ではUSBにも埋めこみ型のセキュリティソフトが必要になってきているが)、コンシューマー市場参入を視野に入れていたとすれば「なるほど」と納得できる。
最近のデジタル化とネットワーク化の急速な進歩に伴い、このテクノロジーを利用して今年のCESで大きな話題を呼んだNEST(学習機能を持った空調コントロールシステム)のように、既存の設備やインフラをよりスマートにして新しいネットワークにつなげ省エネ化を実現するという部分に新しい市場の可能性がたくさん生まれてきている。日本でもLED照明の普及に伴い、スマートフォンと連動して出勤した社員が会社の玄関を入る際の認証で自分の机上のシステムと頭上の照明をオン/オフできる省エネモジュールを開発したスタートアップもある。
考え方によってはこれらを統合するプラットフォームとして、このインテル製のSTBが家内の必需品となる可能性は十分にあるのだ。この先数年というわけにはいかないだろうが、10年先には間違いなく、ここに家庭医療や教育といった部分も統合されてくるだろう。この10年、20年先を見越しての壮大な事業構想をもち、それをきちんと実践するところがアメリカのIT系大企業の凄いところだ。残念ながら既得権に胡坐をかいて未だに受信メイルを秘書にプリントアウトさせているような役員が多数いるであろう今の日本の大企業からは、このような凄さというか迫力は全く感じられない…。
実は、この新しい市場はハードウェア面からみるとすでに確立された技術の応用が中心でマネタイズするのは少し難しいかもしれない。しかしながら、ハードウェア生産需要の増加に伴い、その需要によってインテルのような素晴らしい里親(前々回の記事参照)にうまくADOPTされれば日本の中小企業も既存の優れた技術を駆使できる可能性もあるし、また独自にこの新しいネットワークから生まれる省エネ市場への参入の可能性も今の日本の中小企業の技術力をもってすれば十分にあると思う。こんなところに大いに期待してみたいし、是非少しでも考えてみてもらえたらと思う。

 

 

食品製造業が熱い!

先週はサンディエゴに出張。途中LAにて知り合いでファクトリーオートメーションを手掛けている知り合いとランチを共にした。話の中で、1年ぐらい前から日系の食品製会社からのライン増設に伴うひきあいが増えているという。これにはどうも円高が大きく関係しているらしい。昨今ではIT産業で話題に上ることが多いアメリカの経済界だが、実は農業大国として未だに大豆、トウモロコシ、小麦等々の一大生産国だ。日本の大手食料品メーカーは、これらを原材料として日本(もしくはアジアの工場?)に輸入してそれを食品に加工していたのだが、円高のメリットをさらに生かすために原材料をアメリカで加工し製品としてアメリカ国内の販売や日本、アジアへの輸出に充てるスタイルを強化しているとのことだ。確かに加工費の高い日本での加工や原材料の出荷コストと時間もかかるアジアでの生産の価格的なメリット分が25%もの円高によって減少している状況を見ると、なるほど非常に納得がいく。実際にカップラーメンを製造する東洋水産や、日清食品はアメリカでも人件費が高いといわれているカリフォルニアのLA近郊に10ライン近い大工場を所有しカップラーメンを量産している。アメリカで販売されているこれらメーカーのカップヌードルは殆どがMAME IN USAだ。
また日本酒の製造メーカーである月桂冠や大関、宝酒造もカリフォルニア米を使用した酒造りを強化し、米国や南米への輸出を行っている。そのほか、KAGOMEや、MIZUKAN、KIKKOMAN,CALBEE等々、日本でも有名な各メーカーはその製造で非常に景気がいい。
さてさて、このような需要にはやはり高度な技術と信頼性のある日本のFACTORY AUTOMATIONが不可欠に思われるのだが、意外とこの分野での日系メーカーの進出は少ないようだ。そんな関係から知り合いは、かなり日本とも連携すべく奔走しているそうだが、なかなか供給が間に合っていない状況だという。その大きな理由はやはり食品関係ということで、その基準の違いや衛生上の規制におけるためらいがあるのだという。確かに日本の厚生省(いまもそうですか?)にあたるアメリカのFDAには訴訟大国のアメリカならではのかなり厳しい基準があるようだが、この基準、自分も実際にかつて飲食店の設備を手掛けていた関係で感じた事は思ったより複雑ではないということだ。逆に日本のほうが規制が厳しい(たとえばアメリカで一般に販売されているBBQグリルは日本には食品に触れるということで特殊は許可と承認がなければ個人輸入もできない。)ということを考えるとアメリカのほうが、考えようによっては最初の敷居を超えてしまえば案外簡単に行きそうな気がする(勿論きちんとした事前調査は必要になるかと思うが)。また食品製造ラインといってもその中には検査、洗浄、計量、梱包、充填といった数多くのプロセスがあり、これらを個別に考えてもがんじがらめの規制に縛られているということはないのではかと思う。自分自身の経験でもあるのだが、よく日本のメーカーに「御社の製品をアメリカで販売したい」と持ちかけた際、「いや、うちの製品はUL(電機製品規格)やOSHA(労働安全衛生)の規格に準じてないから」という話を返されることが多いが一般的にULは消費者向けの電気製品のの規格であり、工業製品や製造設備には適用されていないということがわかっていなかったりする。どうしても訴訟大国というイメージが強すぎるのかも知れない。いづれにしてもしゃんすは多分にありそうだ。我は!と思う会社はぜひそのあたりのリサーチからスタートしてみてはいかがなものか?かなり大きな需要があるのだ。もしかしたら、このビジネスだと円高は逆風だが、それにも勝る大商いができるかも知れない。

