リスクを取る事ができるか?

少し前の話になるが、1月に日本で開催されたEV/次世代モビリティ関連の展示会場にて、久しぶりに親友のS君に会った。日本でかつては町工場の中心的産業であったメッキ業を営む工場の2代目。彼の会社、シルベック(旧シルバーメッキ工業)は荒川区にあって50年の歴史を誇る下町メッキ業界の中心的存在だった。化学廃棄物の産出による環境問題や、需要の衰退などで斜陽の産業といわれたメッキ業界で、何とか生き残りをかけ工場の合理化と刷新を図るべく2008年に都内から埼玉県の八潮市に移転。それに加えて2011年には、まだ需要の予測が見えづらかったタイへ進出し工場を設立。慣れない外国で環境問題に絡むレギュレーションによる障壁や従業員の教育、思うように進まない需要開拓など、本人が自らの時間の殆どをタイで費やし本当に辛酸をなめながらの苦労を重ねてきた結果、日系大手のHVAC生産やアジア勢による新規自動車産業からの需要等を見事に取り込み、現地における独自性もあって今や順調に業績を伸ばしている。そんな順風満帆の彼が、まさしく次世代需要の開拓をすべく新規産業のネタが溢れるこの展示会では、まさに会場にへ張り付いて徹底的にリサーチをしていた。

「景気の良い時だからこそ次を真剣に考える!」

様々な苦労してきた彼自身が持つ本能的なアクションかもしれないが、自分がいつも主張している事を具体的に実行している彼のような経営者がいれば「まだまだ日本も行けるぞ!!」という思いを新たにできて心が熱くなった。

今年の1月には経済産業省の素形材センターとD-LABが主導したシリコンバレー視察ツアー、2月には同じ経産省の飛躍ツアーで、選ばれた中小町工場のオーナーやスタートアップの起業家たちと接する機会があった。特に進出に意欲的な企業の方々とは、いろいろ突っ込んだ話をさせていただいた。加えて今回の参加企業の中には今すぐ行動すれば間違いなく世界を獲れる!と思われるところもあった。ただ、やはり感じたのは今の日本の景気の良さから出てくる「ぬるま湯に浸かった感」だった。

確かに中国の爆発的な半導体需要や2020年を控えた公共事業を中心とした特需で今の日本の中小町工場はめちゃくちゃ景気が良い。言い方を変えれば忙しすぎて海外進出なんてとても考えられないし、そんな余裕もない!というのが本当のところなのだろう。しかし、そんな時だからこそ時間を無理に作ってでも2020年以降の事を考えてほしいという事を、このブログを通じて、そして機会のある毎に何度も何度も何度も何度も主張してきた。正直、状況はとにかく待ったなし。既存のビジネスを少し減らしてでもシリコンバレーに限らず中国の動きに注目するなど具体的なアクションを起こす。そして可能性がありそうなら、とにかくリスクを取ってみる!そんなTRY QUICKLYな姿勢と志が今一番必要な気がする。

自分の好きなブロガーの永江一石さんの投稿で日本で大ヒットしたドラマ「陸王」に関する記述があったのだが実は自分も製造業の立場で同感だった。要は同じ事の捉え方の違いなのだが、こはぜ屋の宮沢社長は「社運をかけて皆一丸となって成功を求め新規事業に参入した」のではなく「社運をかけて新規事業というリスクを取った」という解釈だ。彼は自分たちが今まで培ってきた技術を生かし資金繰りやチームの構築を含め未知のものに挑戦するというリスクを取ったのだ。前述のS君も未知の国で既存技術の経験と独自性でリスクを取った。その努力の成果が今開花し更なるチャレンジへとつながっている。

正月が明けて早2か月が経過してしまったが、今年はそんな「リスクを取る」事に果敢に挑む会社や起業家に、出来るだけ多く会えることを期待している。

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現場を知って10%の可能性を捜せ!

2年前からTESLAのGIGAファクトリー内でセル生産を手掛けるPANASONICのプロジェクトに携わっている。特に今年は急ビッチで進む動きに息もつけないような忙しさだった。一辺が1キロ近くある世界最大の電池工場に総工費2000億円以上をかけた大プロジェクト。日本から常時400人近い出張者が入れ替わりで常駐し、昼夜週末を問わず立ち上げ作業に従事している。
アメリカに来た30年近く前、自分がメインで携わっていたのは当時世界を席巻していた日系TVメーカーのアメリカ/メキシコ工場の品質管理プロセスの立ち上げだった。最盛期のSONYはサンディエゴに近接するメキシコ、ティファナの工場に3,000人以上の従業員を有してトリニトロン技術のTVとPC用ディスプレイを生産。アメリカ市場に確固たる地位を築いていた。SONYのみならず、PANASONIC, HITACHI, JVCなど、最盛期には日本メーカーだけでアメリカのシェア40%。物凄く勢いがあり若い自分は各社のプロジェクトに携われたことが本当に嬉しく夢中になって仕事に没頭していた。今回のプロジェクトは, そんな当時の自分を彷彿させる。この歳になって日本企業の壮大なプロジェクトに再び参加できることは本当に嬉しく老体に鞭打って(笑)頑張っている。

ところで今回のプロジェクトにおける自分のミッションは、生産現場における必要部材の日本および海外からの調達と消耗品や生産技術関連治工具生産の現地化だ。特に後者は、日本から搬送し設置された巨大な生産設備とプロセスラインに使用するパッキン等の消耗部品をこちらでも調達可能にしようというもの。切削部品やプレス部品など日本の協力工場で作られていた多種の部材を自分の地元であるシリコンバレーの町工場での生産に切り替える試みだ。

以前から何十回も言い続けているが、シリコンバレーはITのメッカだけでなく、実はハードウェアの一大生産拠点。70年代から半導体産業をつかさどる生産、製造設備の殆どがこの地で作られてきた。そしてその状況は今も変わっていない。クリーンルームで使用される高精度な設備に使用される部材、メディカル機器に使用されるチタンをはじめとした特殊材料の加工や精密板金加工、I-phoneをはじめとした超精密実装などは、正直言ってお手の物だ。そんな事ができる町工場が未だに2,000社以上存在している。実際のところ今回の依頼に関しても、殆どの部材が製作可能。日本では未だ一般的なメートル法の紙の図面でも(勿論DXF等のファイルがあればさらに簡単)対応してしまうところがすごい。現状約90%は現地化を実現できている。

