ものつくり企業はメーカーズになるべきだ!

昨年の秋以降ものすごいメーカーズブームになっている。自分も遅ればせながらようやくメーカーズ日本語版を入手し読了した。すでにご存じだとは思うが、単純に言えばメーカーズとは3Dプリンターやアルデュイーノといった開発ツールを駆使し、またネットやソーシャルを利用しての情報交換や資金調達、マーケティングなどを行い、今まで型の製作などで量産でしか対応できなかった製品の開発と製造が簡単に行えるようになり、加えて商品の販売も費用をかけず実行できる事によって個人や小規模のチームで商品の製造、販売が可能なるという流れに基づいた製造者(もしくはチーム)の総称(と解釈しました)。彼らが今、ものすごい勢いで増えているのだ。確かにある意味、これは今まで長きにわたり大手偏重、そして世間的に言えばITという流れにおいてはビジネスの主流が、どちらかといえばソフトに推移していた状況から一挙に流れがハードへと動き出す可能性を秘めている。人によっては「新たな産業革命になる可能性がある」とも言われている。この本の冒頭部分に「誰もが子供のころ、積み木やブロックなどを組み上げて物を作っていた本能が再現できる…」ようなくだりがあったが誰でもメーカーズになれる!そういうことを示唆しているのであろう。勿論生産されたものが、そのまま売れるものになる保証は一切ない。確かに個人であればふんだんに時間をかけ理想を込めた製品が出来上がるだろう。ただ、それが売れるかどうかは分からない。「金持ち父さん貧乏父さん」のロバート清崎さん風にいえば「マクドナルドよりおいしいハンバーガーを作れる人はたくさんいるがそれがマクドナルドを超える商売になることはない」ということだ。つまりそこにはしっかりしたマーケティングとセールスが不可欠になる。しかしながら明確に言えることは、この流れは日本の中小製造メーカーにとっては非常に意味のあるものだと思う。今までずっと「ものつくり」を標榜してきた彼らにとってはまさに自分たちの持つ真価を試す機会でもあるからだ。日本の中小企業の皆さんと話していてよく思うのは「自分たちはものつくりを通じて世界に羽ばたく」とか「世界一のものつくり集団」とか、「ものつくり」が技術立国日本の枕詞のように使われることが多いのだが、果たしてそれを本当に世界をみた上で言っているのだろうか?ということだ。シリコンバレーには5,000社(3年前です)近い町工場があるが彼らの技術力が世界のグローバルスタンダード製品の試作を支えているということを知った上で、それを公言しているかといえば甚だ疑問だ。そのくらい世界の技術レベルは高いのだ。何が言いたいかというと、自分たちが持つ加工技術や匠の技は既に誰でもできてしまう可能性があるものだという認識を持ってもらいたいという事だ。勿論、今まで下請けという形態ゆえに公には出てこなかった埋もれた沢山の素晴らしい技術があることも事実だ。であれば既に製造設備があり、それなりのインフラも整っている皆さんであれば、この埋もれていた技術によって今までにない画期的な部材、とくに省エネやコストダウンに貢献するようなものを製作することができればそれを是非公表(PR)してもらいたいし、自社のもつ製造技術で、出来ればオリジナルの商品などもぜひ開発してもらいたい。それができれば少なくともSNS、SMMなど「メーカーズ」に記載されている方法でマーケティングやセールスも思った以上に簡単にできると思うのだ。あえて言えば、それはアイデア主体の本当に簡単なものでOKだと思う。
例を挙げれば、今一緒にプロジェクトを推進している八王子の機械加工のナラハラオートテクニカルとPCB製作をしている美山技研がコレボレーションしてPCBの廃材を利用してI-PHONE用のケースを作った。

面白いではないか!特に奇てらったものではなく身近にある材料を加工し製品として付加価値をつけて完成させる。これもメーカーズの真骨頂だと思う。別に3Dプリンターやオープンソースの開発ツールを使わなくても、彼らは立派なメーカーズだ。勿論売れるかとどうかはわからない。でも少なくとも、製品が完成すれば金のかからない方法で、この商品を世界中にPRする事はできるのだ。
このような発想で是非、オリジナルの商品の開発に取り組んでもらいたい。そしてものつくり企業という言い換えれば少しロートルな感じのするイメージを一新して、新しい発想のメーカーズとして(というかそういう意識を持って)、是非、世界に対しての主張をしてもらいたい。願わくは、このメーカーズブームが一過性の流行で終わることなく継続して既に世界(アメリカ)にリードはされているが、これから一挙に盛り上がって日本発信の第3の産業革命というムーブメントになってくれればと願う次第である。