ビッグサイトの展示会を見て思った事

今週は日本出張、毎年この時期に開催されるアジア最大のエレクトロニクス製造実装技術展「NEPCON JAPAN」視察がメインの目的だ。この展示会はこの業界に入って以来、過去27年近くにわたり毎年欠かさず訪れている。最近では、この展示会に併設されて今のトレンドである「カーエレクトロニクス技術展」「次世代証明技術展」なども同時開催され(まあ一説には単独の展示会では十分な集客ができないという背景もあるようだが…)、現在のトレンドの産業における日本の技術力の詳細を一括で見ることができるとい点では非常に効率がよい。
 電子回路基板(PCB)に部品を実装する、という電気製品にはまず不可欠な製造プロセスを担う製造機械、実はこの分野で日本は世界のトップシェアを誇っている。昨今は需要の減少から韓国勢や一部ヨーロッパ勢もシェアを伸ばしているようだが、技術レベルでは圧倒的に日本製だ。大手のPANASONICをはじめ中小では富士機械製造など、この分野のブランド品として世界で圧倒的な人気を誇るメーカーもある。またYAMAHAやTDKなども未だに根強い人気をもつ。特に最近では、微小パーツの実装、これはスマートPHONEなどに使用される0.6mmX0.3mm角の部品をも確実に実装する機械精度が不可欠になりこの部分ではやはり信頼性という意味で日本製品にまた軍配が上がるケースが多いようだ。面白いのはJUKIなど、ミシン製造メーカーの大手もこの分野で結構根強い人気を持っている。かつて工業用ミシンでは世界的なシェア(未だに頑張っている)をもっていた同社が、その技術力を生かしミシン針の代わりに部品を実装するノズルを装着したシステムで他業種にも参入しているわけだ。これら実装機器メーカは先に書いたように確かに需要自身の衰退により十分な利益を確保できないという状況にあるのは事実だし、リーマンショックのあたりには少なくとも大手数社がこの業界から姿をけしてしまったが、製品がより小さく高機能になり部品レベルの形態が変われば変わるほど、そういうところに強みを出せる日本勢がシェアを確保し続けるような力強さを今回は感じることができた。
 今回の展示会でもう一つ面白いと思ったのは県単位、また市町単位で地方の行政がバックアップしていると思われる多数の中小企業が出展していた事だ。勿論この電子機器製造に関する製品を扱うところが中心なのだが中には「これは面白い」という商材もたくさん見受けられて、これはこれで非常に興味深かった。話を聞いてみても、技術的にそれなりにしっかりしていて、これだったらアジアだけでなく源流アメリカのR&Dでも興味を持ってもらえるのでは?と思えるようなものもあった。今までもこのような中小企業が独自に小さなブースを借りて出展しているケースは見受けられたのだが、今年はその数が新規で100社以上にもなっているところに、いい方を変えれば現在の日本の状況が今まで展示会に出展する必要もないほど安定していた需要の低迷に直面し死活問題になっている感もうかがえる。ただこれで自分たちが持つ製品のレベルや需要を肌で感じ、さらなる飛躍のためのステップとなれば十分に有意義ではないか。そして運よく新しい顧客や海外での需要を見出すことができれば、素晴らしいことではないかと思う。特に私のような海外にいるものが、そんな小さな優れた技術や製品をうまく見つけてグローバルの舞台に引っ張ってあげることは、やはり可能性としては十分アリなのだなという思いを新たにした今回の展示会であった。