ただ、そんな中、自分も携わってきて分かったことは、残りの10%近くは確実に日本にアドバンテージがあるという事だ。これらの部材は実際に日本の町工場に製造のお願いをしている。

例えば、まず加工材料からいくと圧延されたSUSの鋼材など寸法や公差の精度は日本のものが圧倒的に優れている。ものにもよるが同じ板材で測定場所で0.2mm程度の誤差は一般的。そして日本基準の1.0mm厚の鋼材はアメリカには存在しない。またSUSの5㎜角の棒材なども自分の知る限り入手は不可能だ。加えて日本が誇るプラスチック材料でも耐熱部材(例えばポリアミドロイドなど)はDUPONTなどが商品を供給しているが、ユニチカのUNILATE等の特殊硬質部材は、あまり一般的ではない為、加工部材として少量の入手が難しかったりする。コスト面では板金加工など圧倒的に日本の方が安価だ。このあたり輸送費のコストがかからない小物などは確実に可能性があると考えられる。最後に納期も現状アメリカにおいては暗黙の了解的に2週間というのが一般的で日本で言う即日製作や5日以内の短納期というのは殆ど存在しない。つまり、このような現場の状況を具体的に精査して知る事ができれば、日本の技術や生産体制でアメリカでも勝負できる可能性は十分あるという事が言える。上記の例からだと全体のわずか10%程度かもしれないが、それこそ探せばまだまだ山のようにあるはず。そして追従を許さない製造技術や製品があれば恒久的な需要も見込めそうだ。勿論、そこに食い込んでやろうという志はいつも言ってる通り一番大切になるが…。

昨今の日本の中小町工場は2020年のオリンピック景気や中国の空前の半導体需要など国内景気の良さもあって、少しグローバル化に対する意識が薄れている気がする。行政の支援活動を通じて、また実際に話を聞いても残念ながらその傾向が顕著だ。しかしながら、確実に押し寄せる自動車産業の破壊と創造、中国の深圳地区に見られるICTを駆使した新しい「ものづくり」のインフラと開発、製造力の強大化を考えると来たるべき日本の製造業における革新とグローバル化は間違いなく必須。そして、それを今実行に移すか移さないかが将来を握っていると言っても間違いではあるまい。

2017年もあと少しで終わろうとしているが、2018年は更に世界の動きに目を向けて自身の武装と将来の展望に関して関心を持つことが重要だと思う。上記のように現場を知れば、今ならまだまだチャンスはある。この芽が他のアジア勢に摘まれないうちにアクションを起こせるかが生き残りのカギになると強く言いたい。

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葬られていた100年以上前に大成功した日本人起業家の話

初出稿は2009年に自分のBLOGに書いた記事ですが、日本人として
自分たちの大先輩は100年以上前からグローバルな志と起業精神を持っていた証として、この素晴らしいスピリットは継承していかないと!!!という事で再掲載します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

自分のもっとも好きな趣味の一つである狩漁系ダイビング(潜って魚貝を獲ってます)のなかでもカリフォルニアを代表する獲物であるアワビについて、その背景を調べていたら、そのアワビ漁のルーツにに日系移民の起業家が非常に深くかかわっていることがわかったので是非紹介したいと思います。

1994年まではカリフォルニアのアワビ漁は商用目的で大々的に行われていましたが、乱獲から絶滅の危機に陥ったために禁漁になります。このアワビ漁ルーツ、実は日本の南房総、白浜の海産物商の兄弟によって1890年代今から100年以上前に始められたものでした。1890年の初頭に日本から移民した人が、カリフォルニアはモントレーの海岸に無数に生息するアワビを発見!これは絶対に事業になると確信し、南房総で海産物商を営む小谷兄弟を招請しカリフォルニアのアワビ漁が幕を開けました。当時アワビはラッコの餌か中国人が食用で少し取るばかりで、焼けば長靴のゴム底のように硬くなってしまい誰も見向きをしなかった代物だったそうです。おまけに北カリフォルニアの水の冷たさもあり当時は誰も手を出さなかったために海底には無数のアワビが生息していました。小谷兄弟はモントレーで本格的にアワビ漁を展開。当時アメリカには存在していなかった潜水器具を使った漁を初めて行い大成功をおさめます。当初は干しアワビを生産し中国や日本に出荷していましたが(これはアメリカの規制により1915年に禁止される)1900年代初頭には食用に適した加工法(やわらかく食べる)を開発し缶詰として発売し始めたところ、評判を呼び全米に出荷し最盛期には4つの工場を経営していました。当時アメリカを訪問した高松宮家をはじめ、竹久夢二などの著名人もこの工場に立ち寄った記録が残っています。

ところがカリフォルニア州政府はアワビに大きさの制限や販売エリアの規制などをかけ始め、また移民に対する土地没収や商業規制なども強化し、何と1931年には4つあったアワビの工場は全て閉鎖、そして第2次世界大戦での排日命令により、日本人が立ち上げたカリフォルニアのアワビ漁の実態そのものが歴史からすっかり葬り去れてしまいました。 アワビ漁自身はその後もヨーロッパ移民やメキシコ移民、そしてもちろんアメリカ人の手によって継続されましたが最終的には乱獲がたたり絶滅の危機に陥ったために1994年にカリフォルニア全域で全面禁漁になりました。 ちなみに1994年以降はサンフランシスコから北、オレゴンボーダーまでの間でリクリエーショナル目的での漁は可能。ただし年間24個一日3個までという数量と大きさも7インチ以上という厳しいルールがあります(2017年現在では年間捕獲数12個まで激減)。

さて、戦後70年以上が過ぎ、それまで少しずつアメリカ人の歴史研究家により調査されてきたこのアワビ漁の歴史が、ちょうど100年の歳月を経て、まさしくアワビが全面禁漁になった1994年に小谷兄弟のカリフォルニアモントレーエリアでの産業発展の功績をたたえる記念式典で再度脚光を浴び(今では自然保護区となっている工場跡地はKODANI VILLAGEと命名されています)、その後多くの研究家や日本のNPO法人によって文章にまとまられるまでに至りました。

 

このような背景があることを知って、自分も、こちらでアワビHUNITNGをしている日本人として、そんなDNAが体の中にはあるのかな?などと思ってしまいましたが、それより今から100年以上も前にアメリカでリソースとビジネスの可能性を見出し、会社を立ち上げ、日本からの潜水士(エンジニア)を招請し、同時に現地の人材を育成、新しい製品を開発し、インフラも商習慣もまったく異なるアメリカという地で、見事に起業して成功した大先輩達がいたことを誇りに思いたい。残念ながら第2次世界大戦という大きな節目のために葬り去れてしまった彼らの功績は、まさしく今の起業家魂に通じるものがあると思うし、このようなスピリットはこの先もずっと大切にしていく必要があると思いました。

ちなみに本内容のほとんどは、上写真の日本のNPO南外房文化財.戦跡保存活用フォーラムがこのあたりの交流と歴史的な流れをまとめ2005年に出版した「太平洋にかける橋」、そして今や絶版のCALIFORNIA ABALONE INDUSTRY(自分は持ってます)という本を参照させていただきました。

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AI時代は製造業のチャンスだと思う!