2013年の年頭に考えた事

遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

2年前のNHKの大河ドラマ「竜馬伝」。その中で若き日の岩崎弥太郎が、会話の内容の詳細は記憶が非常にあいまいなのだが投獄された牢屋の中で、そこの主ような老人から「あきないというのはなあ、ほしいと思っているひとのところへ、ほしいものを探して持っていくことや。ただそれだけや…」という話を聞き、いたく感動して商売に目覚める…。というくだりがあった。この話を聞いて今まで売れもしない(というか誰もほしくない)鳥籠売りを辞め、猛勉強を始めてビジネスに開花して行く様子は香川照之の好演もあって印象的だった。
先週ラスベガスで開催されたコンスーマーエレクトロニクスショウ。昨年以来瀕死の重傷状態の日本のTVメーカーの目玉は残念ながらほぼ全社が4Kテレビだった…。そうでなくとも毎年一社たりとも個性を打ち出すことなく右へならえのマーケティングには残念ながらがっかりせざるを得ないのだが、今回もまったく同じ状況で本当に呆れてしまった。おまけに日本独自の技術ならともかく3Dテレビの時と同様、SAMSUNGもLGも4Kテレビを発表。これでは3Dの時と同じように最初から価格競争に巻き込まれて、またまた同じ轍を踏むことは明白だ…。そして今の世の中、どれだけの人が小じわまでしっかり見えてしまう現行のテレビの画質以上の高品質な部分に付加価値を感じ、2割も3割も高い金を払うのだろうか??誰が考えても明白なこの部分に気づかないのはとてもおかしいと思うのだが…。というか4K以外に新たな新技術の開発が考えられなかったというのが本当のところかもしれない。自分的には「ほしいと思われてないものをつくって売ろうとしている」としか思えない。これでは弥太郎が売っていた鳥籠と変わりがない。それにしても、どうして日本の大手メーカーというのは個性がないのだろうか?今回(実は昨年も)はせめて一社ぐらい「映像技術は現行のままで十分という判断のもとに、今年は省エネに力を入れました。今回発表の新型TVは、今までのTVより消費電力を50%削減に成功!SAMSUNGやLGより3割高いですが、3年試使用すれば、その差額も解消でき、さらにそれ以降は十分メリットのあるTVです!」というTVを発表してもらいたかったというのが本音だ。
携帯電話の時もそうだった。以前にも書いた記憶があるが90年代の初頭、自動車電話と携帯電話が急速に普及しはじめ自動車社会のアメリカにおいては非常に期待が持てるということで、日本の大手電話メーカーはほとんどがアメリカ(NECはメキシコ)に工場を設立し生産を始めていた。それが96年(だったと思う)にアメリカが移動体通信の方式をCDMAに決定した途端、DOCOMO方式を期待していた日本勢は当時の日本の携帯市場隆盛もあってほぼ全社が潮が引くように撤退…。なぜ一社ぐらいCDMA方式を採用し、こちらの市場で頑張ってみようと思わなかったのか…。余談でいえばその時、国内市場がほとんどなかったSAMSUNGとLGは、さっそく同方式の携帯を開発し、アメリカ市場を牛耳ったばかりか、同方式を採用したヨーロッパにおいても市場を席巻している。そしてこれが彼らの知名度を上げ、今日のスマートフォン市場においても好業績を生む結果になっているのだ。
日本勢はこのような経験を何度となくしていながら、今回もまたTV産業という本当に大きな柱を同じような過ちで失おうとしている。自分は日本人、それもいままで日本のTV産業で生計を立ててきただけに何とか踏ん張ってもらいたかったのだが、それも残念ながらあきらめざるを得ないのかな、という悲しい決断を強いられた感じが否めない…。
さてそんな状況だが、製造業の状況は、ひとつ前のブログにも書いたように今大きく変わろうとしている。これからの製造業、コンスーマー製品に関しては明らかに大手偏重ではなく個が注目を浴びるであろう胎動が聞こえてきているのは自分としては本当に興奮を隠しえない。勿論、このような製品がヒットするというのは1000三つの確立かもしれないが、少なくともそうい市場にチャレンジしてくる新興勢力がどんどん出てきてくれることが、いづれ必ず大きな力になるように思える。特に期待したいのは今まで大手の傘下で生きてきた多くの中小企業の方々だ。彼らが今まで親元のために培ってきた技術やノウハウにはかなりすごいものがたくさんあると思う。内容的には前回と同じことを言っているが、できればそういうノウハウや技術を自分たち独自の新しい商品開発に生かすことができないか??今まで見てきた多くの中小企業、特に受託製造を行ってきたところは残念ながらセールス、マーケティングといった部分が非常に脆弱に思える。それは当然で親元から黙っていても仕事がもらえた環境があったからだが、そんな親がナサケナイ状況になってしまった今こそ、そのような関係を切り捨てて原点に返り、インターネット、ソーシャルメディアで情報を収集し、仕事の合間で勿論OKなので、3Dプリンター、安価な開発ツールやインフラを利用して独自の商品、それも「ほしいと思われているもの」を開発してみてはいかがだろうか?ヒントはあちこちに転がっていると思うし、志のある会社には自分もできるだけの応援をしたいと考えている。
2013年はそんな、気概と志のある日本の中小企業の皆さんと本気で語り合い、ひとつでも多くの会社が実績を残す手伝いを真剣にしていくことを自分の抱負にしたいと思います。

NOKIAの話を聞いて来年に向けて考えた事

2012年も、あとわずかで終わろうとしている。クリスマスも終わった今日、品物を納品にNOKIAのシリコンバレーオフィスに足を延ばした。通常アメリカではクリスマスからNEW YEARの1月1日にかけて、ほとんどの企業がSHUT DOWN、もしくは開店休業になるのだが、クリスマス明けというのに、オフィスはオープンしておりエンジニアたちは仕事をしていた。28日まで勤務だという。実は数日前、ここに勤める古くからの知り合いに数年ぶりに再会して色々と話を聞いた。元SONYの生産技術エンジニアだった彼は、確か2000年の初めにこちらのスタートアップに勤務、その後の変遷を経て現在に至っている。アメリカでは、SMART PHONEの普及にともないAPPLE, SAMSUNG, HTCの台頭により、ほとんど撤退モード(失礼)といった感のある同社だが、実はこのR&Dセンターには百名以上のエンジニアが勤務しているという。そして彼とそのチームが現在携わっているのはハードウェアの開発、それもなんと20年後30年後に予想させる通信ネットワークに使用されるであろう端末やメインシステムの開発をしているというのだ。端末市場をほとんど失ってしまったアメリカにおいて、同社がこんな規模で研究開発を行っているのは、ここシリコンバレーは人材の確保がしやすいだけでなく、この地が将来においても間違いなくデファクトスタンダードを生み出す場所であることを認識しているからであろう。それにしても、なんと壮大でスケールの大きなプロジェクトではないか@@!そんな未だ未知の世界のプロジェクトに多くの人材を投入しているNOKIA。これこそが本当の意味で世界制覇を狙うグローバルな会社のあり方であり投資の方法だと思う。知り合いの彼自身も食事をする暇もないくらいめちゃくちゃな忙しさだが夢のある仕事に本当に満足そうだった。
一方で今までは銀行の世話にならずに潤沢な資産によって君臨していたPANASONICやシャープ。その大半をプライオリティをつけられない間違った経営方針と、将来を見据えない中途半端な開発計画への投資によって失い、今や瀕死の状態で、かつては見向きもしなかった銀行に救いの手を差し伸べている彼らの状況をみるにつけ来年以降の復活に関して言えば、残念ながらNOKIAのような海外の列強とのアクションの違いから、ため息をつかざるを得ない状況だ。