TV市場で生き残れる可能性

非常に抽象的なタイトルだが、先週開催されたCES(CONSUMER ELECTRONICS SHOW)の数々のレポートを読んで、こんなことを漠然と考えてみた。想像通りTVに関して言えば前回に書いたGOOGLE TVのパートナーたちがその新しい機能のお披露目に割と力を入れていたようだ。スタイルとしてはインターネットTVから脱皮してスマートTVという位置づけになったことは明白だろう。
こうなるとTVの本体は完全にプラットホーム化するので、極端な話、何処で製造されようがこれは安いところで製造されるに越したことはないという自然な流れになる。またスマートTV というスタイルが一般的になり、この先数年は、勿論インターネットとの混在路線が続くと思うのだが、近未来ではブロードキャスティングの必要がなくなればチューナーも不要になるためにPCと大差がないようなSTB(セットトップボックス)スタイルが主流になることは容易に想像できる。勿論そのSTBの中にはCPUをはじめ、通信系やOSにかかわる数多くの新しい機能をつかさどるデバイス類は必要になるので、この辺りの需要が増大することは間違いがない。残念ながらMARVELLやNIIVIDA、BROADCOMと言ったアメリカ勢が強烈だが、日本勢には、まずここで何とか頑張ってほしい(村田、TDKみたいにパーツレベルでも)! 加えて注目したいのがディスプレイだ。今回はSAMSUNGとLGの55”の有機ELのパネルが非常に話題になった(有機ELのTVをいち早く世に出したSONYは、この分野から撤退との話…残念だ)が、これがこの先、有機ELのディスプレイとして本体とは別に販売される可能性は十分にある。また各社が力を入れている高機能3Dのディスプレイや4K2Kといわれる高解像度DISPLAY、CRYSTAL LED DISPLAYなど今回のCESでもいくつかの新しいスタイルのものが発表されたが、これらが将来的には顧客の要望やニーズに合わせて本体とは別に(単純に言ってしまえばパソコンのように)選べるようになっていく感じがする。加えてこの先、大型化が進む液晶パネル(SHARPは昨年これでアメリカ市場で巻き返した!)についても今後の需要はだいぶあると思う。ただコストが高いという難点がある。この分野、実は投影型のスクリーンもかなり面白い分野ではないかと思う。アメリカでは実際に三菱が頑なにプロジェクションタイプTV(80”90”)の製造販売を堅持し、数は少ないものの確実に業績をあげている(アメリカの中西部では寒い冬場は殆ど娯楽がないので、大スクリーンで映画やFOOTBALLを見るのが最高の娯楽です)。今後本体がプラットホーム化すれば液晶のクオリティに負けない100インチ以上の大スクリーンが個別に販売されていく可能性も十分にある。勿論STB本体にプロジェクション機能が付く必要があるが、これもそのうち今回発表されたSONYのプロジェクション機能付きのハンディカムなどを見るにつけSTBに標準装備されていくと思われるし、もしくは他の方法が出てくるかもしれない。この分野、日本のT社やD社がかなり技術力もあり市場的には強烈な影響力がある。このスクリーンに限らず、上記の液晶パネルでいえば未だにその内部に必要になる5枚以上のフィルム類は日本メーカーが独占的に製造しているものも多い。当然これらにかかわる数多くの協力工場にも十分にチャンスがあると思う。
だらだらと取り留めもなく書いてしまったが日本が先行し一時は世界を席巻したTVがデジタル化とともに大きくその市場をアジア勢に奪われてしまった現在、そして近未来にはTV自身のプラットホーム化によってそのスタイルをSTBに変えPCとの差が大きくなくなってしまえば、そこで日本勢がイニシアティブをとることは残念ながら非常に難しいかもしれないが、パーツレベル、そしてディスプレイであれば、まだまだ活路を見出すことができると考えたい。大手に限らず力のある中小企業を含めた日本勢がTV市場でグローバルに生き残っていく可能性は、ここに十分あるような気がする。

GOOGLE TVの方策は?