AIがブームになって久しい。今では日常のニュースでもAIの言葉を聞いたり見かけたりしない日が無いくらい話題になっているというかバスワードになっているというか、とにかくその勢いは留まる事を知らない感じ。単純に、このあたりには正直疎い自分の感覚では、AIのゴールとは知的(高給)職業の凌駕にまずフォーカスされていくのだな~というイメージが強い。例えば過去の判例の物量リサーチが仕事の多くを占める弁護士や、症例などの解析が重要なお医者さん、または数字の解析がポイントになる会計士やアナリスト、投資家などの領域がどんどんAIに置き換えられていく感覚だったんだけど、実はAIの隆盛は、この領域には全くとどまらず、それこそ多岐にわたっていることは、自分もそうなんだけど、あまりきちんと認識されていないような気がする。まあ自分の場合は勉強不足だという事が一番大きいのですが…^^;;
例えば、日進月歩で開発が進み、GOOGLEのWAYMOやUBERをはじめ、多くの企業が参入している自動運転車は、まさにAIが必需品だ。シリコンバレーにはCRUSE AUTOMATION (GMが1000億円で買収)やZOOXといった車載AIの分野でかなり吐出しているスタートアップがあったり、INTELが買収したMOBLE EYEもこの分野の先駆者的存在である。要は人間の判断の代わりにAIが、その日の天気やカメラやセンサーが捉えたデータにより、障害物が人であるか物体であるかを見極めたり、暗い状況がトンネルの中なのか夜なのかを判断したりする部分がAIにゆだねられていくわけだ。そのためには膨大に収集されたデータを的確に処理できる能力が不可欠になってくる。
同じように産業面に目を向ければ、工業用のロボットなどAIを利用することによって、蓄積された動作のデータから究極的にミスを減らしたり、動きの無駄を省くことができるようになり生産工程の品質向上に間違いなく貢献していくだけでなく、人件費の削減やヒューマンミスも防ぐことが可能になる。また家庭用のロボットや将来的にますます増えてくるであろうヒューマノイド(人型ロボット)は、AIによって間違いなく知的になり、家でも階段を上り下りして家の隅々まで掃除できるロボットがでてきたり、公共施設で活躍する案内ロボットや簡易作業ロボットが、かなりのスピードでお目見えしてくることは容易に想像できる。
ところで、このような状況を考えた時、これは製造業にとって非常に大きなチャンスではないか?と思えてならない。書いてきたようにAIによって頭でっかちになった製品(個体)には、それに見合った手足や駆動部が確実に必要になると考えられるからだ。例えば、目の前の段差を判断したり階段を認識できるAIを搭載した新型の掃除ロボットには、認識した段差を超えたり階段を登れるようなハードウェアの機能が必要になる。この部分に新たなメカ部品が必要になってくるわけだ。工業用ロボットも人間の産業に置き換えられるスムーズな動きが要求されるし、ヒューマノイドに至っては、その傾向が顕著で、例えばセンサーによって触れたものの硬度や温度などを感知して、それがどのようなものかを判断できるAIが搭載されたとしても、それを判断によって優しく掴んだり、しっかり握りしめたりする事ができるグリッパーが無ければ、その機能を十分に発揮することはできない。そのためにはあくまで人間の手の感覚や動きを具体化できる微細加工や組み合わせ技術などが重要になってくるわけだ。もしかしたらこのあたりって日本の中小町工場が得意としてる分野ではなかったかな??などと強く思えてしまう。無理やりのこじつけに聞こえてしまうかもしれなけど、まさにAI時代には新たな製造業のチャンス到来ではないか!?

特にシリコンバレーでは、分野を問わずAIのスタートアップが無数にあるがその中でもJIBOやANKIといったFAMILYロボット系の会社、またメディカルロボットなどを手掛ける企業などAIを軸としたハードウェア製造会社もきっとたくさんあるだろう。こういく会社にはもしかしたら日本の技術が参入できるプロジェクトが沢山あるように考えられる。勿論参入する気があればだけど(皮肉っぽく…^^V)  要はこのあたりのマーケティングだと思う。

民間工芸が百花繚乱のごとく発展し隆盛を極めた江戸時代の工芸品に、印籠(根付)、キセル、櫛、からくり人形などと比べるとあまり有名ではないが「自在置物」というのがある。
これは、その昔、兜や甲冑を製造していた職人に需要が無くなったので、その技を生かして、龍や昆虫、甲殻類などの置物を作り始めたのが起源だと言われているが、その素晴らしいところは、本物の生き物のごとく、それらの体節や関節が自在に動くところにある。これ実物見ると本当に驚嘆に値する出来栄えと精巧さなんだけど(是非検索してみてください!)、日本の精密加工の凄さをみていると以前から日本の加工技術にはこのあたりのDNAが間違いなく流れていると思えてしまう。まさにこれからのAI時代において、この日本の中小町工場が持っているであろうDNAが、再び世界でよみがえる事を何とか期待したいものだ!

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人件費の在り方を再考してはどうだろうか?