さて今年に入って注目すべきことは、新しい製造のスタイルが急速に普及し始めてきたということだ。これには3Dプリンターの存在とアルデュイーノ(オープンソースハードウェア)等、新たな開発ツールの普及が非常に貢献しているのだが、新しいスタイルとしてお金をかけずに簡素化した機能やデザインを重視したプロトタイプを製作し、ソーシャルによって資金集めをするという流れが非常に面白くなってきている(このあたりはクリスアンダーソン著の「MAKERS」に詳しいです)。特にもともとハードウェアを得意中の得意としてきた日本の製造業にとってはもしかするとこれが新たなブレークスルーになる可能性が非常にあるような気がするのだ。勿論、大手ではなく今まで彼らに奉公してきた中小企業にとっては献上するだけの部品や部材だけでなく、今こそ自社のオリジナル商品を世に出す敷居が非常に低くなってきたということを理解し、是非、来年はこのあたりに真剣に取り組んでもらえたらと思う。

上記のNOKIAと日本の大手企業の歴然としたグローバル企業という意識の差を見るまでもなく、そして新しい選挙で政党は変わっても残念ながら今の彼らの技量では国際関係の体たらくの穴埋めに右往左往して、本来最も必要な国内経済の体質改善には気が回りそうもないし、大手企業の記者会見を見る度に感じる彼らの間違った方向性も、どこかが良い意味で破綻でもしない限り変わりそう(わかりそう)もない状況を見るにつけ、何度も以前から一貫して主張していることだが、彼ら大手に頼る体質を自ら早期に改善し、今まで生業のに加えて来年は少しオリジナル商品を開発しアピールするような計画を立ててみたらどうだろう?

NOKIAの話を聞いて、来年に向けてこんなことを考えてみた。2013年が、皆さんにとって素晴らしい年になりますように!

マーケティングの重要性を真剣に考えてみるべきだ!

少し時間が空いてしまったが(スミマセン)、今回も食べ物の話から…。シリコンバレーの古くからの知り合いで飲食店を展開し大成功している友人がいる。彼はこちらでは一般的な寿司カウンターのある日本食レストランを2店と日本風にメニュー構成をした中華レストラン1店の3店舗を経営。特に日本食レストランは連日行列のできる繁盛店。それが何年も続いている。もちろんシリコンバレーには同じようなレストランは山のようにあるが彼の店だけが特別に繁盛しているのには彼のしっかりした戦略があった。大きな特徴はといえば客の大半、少なくとも8割近くは日本人ではなくアメリカ人、それもアジア系の人たちだ。味付けはといえば、もちろん本来の日本食のそれではなく、日本人になじみのメニューに少し手を加えてアメリカ人受けするようにきちんと工夫されている。少し甘目の効いたテリヤキ(あえてカタカナで書きます)。ころものボリュームがある天ぷらにダシよりは醤油風味がちょっと際立った天つゆ等々、個々の詳細を聞いたわけではないが、それなりの工夫がされていることは間違いがなさそうだ。これは寿司にしても同じである。彼曰く「いま日本食レストランで一番お金を落としてくれるのはハイテク企業に勤めている中国人を中心とした20代から30代の若者たち。彼らが寿司を食べ始めた時には、既にカリフォルニアロールやフィラデルフィアロールといった俗にいうミッキーマウス寿司がスタンダードとしてメニューにあった。このような客にシャリの炊き方が重要とか青物の〆方が重要とか、ネタの寝かし方が肝要とか、このようなところにこだわってもまったく意味がない。なので勿論妥協はしないが仕込みを含めた部分でこだわりを抑え、万人に合う味を提供することが繁盛につながる」ということだった。なるほどといった感じ。このベーシックに加えて、上記に書いた味付けの工夫、たとえば甘味がある卵料理はゲデモノ料理と同等というアメリカ人の意識に基づきダシ巻卵の甘味を抑える等の工夫を施すことが繁盛のベーシック、つまりマーケティングとR&Dの賜物だといえると思う。
このマーケティングとR&Dがグローバル化にいかに重要かということは、「ものつくり」を自負している日本の中小企業に実は今一番欠けていることだと思う。最近多くの日本の中小企業の皆さんと会う機会があり色々と話を伺う中で、それぞれ素晴らしい商品や技術を持っているのだが果たしてそれらが今のトレンドである製品の何に応用できて、どこに使ってもらえるか?このあたりにリサーチしている会社は残念ながら非常に少ないことが分かった。つまり自分たちが作った製品がそのまま世界で通用するという事はまず皆無だという事を残念ながら今までお会いした企業の殆どが理解していないような印象を強く受けているのが現状だ。少したとえは異なるが具体的な例でいえば、知り合いが、あるアメリカの著名企業のCEOを日本に招請した際、金沢の代表工芸である金箔製造を見学させたそうだ。その際にCEOはそのプロセスを見て(もちろん金箔製造は日本以外でも行われているが)、その技術力の高さと製品の素晴らしさに驚嘆したそうだ。が、結局それで終わりである。仮にこのCEOが今トレンドのハードウェアの生産主だとしても、それが、この会社の製品にどのように生かされてコストダウンや製品の付加価値に応用できるのか、その薄膜精製の技術を応用してさらに素晴らしい製造技術を確立できるのか…というところまで言及されなければ結局この金箔製造は金沢の伝統工芸のままで終わってしまうのだ。
ものつくりを標榜し、それに酔っている感のある日本の中小企業の皆さん。確かにその技術や製品には素晴らしいものがあり、それによって数々のヒット商品を世に送り出してきたことも事実だろう。しかし、これからさらにグローバル化を図り業績を上げていくためには、今のトレンドや市場の需要にそれらが合致しなければ何の意味もない。このあたりを真摯に受け止めることによって自分たちの持つ技術が、たとえば今旬であるスマートPHONEやタブレットPCにどれだけ需要があり、それによって製品のコストダウンが可能になるのか一度真剣に取り組んでみてもらうことを是非お勧めしたい。もし需要がないことがわかればそれもまた良し。他の新しい市場をさらに開拓するきっかけにもなるのだとPOSITIVEに考えてもらえばと思う。