来週からラスベガスでコンスーマーエレクトロニクスショウ(以下CES)が開催される。TV業界ではいつもきまってその年の目玉のようなものがある(たとえば昨年は3Dなどなど)、けれども今年はそんな噂を聞くこともなく一体何が出てくるのだろうね~などと客先でも話していたのだが、年末近くになってi‐TVの噂がちらほら出始め、ここにきてGOOGLE TVが新たなパートナーとともに再出発というNEWSがリリースされた。今までGOOGLE TVはSONY(生産はメキシコのFOXCONNがメイン)とLOGITECHの2社だけだったのが、アメリカで絶大なシェアをもつSAMSUNG, VISIOに続いてLGもパートナーとしての参加を表明。基本的にはアメリカ国内のシェアの50%以上を占めるメーカーたちが全てGOOGLE TVのパートナーとなった事になる。
GOOGLE TV, 表現を変えれば当時で言うインターネットTVだが自分のブログにも以前書いたように2010年の終わりにSONYが受注し同社のOEM工場であるメキシコのFOXCONNでコードネーム”アシュラ”プロジェクトとして月産で10万台以上の鼻息の荒い数字を打ち出し2008年のリーマンショックで殆ど立ち直れないくらいボロボロになっていたメキシコ(ティファナ)のTV産業地帯では同社の関連協力工場でも歓喜に包まれながら生産がスタートされたにもかかわらず、翌11年の春ごろには生産のほとんどが打ち切りになってしまうという悲惨な状況で終焉してしまった事が強く印象に残っている。最初にパートナーとして同じくセットトップ型の販売をスタートしたLOGITECHも最終的には昨年の11月でその生産を中止している。それから1年もたたないうちに、今度はアメリカで大きくシェアを持つSAMSUNG, LG,VISIOが参画するというのは(残念ながら日本軍団はアメリカでのシェアは今ほとんどないのが現状です…トホホ)、何か特別な方策もしくは秘策(?)でもあるのだろうか?
先のGOOGLE TVの失敗の原因の大きなところは、業界ではキーボードが使いにくいとかコンテンツが煩雑、思ったより使えるものが少ない…という部分がクローズアップされていたのだが、私はSONYの場合、TVにこだわったところに大きな敗因があると思う。既に2011年と言えばどこの家庭にも薄型のデジタルTV は浸透してるので、新しい機能のTVとはいえ、そこにもう一台新たに販売価格$600(当時)の30”とか40”のTVを購入すると考えるとその必要性がないと判断されてしまったことが大きかったのだろう。マーケティングの失敗だ。それに引きかえ、ちょうど同時期に発売されたAPPLE TVは、最初からこれら既存のTVに接続できるセットトップBOX(以下STB)で、値段も$99と超お手頃価格。加えてI-TNUESの機能も勿論使うことができて利便性もありという事で実際のところはだいぶ売れているらしい。確かにこの価格であれば、プラットホームとして使える機能や配信数が少なくても何か一つでも利便性の高い機能(アプリ)が使用できればそれだけでも満足!という気になれるところも大きいかと考えられる(LOGITECHの敗北はアップルと同じ$99だったが、単に知名度のなさとコンテンツの少なさにあるのではないか)。いづれにしてもこのような失敗(実は自分もいろいろなプロジェクトがキャンセルになったりしてかなり大変だった)を目の当たりにしてきた自分にとって、今回のGOOGLE TVの巻き返しがどのような方策で展開されてくのか非常に興味のあるところだ。勝手な想像だが、この方策は機能的にインターネットTVがスマートTVに昇格するようなものではないかと思う。勿論自分自身でもインターネットTVとスマートTVの定義が不明瞭なのだが、単純なイメージでいえば、携帯電話で考えると、それにインターネット機能が付いたものと、それに加えて色々なアプリの使用ができるようになったもの、の差のような感じがする(あいまいでスミマセン)。兎に角、この先スマートTVがどんどん普及しGOOGLE TV(パートナーが主体生産だが)だけでなくAPPLEのi-TVも現実のものとなり、もっともっとハードウェアの需要が出てくれれば、これらの新機能TVはプラットホームとしての役割が非常に重要になりソフトが占める割合が大きくなってくるのでハードウェアでの出番は少ないかもしれないが、TVであれSTBであれ生産数が増大するということは製造業にとっては、電子、機構部品レベルの参入機会の増大や、もしかしたら有機ELの使用が本格的になり、これにかかわる関連部材や、またまた薄型対応に伴う冷却技術等の分野で大手が受注するOEMでの生産も含め、日本勢が活躍できる可能性は十分にあり、非常に望ましいことだと思う。
来週から始まるCESで、この新しいGOOGLE TV(スマートTV)がどのような方策(機能と性能)をもってお披露目されるのか今から非常に楽しみだ。