既にかなり知られた事実だが、シリコンバレーのここ数年の人件費の急騰は本当に凄まじい。平均日本円で1500万円。マネージャークラスで2000万円越えは当たり前といった状況。APPLEやGOOGLEで大体平均プラスαだが、FACEBOOKに至っては1700万円ぐらい@@!新興勢力の映像配信のネットフリックスやシェアライドのUBERでも給料の平均値はFACEBOOと肩を並べているそうだ。
とにかく日本から見たら破格! 確かに近年の好景気の影響による給与の高騰は、ここで生活するすべての価格を押し上げている。顕著な例が住宅費で、シリコンバレー界隈の家賃は日本で言う2LDKでも月平均$3,000前後、サンフランシスコでは同じ間取りで$5,000はくだらないらしい。それでも住宅の供給が間に合っていない状況だという。年に$36,000(日本円で400万円?)が手取りの中から消えていくわけだから、上記くらいの給料をもらっても、生活的には楽とは言えないのが現状だ。特に私のようなずっと地道に商売を続けている庶民にとっては、所得と比例せずに生活コストが急激に上がるので、かなり窮地に立たされている…ホントの話。

勿論、各企業もここまで高い給与を払うのは、それに見合う優秀な人材を世界中から確保するためだという事は明白だ。 そのために熾烈な給与競争をしているように見える。しかし、いままで夢でしかなかったものが物凄いスピードで現実化している状況を見ると、どれだけ早くニーズのある商品やサービスを開発して市場に出すことができるか?これこそがまさに生き残りをかけての熾烈な争いとなっているのだ。そのためには人件費に大枚をはたいてもサービスや商品が1日も早く世に出で勝負を制すことができれば、何倍もの利益になって戻ってくることが目に見えているからだ。

シリコンバレーの企業にとって人件費は間違いなく”投資”だ。

翻って日本の企業はどうだろうか?自分は日本を長いこと離れているので現状の詳細は分からない。最近は急成長のIT系企業なども多く、少なくとも以前に比べれば給与所得は大きく成長しているように思われるが、よく聞く話は未だに年功序列の体制がそのまま継続、勿論定期ボーナスというある意味独特の制度によって利益の配分もされているとは思うのだが、それでもこちらと比べるとはるかに低いようだ。う~ん、それで社員のモチベーションは十分に上がるのだろうか?もしくは物価レベルを考えれば、所得は相応なのか???このあたりは想像でしかないが、、感覚的には

日本企業の人件費は未だに”コスト”として考えられているのではないかと思えてしまう。

90年代から2000年代にかけて、日本の技術が喉から手が出るほど欲しかった韓国企業は、日本の優秀なエンジニアを5倍から10倍の高額な報酬でハンティングし、そこで得た技術を液晶をはじめ最近ではLGやSAMSUNGがバッテリーに活かして世界的に高いシェアをたたき出している。方法はどうであれ彼らも先行投資をして今の地位を確立しているわけだ。確かにやり方はえげつない。ただ、それを守る事が出来なかった日本勢にも問題はあるのではないか?「会社の為、しいては日本の為」という理由の説得だけで社員の抱えるローンや養育費を賄う事が満足に出来ない状況に対応できなかったのではないか?余計な事だが、そんなことも考えてしまった。

さて、随分前置きが長くなってしまったけど今回言いたかったのは、このあたりの旧態依然の人件費の在り方を、特に中小企業においては、もしかしたら再考する時期が来ているのではないかという事だ。 多くの中小企業や町工場のオーナーの皆さんとの交流の中で、この激動の時代にキラ星のように生かせそうな本当に優れた技術や商材をもつ会社が沢山ある事を実は常々感じている。ものづくり立国として立ち上がってきた実力も十分にある。しかしながら現状、マーケットインが主流になっている点、加えて優れた技術をさらに実用化できるパワー不足などもあり、本当に流れに乗れていないと思うのだが、その要因としては従業員の人件費も大いに影響しているような気がする。このような各自が持つお宝を強力な人材パワーによって一日も早く体制できれば、もしかしたら大化けする可能性もあるのではないか?勿論会社の規模による限界があるかもしれない、ただ 大手並みの給料が出せなくても給与形態の見直しや成功型の合理的な歩合制度の導入など、代々受け継がれてきた制度を見直すことも今なら十分可能だと思われる。ある程度の利益が確保できた段階で新たな報酬制度に転換できれば、話題性も相まって優れた人材を集める事も可能になるはずではないだろうか?実際、そのような新しい給与制度を実践し地方にありながら優秀な人材を擁して成功している会社も知っている。

優れた技術や商材で夢を語る事も出来るだろう。ただ匠の技と称してゴマ粒より小さい部品が作れるとか、0.5mmのシャープペンの芯に穴が開けられることができても、売れなければ意味がない。そのためにはやはりマーケティングも含めたマンパワーは不可欠だ。町工場がもつ特化した技術で世の中を変えるという夢とロマンあふれるドラマだった「下町ロケット」は本当に素晴らしかった。でも、それだけで佃製作所で働いてみたいをという優秀な若者たちが集まってくるのだろうか??はっきり言って疑問だ。

今年の日本はオリンピックに向けての景気向上なのか求人有効倍率も1.5%近く、かなりの売り手市場だという。そうなると中小町工場の人材確保はますます難易度が高まるかもしれない。しかし激動の産業の流れは待ったなしだ。シリコンバレーに倣えとは言わないが、景気が良い今だからこそ技術力プラスαとして人件費も会社の投資として再考してみる良い機会かもしれないと思うのだ。

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自動車産業のイノベーションに乗れるか?

申し訳ありません。2017年の初めての投稿になってしまいました^^;;。

3月29日に、経済産業省において視察のお手伝いをしている素形材センターのミッション報告と、シリコンバレーの有志によるD-LABの「自動車産業の破壊と創造で盛り上がる同地の状況とその流れをどうとらえるか?」についてのセミナーが開催された。D-LABのメンバーはシリコンバレーに出向している経済産業省の精鋭と民間の若手で構成され、この地で今起こっている日本の最後の牙城である自動車産業を根底から覆すインパクトを持って進んでいるイノベーションに衝撃を受け、何とかこの状況を日本が理解し、一丸となってそこに追従する意識を持ってもらおうという事で活動を進めている。
今回発表された、レポートには現在シリコンバレーで起こっている衝撃的な内容の詳細が記載されている。一般にも公開されているので、是非ダウンロードをお勧めしたい。
「シリコンバレーDラボ、プロジェクトレポート」

その内容にもあるように、今シリコンバレーで起こっている自動車産業のイノベーションは単に電気自動車(EV)とか自動運転にとどまらず、そこにシェアリングとコネクテッドという新たな動きが同時進行で動いているところに、実は、日本勢が完全に蚊帳の外になってしまう可能性を秘めた大きなポイントがある。