ラーメンの話から新たに思った事

久しぶりに山下さんとお会いして酒を酌み交わしながら昨今のラーメン事情などのお話を伺った。山下さんはNIPPON TREND FOOD SERVICE, INCという製麺会社の代表だ。アメリカにおいてラーメンを中心とした麺類の普及と販売に全米中を飛び回っている。もともとはリンガーハットの対米進出の際に、その製麺部門のTOPとしてアメリカに赴任し、リンガーハット撤退の後、その工場を引き取って麺の製造販売を開始、今はどこの日本食マーケットにも置いてある山ちゃんラーメンのパックでも有名であり、最近目覚ましく増え続けているラーメン専門店へのオリジナル麺の供給も順調だ。業種は違うが起業家の大先輩でもある。そして個人的に自分がシリコンバレーでラーメン屋を始めた時に大変お世話になった。

今から9年前の2003年、私は日本のパートナーとともにシリコンバレーのサンノゼに新しい試みとしてラーメン専門店をオープンした。当時、本格的(風)なラーメン屋はシリコンバレーに1,2店しかなかった。その割にこちらに在住の日本人に聞くと10人中少なくとも8人が一番こちらで食べたいのはラーメンだという。そんな需要があるのに、なぜラーメン屋が少ないのだろう?まずはそのあたりのマーケティングからスタートした。色々と日本食のレストランを営むオーナーに聞くと、まずラーメンは「儲からない」という。当時すでに醤油豚骨という新しいムーブメントとともに日本でブレイクしていたラーメンだが、まずそのスープの材料となる食材の流通がない。日高産昆布だとか利尻産身欠き鰊など等、ラーメンのスープ作りには欠かせない材料は需要が少ない分、非常に高価だった。それで一生懸命ラーメンを作ったとしても日本人の感覚的にはラーメン一杯の値段はタクシーの初乗り料金とおなじイメージで、おまけに日本人はラーメンに関してはうんちくを語る輩が多いために、万人の舌に会う味だすのは到底難しいというのが理由であった。
なるほど自分で原価計算をしてみても日本の感覚でラーメンをこちらで作ると、原価で軽く初乗り料金のイメージである$6.90(当時)は超えてしまう勢い。これだったら一品2貫で瞬時に客先に出せる寿司、例えばハマチは2貫で当時$6ぐらい、原価は半額以下だし、何品も食べてもらえて客単価の高い寿司の方が確実にもうかる計算だ。しかしながら、きっと方策があるだろう、ということでリサーチを重ね、まず手掛けたのは、スープの材料をこちらで手に入るものに置き換えられないか?ということ。日本より安価で手に入るムール貝や肥料としての需要しかないエビの頭など色々なものを試した結果、だいぶコストを抑えることに成功、加えて日本人以外のアジア人も何とかターゲットにすべく、当時$3.50で食べることができたベトナムのPHOや中国の米粉、刀削麺など色々な麺も分析したりした。そんな時期に山下さんには本当にお世話になり、カスタムメイドの素晴らしい麺を作ることにも成功。開店したラーメン屋“HALU”は連日行列ができる繁盛店になった。自分は残念ながら本業との両立が難しく、また日本のオーナーとの展開に関する見解の相違から1年半で経営から手を引いてしまったが、ローカライズの重要性やリソースの現地化、コンスーマーを対象にしたマーケティングとコストの設定を含め貴重な経験と学習をすることができた。そして、これらは自分の本業であった製造業の対米進出の際に必要不可欠であるリサーチとマーケティング、ローカライズとコストの設定など、ほとんど同じ感じというのが自分にとっての結論だった。