 

現状の雇用と経済について考える

 米国における雇用の情勢が全く先行き不透明だ。昨日発表された米国の失業率は9.5%で前の月から横ばい。今年の2~4月にはかなり失業率も改善し幸先の明るい状況だったのだが、ここにきてまた景気の足踏み感というか不透明感が顕著になってきている。失業率が一つの経済指標になっている現在の状況をみると、はたして将来的に本当に景気は良くなっていくのだろうか?そんなことについていろいろと考えてみた。
 少し前になるが、私にとっての恩師であるUさんと、久しぶりに食事をする機会を得た。今年の春から執筆業と投資家に加え日本の大手電機メーカーの社外取締役に就任され月一回の日本出張の合間に時間を作っていただき、短い時間だったが現在の日本の状況を中心に数々の貴重なお話をうかがうことができた(本当にありがとうございました)。そんな中で彼が最近読んだINTELの元会長アンディグローブ氏のアーティクルの話をしてくれた。その内容というのは簡単に言ってしまえばアメリカに製造業が戻ってこない限り経済の復興はあり得ない。というものだった。そして、製品に関税をかけてでも流失した製造業を取り戻すことが復興のもっとも重要なカギになる。という大胆な意見を氏の会社自身、製造のほとんどを海外に依存している状況なのに訴えているという事が、非常に興味深いということだったのだが、私自身まさしくその通りかもしれないと強く感じてしまった。
 確かにアップルがI-PADやI-PHONEの4Gを発売し、月に100万台を超える勢いで販売しても、その製造を担っているのはすべて台湾のメーカーであり中国の工場だ。アップルがその販売で莫大な利益を上げても、莫大なコーポレートTAXという利潤を国に与えることになっても、そこで雇用が促進され失業率の軽減につながったり所得税が増えるということはないのが現状だ。
 これはほかの会社にも全く同じことが言える。今は製造のみならずカスタマーサービスやアカウンティング、アドミニストレーションまで極端な話、海外へのアウトソーシングが一般的になってきている。それはインドのインフォシスなどがその恩恵を被っていることをみれば明らかであろう。そしてこの状況は経済全体の形態すら大きく変えているということをもう少し真面目に考えてみる必要があるのではないかということを思った。
 インターネットの普及に伴い、人々はバーチャルなオンラインショップを開設することによって実際の店舗をもつことなく、またそこに従業員を置くことなく商売ができるようになった。当然それらの経費は軽減される分、販売される商品自身も安価で購入できるのが一般的だが、その結果として販売が確実に向上するのか?というえばこれははなはだ疑問だ。というのは雇用が削減された分だけ、購買層も減ってしまうという現状である。
 90年代の初めのころだったと記憶しているが、駐在員だった自分は自社製品の売り込みに当時GMの電装品製造メーカーとして君臨していたDELCO ELECTRONICSを訪ねたことがある(たしかKOKOMOという町で、インディアナポリスの郊外だったかな?)。
当時自分が販売していた製品はオートローディングタイプの検査機で、これを導入すれば人手を使わずに自動で製品(実装基板)を検査できるというシロモノで、合理化を進めていたアメリカの各メーカにはうってつけの商品だったのだが、本当に印象深く覚えているのが当時のDELCOの生産技術課長の一言で「うちの生産ラインは人員を削減するような製品は必要ない」というものだlった。今でも同じように自動車関連のメーカーといえば組合が強いことでもよく知られていて、その組合員の職場と地位を常に考えているから組合員の職を奪うような製品は必要ない!という非常に明確な一言だったと思う。まあ、実際にはそういう固執した考えが社内にあったがゆえにGMのみならず国内の自動車メーカーは今のような状態になってしまったのだけれと、ここに来て思うと、そのような考え方というのも、ある意味アメリカ国内における雇用の確保には十分寄与するのではないか?と思われてしまう。もちろん競争力を失ってしまってはまったく意味がないのだが…。
 まあ、正直なところ雇用と経済の関係については非常に難しい問題ではあるが、願うことはただひとつで一日も早く景気が回復してもらいたいということだ。