まず日本の自動車産業だが、これは60年以上、綿々と車というハードウェアを販売することによって利益を得てきた。そしてこの流れは現在もまったく変わっていない。しかしながら、以前、このBLOGにも書いたと記憶しているが、此方で起こっている動きはIT産業の下に車がぶら下がる事が前提となる。つまり車がスマートフォンのように情報の収集と発信のためのツールとして位置づけられるという事で、車(ハード)は、スタイルがいいとかスピードが速いとか燃費が良いとか、それ自体が価値を生み出すことを必要としていないのだ。これが先ずコネクテッドという考え。そうなると車の性能は必要最低限になり、スマートフォンのようにタダ同然で配られる可能性がある…。

シェアリングは、昨今話題になっているシェアリングエコノミーで車ではUBERやLYFTに代表される、誰でも運転手になれる乗り合い白タクの発想。車を持たなくても、持っている人が運転手になって人の移動をサポートする。つまり利用者は手軽に交通手段として車を利用することが可能になるので、単に移動手段と考えれば車自身の価値や機能、そして車を購買する事も運転手にならないのであれば必要ない。そうなると、これが車の販売台数に与える影響は大きい。

そして自動運転。ドライバーは必要なくなり、車自身がセンサー技術や最先端のAIを利用して安全性を確実に踏襲して運用されるようになるという事は、車というハードウェアに安全に必要なものがいらなくなる。言い方を変えれば、日本が培ってきた安全性の確保という蓄積も殆ど不要になり、誰でも車を作る事が出来てしまうのだ。

最後のEVだが、つい最近、時価総額でFORDを抜いたTESLAの隆盛をみるまでもなく既にアメリカでは10台に1台はEVが走り回りまわっているくらい急速に普及している。当然エンジンもミッションも車軸もないので製造コストは抑えられるし、給油やオイル交換といったサービスも不要になるので利便性はかなり高い。何より、エンジン一つとってみても平均で500~800近い部品で構成されているものが、MOTORになるとインバーターを入れても部品点数は100に満たないそうで、そうなると今までエンジン部品の生産に従事してきたメーカーにとっては危機的状況だ。
以前調べたのだが日本の場合、自動車産業に従事している就業人口は約200万人で、その殆どがガソリン自動車の製造に関係している。そうなるとEVが先々隆盛を極めるとわかっていても国を挙げて大梶を切る事は難しいと言わざるを得ない。

さて、このような状況の中、日本勢は何を考えなければいけないかが、これからのポイントだ。正直、この動きを理解しているか否かで先ず流れは大きく変わってくると思う。基本的に日本の自動車産業は、「系列」といった三角形の組織形態で成り立っている。で、そのTOPであるメーカーがこの動きに対する意識がない、もしくは意識があっても現状のインフラへの影響で身動きがとりにくい、という事になると残念ながら予後は非常に芳しくない。なので、少なくともTier1, Tier2、という位置づけにある企業は自主的に何らかの対応を取るべきだと思う。今まで世界最高峰の日本の自動車産業を支えてきた企業であれば、新しい市場に対する方策は無尽にあると自分は確信している。加えてこれから新規で車を作ろうという企業もどんどん増えてくるという事は、製造業の需要はかなり大きいはず。あとはそれをどうやって自分たちで見つけ出していくかだ。肝要なのは、このブログで一貫して主張している、「プロダクトアウトではなくマーケットイン」だ。

今回公開された資料には具体的に真剣にアメリカにチャレンジしている中小町工場の事例も紹介されている。是非とも内容を吟味し理解して、自分たちがこのイノベーションに対して何ができるか?手遅れになる前にアクションを起こしていただきたい!

 

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武士道の負の影響を変える意識を持つ!

自分の大好きな司馬遼太郎先生の名著「この国のかたち」の中で先生は「名こそ惜しけれ」という考え方が日本人の倫理規範の元になっていると書かれている。平安時代末期、坂東武士の誕生により、今までの寺社(宗教関連)や貴族間にはなかった「自分という存在にかけて恥ずかしいことはできないという意味」をもつこの言葉は、「一所懸命」、「いざ鎌倉」という領土を与えてくれた主の恩義に報いるために忠誠を誓うという「武士道」の基本的な精神として日本人のDNAに刷り込まれている。
この精神によって、日本は明治維新以降十数年で、海外列強に引けを取らない経済力を確保し、第2次世界大戦後は、わずか5年で奇跡の復興を成し遂げ、世界で有数の産業立国となった。
東日本大震災の後、あれだけの大惨事に見舞われながらも大きな略奪や暴動も起こさず、秩序よく配給の列を作り、粛々と復興に全力を尽くしてきた姿はまさに、この精神の成せた技であろう。世界から驚嘆と思われても不思議はない誇るべき国民性だ。

さて、この「武士道」に立脚した国民性だが、実は日本の中小企業にとって、またスタートアップ企業にとって時にネガティブに作用しているのでは?と思う事がある。

少し前になるが、浜松市の金融機関の皆さんと懇談する機会があった。その中で、浜松は歴史的に自動車を中心とした機械産業で地元には多くの優れた中小町工場が沢山あるにもかかわらず、グローバル化や新規事業への意気込みは低いという。理由は長年にわたり培われてきた大手企業との主従関係だ。地場にはSUZUKI, YAMAHAといった大手企業があり、そこの下請けとして長年生活を維持してきた企業の中には、「新たな分野に進出などして、親元の気持ちを損ねないか?」とか「十分な仕事をもらっているのに新しい展開をする余裕があると思われないか?」といった理由で、新規事業への展開やグローバル化を躊躇しているところが沢山あるという。そして大手も「うちが依頼している注文で培われた技術を外に展開してくれるな」という暗黙の圧力をかけているらしい。これでは優れた技術や、グローバル化できる力があっても、忠誠心の為に可能性がなくなっている訳だ。

別の話で、かつてシリコンバレーで活躍し、日本に帰国後、電動モーターサイクルのベンチャー<テラモーターズ>を立ち上げ、インド、バングラデシュを中心に大成功をおさめ、現在は<テラドローン>で新たな市場を切り開いている徳重君。彼は生粋の長州人で、良い意味で、そのDNAがシッカリ刷り込まれており、日本から新たな世界制覇、メードインジャパンの復活を旗印に、あくまで国産電動バイク製造を希求していた。その実現のため世界に冠たる日本のモーターサイクルメーカーを支えている協力工場に同じ市場という考えから電動バイクという新たな市場開拓をオールジャパンで展開すべく、部品供給の依頼をしてまわったのだが、大手傘下のほとんどの企業から「同業の新参会社は相手にできない」「競合になるような電動バイク製造には手を貸せない」、「長年培ってきた、取引先との関係に支障があるといけない」等々の理由で取引を拒否されたそうだ。その後、彼は、新規事業やスタートアップ支援に積極的な台湾のベンダーを開拓。モーター製造をはじめとした多くの企業の協力のもとで、電動モーターサイクルを生産、現在では、インドやバングラディシュでも現地での生産体制を確立し現在に至っている。 もし日本の中小町工場が一丸となって協力し、オールジャパンとしての大成功ができていれば、まさに彼の本望であり、日本にとってもグローバル化を推進するうえで、素晴らしい事例にもなったはずだ。それがなんとも残念でならない。