あれから9年、ラーメンは地位を確立し、アジア人を中心としたアメリカ人の間に完全に定着した。いまではシリコンバレーだけで10店舗以上、繁盛店は多店舗展開にも成功し現在も参入が相次いでいる。もちろんその舞台裏には、麺というラーメンの命ともいうべき部分でしっかりR&Dを行い、そのマーケティングに全身全霊を注いできた山下さんの功績は大きい。
加えて、もう一つの大きな功績は、ラーメンを価格の面でも独自の地位として定着させたことだ。今ラーメンの単価は大体$8.50.中国製の麺類やベトナムのPHOに比べればはるかに高いのだが「ラーメンとはそういう食べ物だ」という地位をしっかり確立している。これは素晴らしいことだ。同じ麺類の中でもラーメンは別格であるということをアジア人が中心ではあるがアメリカにしっかりと根付かせたことによって、私が当時苦労したような原価の軽減にあまり神経質にならずとも、ビジネスを展開できる土壌ができているわけだ。そのラーメン屋向けの麺を販売している山下さんにとっては、まさに大成功のマーケティングだったと思う。そしてある意味ラーメンを通じてだが日本の食文化のグローバル化にも多大な貢献をしている点、本当に素晴らしいと思う。
考えてみれば単純にアメリカ国内において価格競争に翻弄され敗北しているTVを中心とした日本の製造業において、この状況は、もしかしたら新しいヒントになるような気がした。そうでなくとも「ものつくり」というブランド(?)に固執している日本の中小企業においては、正直なところ大半は「ものつくり」の呪縛に縛られているだけだと思うのだが、本当の意味で優れたもの開発し作ることができれば、その製品(技術)は地道なマーケティングとPRによって価格競争に翻弄される事なく、しっかりとした地位を確保できるのではないか考えた次第である。そして、それこそが今の日本の中小企業に求められるイノベーションであるような気がする。勿論そのためには、その技術(製品)を知らしめるためのインフラ(最近ではエコシステム?)が必要になると思うのだが、私としては今までの経験を生かして、何とかそのインフラの一端を担うことによって、このBLOGのテーマでもある日本の中小企業のアメリカ進出をより強力にバックアップできればと、山下さんとの話の中で、さらに強く思った次第である。

P.S. 山下さん、有難うございました!

 

ハードウェアが注目されてきそうだ!

アメリカの大統領選まで50日を切った。各候補はこの時期各州を訪問して精力的に選挙活動を展開している。民主党候補のオバマ大統領(実は私と同じ歳。誕生日も1日違いで、勝手に親近感もってます)は、再選に向けて特に中間層へのPRをメインに雇用問題の打開を前面に打ち出したスピーチを繰り広げている。特に中西部では、勢いに乗りつつある自動車産業をさらにバックアップする姿勢を明確にし雇用の面では中国、アジアに流失したマニュファクチャリングを再びアメリカに戻すといった事を明言していた。 2000年以降、中国や東南アジアが製造拠点として大きく発展した影響でアメリカ国内では、50,000以上の製造工場が移管および閉鎖され、500万人以上の労働者が職を失ったといわれている。これをアメリカに引き戻し失業率を軽減することが今回の選挙戦でもも重要な政策として考えられているだけに、その実現に向けての方策もこの先、新規の高速鉄道建設なども含め、色々と打ち出されていくであろう。
さて、実はこのBLOGにも過去何回も触れてはいるが、ここにきてまた製造をアメリカに戻すという動きは非常に活発になってきているようだ。先週も今まで中国で製造を行っていたデジタルサイネージメーカー”ALTIERRE”が製造拠点をシリコンバレーに移し、100名規模だか工場を新設、今後は市場のあるこちらでの生産を行うという記事がシリコンバレーの中心的メディアであるSAN JOSE MERCURY NEWSで紹介されていた。同誌では新規に”MADE IN SILICON VALLEY”という新しいコラムも設け、この地の製造業を紹介している。またCONSUMER ELECTRONICS業界の覇者であるSAMSUNGは、同じくシリコンバレー(マウンテンビュー市)に大規模R&Dセンターを設立。将来的に1,500人規模の雇用をする予定だ。勿論、R&Dなので、直接製造業には結びつかないかもしれないが、少なくとも新製品のプロトタイプなどは、この地で生産されるようになる可能性は高いといえよう。
確かに東南アジア、特に中国での昨今の人件費高騰は、この流れに拍車をかけていることは間違いないと思われるし、ほかにも以前2月にこの「アメリカ製造業復活の兆しを考えてみた」というタイトルで書いたブログの内容にある理由も間違いなく現実となってきている(最近輸送費も燃料費などの高騰でかなり値上がってきた)。そして、今回新たに考えたのは、ハードウェア自身の需要が増えてきているということだ。これは先般お会いしてお話をさせていたたビジネスの上での大先輩であるMさんから話を伺い、自分も「なるほど!」と激しく共感したことなのだが、ソフトウェアの大規模化と複雑化がさらに進むと、それをつかさどるハードウェアにもそれなりの進化とそのソフトウェアの機能を十二分に引き出すためのスペックが要求される。またいいソフトを持っているだけではだめでそれを機能させるためのハードも持つことが、この先の企業の発展にもつながるということがここのところ非常に鮮明になってきているということだ。これはAPPLEの成功に呼応するかのようにNEXUS 7やSURFACEでハード武装化を本格的に始めたGOOGLEやマイクロソフトを見れば明白だと思う。このような流れなのでIT産業の中心として基本的にはソフトウェアメインの産業地域と見られがちなシリコンバレーで、それらをつかさどるハードのR&Dを行い製品を設計して少なくとも市場のあるところでプロトタイプを作りリリースをするというのは自然な流れだという感じがする。まあ憶測だが、そんな需要に目をつけて大規模R&Dセンターを設立したSAMSUNGはやはり凄い!というか世界を獲りに行く会社なんだな~という思いを新たにした。
というわけで、これからが旬のタブレットPC市場においてガラパゴスで早くも失敗し今は瀕死の状態のシャープ、出口のない迷走を続けそうなSONYやPANASONICの状況を見る限り、残念ながらハードウェアにおいては将来的な期待を持てるところも少なくなっているのが今の日本の現状であるけれども、ハードウェアの需要拡大に伴い製造業が、これから盛り上がりの様相を見せているシリコンバレーを新たなターゲットとして日本の中小企業が視野に入れることは十分に価値があると思う。

アップルVSサムスン訴訟の判決で考えたこと

スマートフォンをめぐるアップルとサムスンの訴訟はアップルの勝訴で幕を閉じた。これによって「ああ、やっぱりサムスンは物まねの会社なんだな~」と思った人,特に日本の電機業界にかかわる人の中には、かなり多かったのではないだろうか・・。確かにサムスンは物まね会社だった。早いもので今から26年も前の1986年、日本のベンチャー企業で働いていた私はサムスンのKNOCKDOWN生産のプロジェクトのために頻繁に韓国のサムスンの製造拠点であった水原市の生産技術研究所に通っていた。当時自分のいた会社の主力製品はPCボードの検査機。電気製品の基幹となるPCボードにきちんと部品が実装されているかを検査するシステムのメーカーに勤務していたのだが、その検査機にサムスンが目をつけ、「どうですか?部材の安い韓国で製品の製造をしてみませんか?」という誘いにのってのプロジェクトだった。もちろん先方の目論見はわかっていたので断ることもできたのだが、当時すでに顧客であった同社に反旗を翻すわけにもいかず、また「製品をコピーされても、彼らが追いつけないような新しいものを開発していけばいいさ。」という甘い考えもあった。形態としては検査機の心臓部である計測系のハードを私がいた会社が供給し、それ以外の部分をサムスンが製造するという流れだったのだが、購入したのは最初の20セットだけで後は見事にコピーされ、検査機はサムスンの製造ラインのスタンダード製品となり、サムスンの全製造工場の製造ラインに設置された。その数は10,000台を裕に超えているだろう。もちろん新しいものを開発していけばという安易な考えは日本の一介のベンチャー企業と異なりソウル大学に奨学金で通い国益のためにという名目で兵役をも免除された秀才エンジニアばかりを集めた同社には敵うはずもなく安心しきっていたROMのデータまで簡単にコピーされてしまった。そして私が通っていた生産技術研究所の広大なフロアーには、この検査機のみならず当時世界最高峰といわれていた日本のPCボード製造ラインの数々の製品、PANASONICの実装機、日本電熱計器の半田層などが、彼らの手によってリバースエンジニアリングされていた光景を今でも鮮明に覚えている。
しかしながらCONSUMERエレクトロ二クス、家電分野でいえば、彼らの、このような物まねも2000年の半ばまでだったのではないだろうか?それ以降のサムスンの製品、特に自分が深く携わっていたTVの分野でいえばLCDやプラズマの薄型が主流になった段階で完全に立場は逆転していたように思う。日本勢が薄型TV では先行してキリギリス状態になっていた時期に彼らは製品のR&Dに執拗なまでに注力し、いかに基幹部品のひとつ、ワイヤーの一本でも減らして安価に効率よく生産できるかに心力を注いでいた。そして同社と同じプロセスを踏んでいたLGとともに市場を席巻し現在に至っているのは周知の事実である。そんな状況に、ようやく尻に火がついた日本勢が「なぜ韓国勢はあんなに安くTVを作れるのだろう?」ということで2008年ぐらいからPANASONICをはじめSHARPもSONYも皆サムスンやLGのTVを分解し必死になってリバースエンジニアリングをしていたことはあまり知られていないだろう。おまけで言えばデザイン性まで完全に優位に立った韓国勢のTVと全く類似したデザインのTVを2011年に新製品と称して日本の雄であったPANASONICが発表した時には残念ながら絶望感を感じてしまったものだ。また最近で言えば1cmを目標に薄ければ薄いほど良いというLCD TVに固執していた生産を既にサムスンは辞め2cmであっても安く製造する事が肝要というマーケティイグデータをもとにさらなる市場拡大に挑んでいる。いまだに4KやらビヨンドTVと称して高付加価値にこだわる日本勢には、残念ながら明るい未来はない感じがする。
とまあ話が長くなってしまったのだが、要は「サムスンは物まね会社だ」というのことはやさしいのだが、物まねされるような技術や製品がありながらグローバル市場で成功できなかった日本勢は真摯にその現実を認めるべきであり、その中から新たな活路を見出してもらいたいと思うのだ。この辺りは先日ダイヤモンドに寄稿された安藤さんの記事と全く同意見だ。非常に残念かもしれないが自力でどうにもできなければグローバルに展開する企業の軍門に下ることもありではないか? 特に今後その需要拡大が期待され日本が優位に立っていた電池、モーターの分野においては、その技術の流出を憂慮するより、逆に潤沢な資金のある国外企業に入りこみながらも、いぶし銀(表現がおかしいかも知れませんが…)のような技術を供給しつづける努力をすることで、大中小を問わず確実にイニシアティブをとることができる日本企業の出現に大いに期待したいところだ!

家電があるじゃないか!

一昨年の3D機能を最後にTVは進化を止めてしまったようだ。これに呼応するかのように値段の下落がはなはだしい状況で、最近のこちらの市場では、50”のLCDテレビで$600台が定着している。日本円でいったら5万円だ。SHARP,SONY, PANASONICといった今まで世界に君臨していたTVメーカーが軒並み総崩れになってしまったのも無理もない気がする。ちなみに日本で生産していた当時のLCDパネルの工場出荷価格は昨年の時点では50”で概算50,000円ぐらい。すでにこれをアメリカに持ってくるだけで、こちらの競合他社の販売価格と同じなのだから、お金をつけて販売しているような結果になっていたわけだ。巨額損失のあと、上記3社をはじめ日本のすべてのメーカーは少なくとも40”以下のTVを現在では台湾系、中国系のEMS企業でODM生産している。本当に残念といえば残念だが、デジタル化によってコモディティ化してしまった商品はこのような末路になってしまうということを真摯に受け止め、今後に生かしてもらいたいと思う次第だ。
さてさて、アメリカにいると、あまりそのあたりの情報が入ってこないので、ついつい疎くなってしまうのだが、出張の際に足を運ぶ家電量販店の賑わいには目を見張るものがある。そして、そんなTVの業界にどっぷりだった自分の目線で日本の家電に目を向けてみると…。これがなんとビックリ仰天@@(って疎いのが自分だけだったことを痛感する感じだが)!日本の家電はますますハイテク武装し機能も強化されておまけに価格も軒並み上がっているではないか!!!、特に驚愕なのは炊飯器。10万円台がざらにある。こんな炊飯器でご飯を炊いたら本当に涙が出るほど美味いんだろうな~と思うけれども10万円という価格には驚いてしまう。そしてほかにも目を向けてみると、プラズマクラスターが標準装備された空気清浄器やエアコン、エアコンに至ってはアレルゲン除去機能までついている。サイクロン式掃除機は、これまた軒並み10万円近い値段のものが並んでいるし、冷蔵庫には無駄に冷凍させず鮮度を維持するパーシャル機能やナノイー(これらはPANASONIC製)というイオンで除菌脱臭までしてしまう機能が付いたものが標準的だ。当然こちらで見かけるようになったLGやSAMSUNG製のドラム型洗濯機の大元は日本メーカーだし、あの洗濯音の静かさは、アメリカブランドの大音響(大げさかな?)に比べたら雲泥の差があると友人がおしえてくれた。そしてスチーム型電子レンジ等々…。とにかく凄いのだ!