さて、2016年もそろそろ終わろうとしている。今年も色々な機会に50社近い中小町工場のオーナーの皆さんと会ったり、話を聞いたり、彼らに講演をしてきたが、残念ながら本当に気概を持ってアメリカへの進出を具体化した会社は1社だけだった。勿論、残りの殆どの会社は、上記のようなDNAによって新たな第2創業への展開を躊躇しているとは思わないし、現状を何とかしたいという意思も実は旺盛に違いないだろう。ただ、その奥にある日本人の持つ素晴らしい武士道精神が、無意識のうちにも、自社の展開のみならず新規起業家の展開にも影響している様子が全体からは垣間見れたことも心に残る。

何度も機会あるごとに話しているが、日本の持つ技術や製品はまだまだ無尽蔵にグローバル化のチャンスがある。それを是非とも具体化し実現するためには、あえて、その意識を変える勇気を持つことも必要と考え、本気で臨んでくる企業の皆さんとの対面を2017年は楽しみにしたい。

P.S. 2016年も奔放な駄文にお付き合いいただき有難うございました。皆さんにとって2017年が
素晴らしい1年になる事をお祈りいたします。

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試作ビジネスなら可能性があると思う前に

スミマセン!夏以降かなり忙しく、ついつい前回から2か月がたってしまいました…^^;;

9月にはいって以降、日本の行政関係の皆さんと会う機会が何度かあった。
「グローバル化」というのが一つのバズワードになっていて、特にシリコンバレーはその格好の訪問先という事で、かなりの頻度で多くの方々がまるで巡礼のように訪問されているようだか、特に地方行政の皆さんにもこの傾向が最近はあるようで、「話を聞きたい。」という依頼をよくいただく。
ただ各自希望していることは相変わらずで、ビジネスのマッチングや商談会の実現、有名企業訪問などなど…。
正直なところ、このような依頼に対しては「まずその前にすべきことが沢山あるでしょう」という理由で原則すべてお断りしている(「その前にやるべきこと」に関してはまた機会をみてまとめてみたいと思います)。
中には一度こちらに来ているものの、まったく学習もせずにまた同じような内容でシリコンバレーに視察名目で団体でやってくる中国地方の県や、商工会議所などもあり「経費は地元の皆さんの税金ではないの??」などと余計な心配もしてしまう今日この頃だ。

さて少し具体的な話になるが、特に中小町工場の視察で来られる団体の皆さんに、以前から良く聞かれることの一つに

「現状日本でも試作で成り立っている中小町工場は多く、各自が持つ”ものづくり”の優れた技術があれば、少量多品種の試作製造で十分アメリカにもビジネスがあるのでは?」

という相談がある。
最近のハードウェアブームにより、シリコンバレーにも多くの製品を手掛けるスタートアップがあり、彼らは巧みにキックスターターなどで資金を調達。ただそれを量産する術を知らず、お金は集めたものの製品化ができずにそのまま無くなってしまう会社が多いのは事実。このあたりの試作をスムーズに仕上げるために中小町工場のもつ技術を活かして製品化をバックアップする可能性は十分あると自分も思う。この件に関しては実は自分もその可能性を3年ちかく前にこのBLOGにも書いている(タイトルは「作品から製品にするアセットで再び世界から仕事が獲れないか?」)のだが、最近の状況から結論を言えば、

「そのまま自分たちの技術や製品を持ってきても無理だ」

という事だ。
理由は単純である。上記の前のBLOGにも同じようなことを書いているのだが、中小町工場の皆さんはそれぞれの分野においては特化した技術を持っているかもしれない。ただ、それらをまとめる機能が無ければ個々の部品が優れていても、市場に出せるような製品にはならないのだ。
例えば成形品の篏合は設計で決まるが、その内部に配線を回す、電子基板を取り付ける、といった場合、内部をどのようにデザインすればよいのか?電源などが入り放熱の必要がある場合やEMCの影響を抑えるには?等々、具体的にこれらの部品を総合的に設計し一つの製品としてデザイン性を損なわずにまとめ、さらには製造コストを抑えるプロセス構築ができるインテグレーターがいなければ、うまくいくとは思えない。
現状このような経験がある人(経験は豊富でなければならない)がキックスターターで資金集めをしているスタートアップに多いとは考えにくいので、ビジネスとしての可能性を考えるとしたら、このような機能を補うところまでのサポートをできるかどうかが重要になる。

このインテグレーターという機能、日本では部材の発注元であるメーカーがその役割を果たしていた。なので中小町工場は原則として頼まれたものさえ作っていればよかった。日本と同じようにアメリカのメーカーから部材の受注を取るという事であれば、勿論OKなのだが、スタートアップを相手にするのであれば、そうはいかない。
加えて重要なことは、ハードウェアスタートアップのが資金集めの為に制作したプロトタイプは作品であり、実際には、これを製品にしていかなければならない。つまり、10万円かけて製作した作品を製品とするためには、それを1万円以下で生産するための生産技術や製造技術も必要になってくるわけだ。このあたりのノウハウは間違いなく必須である。

残念ながら、以前から説明をしてきているのに、このインテグレーターの必要性を理解し、配置を考える行政の皆さんや、中小町工場のオーナーはあまりにも少ない。このあたりをすべて包括的にサポートできる体制があれば、試作ビジネスの可能性は大きいと思うのに…。

加えてインテグレーターだが、実は日本には、たくさんいると思う。大手で製品開発や設計に従事してきたOB達だ。日本の優れた製品で世界を席巻してきた先輩たちのリソースはかなりポテンシャルはあるはずで、もし本気でこの市場でグローバル展開を図りたいというのであれば、特に行政の皆さんには、是非、その活用を検討していただきたい。