”なんだこんな素晴らしい家電があるじゃないか!!”

と正直、思わざるを得ない。アメリカの電気量販店に行っても日本製をCOPYしたとしか思えない、LGやSAMSUNGNの冷蔵庫や洗濯機。老舗として未だに健在なGEやWHRILPOOL、参入してきた中国はHAIERのアプライアンス製品。そんなものが店内に鎮座しているのだが、残念ながらこ優れた日本の家電たちは見たことがない。なぜだろう???本当に不思議である。勿論、ブランド名だけつけたOEM製品と思しきSHARP製、QUASER(PANASONIC)製はあるのだが値段の安い旧態依然のものばかりだ。やはり価格がネックになっているのだろうか・・・・・。

実はアメリカ、その一部を占める富俗層のお宅にお邪魔すると、いままで見たことも聞いたこともないようなブランドのキッチン製品や冷蔵庫、電子レンジ、オーブンなどが並んでいる。INDESIT, CAPITAL, SUB ZERO, Northland, Leibherr等々…。こんなメーカーの商品が彼らのキッチンには鎮座しているのだ。勿論大きなキッチンにふさわしく商品も大型だったり、いろいろと特徴がある(アンダーテーブルに入る製氷機やセラー類、壁に収納できるレンジやオーブンなど)のだが、少なくともこのようなところに直接参入するのではなく、独立型の商品として、この富俗層向けの高級家電としての位置づけで日本の優れた高級(日本では一般的だけど)家電を売り込むことは十分可能ではないかと考えられる。乾燥したカリフォルニアにナノテクで肌に潤いを与える機能の付いた空気清浄器、中西部で一週間の買い物を一回で済まさなければいけないエリアには鮮度を長期に保つ機能がついた冷蔵庫、そして高温多湿なエリアにはダニやカビをとる機能がついた掃除機や日本の夏を乗り切るためのアイデアが施された家電の数々は必ず需要があると思う。考えれば考える程、また国土の広いアメリカだからこそ、その可能性は広がると思うのだが、いかがなものであろうか?
とまあ、このような市場があるにもかかわらず、いまだに日本の家電をほとんど見かけないのは既にそれなりのことをやったのだが、ダメだった…。ということかもしれない(かな?)。しかしながら、この先ほとんど見込みがなく回復の余地がなさそうなTVの生産と販売にしがみついているよりは、このような新しい可能性に向けて再度マーケティングをスタートさせる会社(今回は大手企業ですよ!)が1社ぐらいあってもよさそうなものだと思う。今までのように皆で同じ方向をむく!ということに執着しないで独自の道を切り開く会社が出てきてくれる事に期待したい!そして、これでうまくいけば、将来的には、そのもとで頑張る何十社もの協力工場の活路にもなるのだから。。

電子書籍端末とタブレット型PC市場はどうか?

ここのところ、タブレット型PCや電子BOOKの端末発表が相次いでいる。既にアメリカでは最大のシェアを誇るIーPadをはじめとしてAMAZONのKINDLE, アメリカ最大の書店チェーン、バーンズ&ノブルのNOOKが市場に出回っていたが、6月半ばにマイクロソフトのサーフェースが発表になり、そのあと6月の末にはGOOGLEのNEXSUS、日本ではKINDLEの参入に呼応するかのように楽天がKOBOを超低価格で発表。これに付随するためのソフトウェアも大日本印刷など大手のバックアップによりますます一般的になってくる感じだ。勿論タブレットPCと電子書籍端末の位置づけは異なるのだが、本を読めるという点では共通している。
これらの製品に要求されるのは、というかこれらの製品の優劣を分ける要因としては当然のことながら高画質のディスプレイとデータ容量の大きさ。そして長時間の稼働を実現するバッテリーだ。また落下の場合の耐衝撃性や風呂でも読める防水性(これは一部の需要ですね…^^;)等々、これらの技術を低価格で供給することができれば、これから市場はますます広がると思われる。
さてさて、そんな新たな市場の隆盛を見てみると当然われらが日本勢、それも中小企業がそこへ食い込目る可能性も極めて高い(毎回同じような話になってしまいますが…)と自分としては考えたい。少なくともSHARPのLCDパネルの高画質を実現した裏には多くのFILMメーカーの製品が不可欠だし、高寿命バッテリーには今はどこも覇気を失ったが今まで世界を席巻していたSONY, SHARP, PANASONICの電池事業を支えてきた多くの協力工場があるはずだ。彼らが独自の製品や技術を駆使して、これらの新市場に独自に進出できれば(というか開発時のスペックインに食い込めれば)、量産時の生産に関しては東南アジアや新興国になっても極論をすれば新たな展開の可能性はあると思う。勿論そこには新たなR&Dが必要になるし彼ら(日本の中小企業)が不得意としているマーケティングにも真剣に取り組まなければならないだろう。衝撃吸収でいえば生卵を落としても割れないパフォーマンスとαジェルとしてシューズメーカに採用され一躍脚光を浴びたT社は、今新たな市場開拓のためにシリコンバレーに拠点を構え、これらのタブレット型端末の新しい市場や振動吸収が必要となりそうな半導体製造メーカー、医療機器メーカーへの食い込みを狙って奮闘している。この努力が大事なのだと思う。やるだけやってみて市場がない、もしくは要求されたスペックに到達できないということであればそれは仕方のないことだ。そこで次を考えればいい。そして、その努力を日本人ならできるはずだ。少し話がそれるかもしれないが日本の米が世界一美味いのにはちゃんとした理由がある。それは遠い昔、日本は税金が米だったからだ。平安時代の荘園制あたりから年貢米を納められない民が断罪に処されてきた結果、日本人は地域ごとの気候や季節の変化、水質、天災などの状況においても確実に収穫が出来るコメを必死に品種改良してきた。その結果、鎌倉時代にはすでに100種類近い品種があったそうだ。当時は勿論、上からの強制と生死をかけての葛藤があったことは事実だが、やるときはやる!そして努力を惜しまない気質がそこにはあったように思えてならない。
このDNAが少しでも残っていることを期待して、多くの会社が挑戦してみよう!という気になってくれれば、この新しい市場に食い込めることろが少なからず出てくるに違いないと考えている。

テスラモーターズの戦略から考える。

5月の終わりに、世界ではじめての民間宇宙貨物船が宇宙ステーションへの運搬任務を完了し無事地球に帰還したニュースが流れた。この宇宙貨物船を開発した会社はSPACE X。シリコンバレーのもっとも成功した起業家の一人であるイーロンマスクが2002年に設立した会社だ。イーロンマスクはアメリカでもっとも普及しているオンライン決済システムであるPAYPAL(最近日本でも普及しつつあるらしいが)の開発者で、その会社を世界一のオンラインオークション会社であるebayに売却して得た巨万の富で、2002年にこのSPACE X社を設立。これまでに何回かの打ち上げを行ってきたがいづれも失敗に終わり今回が最初の成功になった。この成功により、本格的な宇宙開発にも弾みがつくとNASAをはじめとした関係者は語っている。
実はこのイーロンマスク、電気自動車(以下EV)のベンチャー会社テスラモーターズの創業者でもある。SPACE Xに遅れること2年後の2004年に設立されたテスラモーターズは4年の開発期間を経て2008年に最初のロードスターモデルを発表しセンセーショナルなデビューを果たした。その後2009年に新しいセダンを発表したが実際の発売は今年(2012年)になる予定(6月22日に販売開始になりました)。同社にはトヨタが2010年に50億円の出資をしたことでも話題になっている(って過去の話になってはいるけど)。そして2013年にはRAV4のEVモデルを発売するという話もあるが未だに不透明だ。自動車メーカーとして鳴り物入りで参入してきた割には未だに発売されたモデルは2車種のみであり実際には何をしているのだろう??という疑問も少し抱かざるを得ないのだが、実はこの会社が最も力を入れているのは高性能車載用バッテリーの開発だ。自社ブランドの車であれば車種が多ければ話は別だが、当然モデル数をある程度確保し台数を売らなければ会社の利潤を維持することは難しい。特にものすごい額の初期投資が必要な自動車メーカーへの参入ということになればなおさらだ。ところが将来的に電気自動車には不可欠になるバッテリーであれば自社のモデルに限らず性能が評価されれば、当然不特定多数のメーカーへ販売ができるわけだ。この方が会社としての利潤を確保することは容易だし車種別の生産ラインの構築も必要なくなるので投資も抑えることができる。決済システムという物販には必ず必要になるインフラで巨万の富を得たイーロンマスクが考える自動車メーカーのゴールがここにありそうだという事は容易に考えられる。同社は既にメルセデスやVW向けのバッテリー供給に関する提携を結んでいるという。
実はこのEV用のバッテリーに限らず、家庭用蓄電池をはじめ、細かいものでは長寿命のタブレットPCやスマートフォン用のバッテリーなど、この分野の需要は急激に伸びてきている。そんな需要に呼応するかのように、アメリカ国内だけでも既に24社のバッテリーメーカーがあるようだ。彼らが、EV用に限らず、いろいろなマーケットにおける覇権の確保に精力的に技術開発をおこなっている。かつて日本は高性能バッテリーの一大生産国でもあった。SANYOはもとよりPANASONICやSONYの高性能バッテリーや電池は世界中で評価されていたのだが、SANYOが亡くなりPANASONCやSONYも巨額損失を余儀なくされた今、これらの事業にも少なからず影響が出ていると思われる。そして本当の意味で彼らの実績を支えてきた数多くの中小協力工場はどのようにして今後を考えていけばいいのか??2次電池用材料の精製技術をはじめ殆どの技術は彼らによって確立されたものだ。現在では韓国、中国のメーカーが、こぞってこれらの技術をもった会社との提携を進めようとしているという。日本人としては何とも歯がゆいのだが、これも今後の方策としてはありかもしれない。そして、可能であれば今アメリカでHOTな産業になりつつあるこちらのバッテリーメーカーにも自分たちの培われてきた技術を元に積極的にアプローチをしていけば、間違いなく日本の大企業に依存しているよりはポテンシャルがある展開ができるのではないか思う。志のある中小企業には、できればこんなアクションを早期に起こして何とかアメリカでの躍進を実現してもらいたい。