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高密度実装技術から製造業の行方を考える

今回は本業の話になってしまうのだが、自分の専門は電子基板(PCB)の実装プロセスの品質管理だ。実は今も車載の電装品メーカーを中心に、彼らが生産する実装基板の検査機や品質管理商材、治工具の販売が生業だ。この業界に入って既に30年以上になる。電子回路基板が誕生し、そのパターン上に穴をあけて、そこに部品の足を挿入して回路をつなぐ方法から80年代に入り基板自身が多層となって今まで2枚だった基板が裏表で1枚になり(今は32層なんてある)、部品の足がなくなって表面実装部品となり、スペースを小さくできるようになって更に劇的にサイズを極小化して多機能になっていく変遷とアナログ主体からデジタルに大きく製品自身が変わってきた状況にずっと対応してきた。そして大きく仕様を変える実装基板の品質をどう管理するかの検査技術に携わって、今日に至っている(信じられないかもしれないけど^^;;)。

1980年代、TVを中心とした家電製品で世界を席巻していた日本の電機メーカー各社は、その殆どの製品を日本で大量生産していた。そうした生産をささえていた生産技術、製造技術、そしてそれをサポートする品質管理技術は大量生産のおかげで、これまた世界最高峰の技術を誇っていたし、それをつかさどる生産設備も日本製が完全に世界のデファクトスタンダードだった。 特にPCBに部品を装着する実装機では、当時PANASONICと、FUJI(富士機械製造)で世界シェアの50%近くを占めており、その後90年代に入って実装部品が足を挿入しない表面実装化し、製品自身も少量多品種化が進むと、JUKI、YAMAHAなどが組み合わせに柔軟性のある中型機を擁して台頭。 国内の需要が衰退する中、それでもこの分野は、中国の超量産EMS工場の景気に支えられて今でも堅調だ(と思う)。また実装機に限らず、PCBにはんだペーストを塗布するスクリーンプリンター(印刷機)、自動半田付け装置、そして実装された部品が正しく装着されているかを検査する画像処理の検査機もOMRONをはじめ、日本製が殆どを占めていた。

この分野において、当時、日本に追いつくことが至上目標だった韓国勢、その技術をどんな手を利用しても習得することが、まさに死活問題であり、自分が働いていた検査機器メーカーにも「部材と人件費の安い(当時)韓国でノックダウン生産をしませんか?」というアプローチでその触手が近づいてきた。結局自分のいた会社はその話に乗って全てをむしり取られる結果になってしまうのだが、このプロジェクトの責任者として(まだ20代の若造だったけど…)1986年と87年に韓国, サムスンの総本山である水原にあった生産技術研究所に常駐していた自分は、日本の実装機や半田槽、検査機等に大学を出たばかりの兵役を免除されるほど秀才の若いエンジニアたちが蟻のように群がってリバースエンジニアリングをしている様子を今でも鮮明に覚えている。

その後、韓国勢大手は、自分たちの生産設備は自分達で開発し、それを使用することにって設備投資を抑え、タイムリーに優れた商品を開発して、この分野でも世界の市場を席巻していった。正直なところ、実装機に関しては非常に特化した技術、特に日本は100年以上の歴史を誇る自動織機技術のDNAがしっかり踏襲されていて、韓国勢はSAMSUNGをはじめHYNDAIもオリジナル製品で世に出していたが、今でも日本勢に軍配は上がっている。

しかしながら他の周辺機器、特に実装後の基板検査、自分の分野でもある画像検査機は残念ながら、台湾、韓国製が、どれも秀逸。TRI(台湾のメーカーでかつて自分がいた検査機会社のCOPY機で大きくなった)、KOHYOUNGやPARMIといったメーカの製品は日本企業にもかなり採用されている。かつては市場を凌駕していたOMRONやPANASONIC製より、その運用性やソフトのアルゴリズムに関していえば明らかに彼らの製品のほうが優れている感じだ。その影響もあってOMRON,PANASONICともこの分野からはほぼ撤退している。

なぜこうなったのだろう??それは非常に単純だ。少なくとも今の時点で世界最高峰の実装技術を駆使して製品の量産をしているのは正に中国、そして台湾、韓国だ。製造技術、生産技術、品質管理技術というのは量産工程において、いかに歩留まりを少なく効率よく費用対効果を高めて高品質の製品を作り上げるかに依存しているといっても過言ではない。 そして今の膨大な容量のソフトウェアーの手足となり、それを確実に動かしていくハードウェアの進化も凄い勢いで進んでいる。簡単な例でいえばスマートフォンの中に入っている回路は、かつてのPCマザーボードより数倍高機能だ。それが今では手の平にのる。そのサイズの中に2,000点以上の部品が搭載されている。最近ではコンデンサーや抵抗の部品が0402(0.4mmX0.2mm)など目で見てもわからないようなサイズまである。こんな部品を高速で基板に実装する日本の実装機はまさに曲芸の域に達するほど素晴らしいのだが、それが確実についているかを確認する検査技術もまさに曲芸のレベルが要求されるのだ。

現状は、検査が難しいのと修正コストを軽減するために実装の段階で不良を軽減する傾向が強く、継続的な不良(同じ原因によって不良が出続けること)は少なくなってきているので、突発的に発生する不良をどのように見つけるかが検査のトレンドになっているが、これは至難の業だ。1mm以下の幅で実装されている部品同士の半田ショートや極小部品の未半田までも発見しなければならない。それが高速で精度よく確認できる技術は、こういうプロセスに投入され切磋琢磨されることによって、より精錬されたものになっていく。その客先の要求にかなう仕様を日々の鍛錬によって高めている韓国、台湾の生産設備は、間違いなくそのノウハウに基づいたアルゴリズムが含まれているのだ。 量産工程のほとんどを海外に移転、もしくは辞めてしまった日本の環境では、もう残念ながら優れた検査装置は生まれてこないと考えざるを得ない…。

このような状況は生産設備だけにとどまらない。自分の商材でもあるクリーンルームや静電気対策に使用する資材なども、かつては日本製が殆どだったのだが、最近では、韓国、中国製に、だいぶ席巻されている。彼ら協力工場が生産するそれらの品質も、量産工程に見合うレベルにどんどん進化しているのだ。また生産に必要な材料自身もしかり。自分の取引先である電子X線パネルに使用するフィルムの加工しているメーカーでは、最近、納品先の要求で日本製ではなく韓国製の安いフィルムに供給元を切り替えさせられたと話していた…。そういう日本以外のベンダーも同じように量産工程に追従しながら進化と遂げているわけだ…。果たしてこのあたりの挽回が、この先、日本で起こりうるであろうか???

というわけで何が言いたいかというと、量産工程を辞めてしまった日本の大手メーカーの協力工場という立場では、自分たちの技術や製品までも世界の需要からは程遠いものになってしまうのではないか???という事だ。これは上記のように、基板実装、特に検査技術で非常に顕著だが、他の製造でも同じ傾向にあるのではないかと思う。つまり自分たちが開発や製造しているものが、実は世界では既に優位性の無いものになっているかもしれないという事だ。そんな意識を是非、協力工場、中小町工場、そしてハード系のスタートアップの皆さんには持ってもらいたいと思う。勿論、先の頑張っている日本の実装機器メーカーや半導体業界でいえばDISCOなど最初から世界市場をターゲットに日々切磋琢磨している会社も多い。できればこのような会社と同じような意識と視点を最初からグローバルにもって、これからを考えてもらえればと思う。

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新陳代謝を意識する!

  自分の取引先に業務用マイクや、ヘッドセットで世界的にも有名なオーディオテクニカという会社がある。同社はもともとレコード針の専業メーカーだった。レコードプレーヤーが全盛だったころ、同社のレコード針は、かなりのシェアを誇っていたのだが、レコード針がどんなに優れていても、レコード盤にホコリがついていたりすると鮮明に音源を再現することはできない。そこで同社はレコードをきれいにするレコードクリーナーを独自開発。ブチルゴムを使用したこのクリーナーは非常に高い性能で音楽愛好者の標準となった。しかしながら時代の流れはレコードからCDが全盛に。残念ながらレコード針の需要はなくなってしまったが、このクリーナー技術で同社はあらゆるものの塵やホコリを取ることが可能なところに着目。当時需要が増えてきた液晶パネルの積層フィルムのクリーナーとして大型のクリーニング装置を開発。これが業界標準となり、現在ではフィルムやスクリーンの製造プロセスを中心に販売を展開、同社の事業の大きな柱となっている。

また自分の顧客であるPANASONICのメキシコ工場では、エレキギターで世界的に有名なFENDERのスピーカーシステムを生産している。かつては世界を風靡し、有名ミュージシャンの必携アイテムだった同社のギターもデジタル化の流れと、若者のバンド離れから売り上げは激減、かなりの苦境に立たされていたが、自社が持つピックアップのアンプ技術を利用し、カーオーディオの業界に参入、今はフォルクスワーゲンの車種に採用されるなど新分野での業績を伸ばしている。

 実は今回このような事を例としてここに挙げたのは、同じようなアクションで、躍進している「ものづくり」のスタートアップと出会ったからだ。東大阪にあるDGタカノは節水ノズルの専業メーカー。90%の水量を削減する驚異の節水ノズルで飛躍的に事業を拡大。わずか1年で10億円の売り上げをたたき出している。
 同社社長、高野さんの実家は東大阪にある町工場。同社は3代にわたってガス栓のコックだけを生産する専業メーカーだった。しかし無煙ロースターなどが主流になりガス栓の需要は激減。それでも残る需要に対してガス栓という安全性が重要視される製品ゆえ、1000分の3ミリという精度を具象化できる職人技が不可欠で細々とだが経営は続いていた。そのような状況のなか、高野さんとしては毛頭家業を継ぐ気はなく、大学卒業後は起業をめざしWEB制作会社を立ち上げた。そこに仕事を依頼してきた1号のお客が節水ノズルの会社だった。WEB制作を始めるに当たり、その商品をみた高野さんは「こんなものがこんな高く売れるんだ」と驚愕。これならうちの工場でいくらでも性能の良いものが作れると判断。現場を身近に見てきた彼は、さっそく試作をスタート。試行錯誤のうえ素晴らしい節水ノズルを作り上げる。これが同社のヒット商品であるBUBBLE90だ。空気と水を極限まで水量を制限しながら混合させて吐出させる技術は、まさに100分の3ミリの精度が確立できて初めて実現できるものだ。この技術をフル活用した構造で既に各国での特許を取得。昨年からアジアをはじめとした海外でもリサーチを続け、年内には本格的に水不足が深刻なカリフォルニアを起点に全米展開を計画している。

いままで多くの中小町工場のオーナーの皆さんと会ってきて感じる事の一つに、「何が特徴(売り)かわからない」というのがある。企業のWEBサイトを拝見しても「不可能を可能にします」「難加工ならお任せください」「ISO取得による優れた信頼性」「高品質、短納期、低価格」等々、ほとんどの会社が同じ言葉が並べているだけ。
これらは、はっきり言ってしまえば誰でもできている事で特徴でもなんでもないと思う。仮にこのような主張を継続しても問題ないというのならそれはそれでよし。ただグローバル化を意識するのであれば、これではダメだ。

新陳代謝という表現が先に挙げた例に的確かどうかはわからない。しかしながら、もしその気があるのなら、きっとどの会社も自社の持つ自身も気づいていないような優れた技術があるはずだと私は考えたい。何とか、それを見出し光を当てる事はできないか?それにはやはりマーケティングが非常に重要だと思うのだ(いつもここに帰結してしまう感があるけど…^^;;;)。そしてそれを発見する事が先ず新陳代謝の第一歩だ。

これからの生き残りには、この新陳代謝がきっと不可欠になるだろう。そのためには、今皆さんが得意だと思っている技術も対応も品質も殆どアドバンテージはないということを理解することが非常に重要だと思う。特にグローバル化に関してはこの理解が肝心。例えばシリコンバレーには、試作に特化した中小町工場が数千社あり、自社製品を除いて、皆さんが自慢げに語っている「ものづくり」や「匠の技」の類は殆どこちらにあると思って間違いない。
必要なのは、そのような状況を踏まえたうえで新たに考え方や体質を変えていく志だと思う。先の例のように、自分たちが今製造して客先に納品しているものが、ただ単に品質や価格や納期で評価されるだけでなく(勿論、これに特化することができればそれでOKだが)、そこで培われた技術や経験を駆使して新たな市場を創出するためのリサーチやマーケティングを始める事で、既存からの脱却を意識し、新たな展開を考えてみることは、シリコンバレーを見るにつけ、グローバル化を目指す中小町工場には不可欠だと感じるのだ。是非、自社の新陳代謝を意識してほしい。

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