FACEBOOKの上場をものつくりの視点からみる

FACE BOOK(以下FB)がいよいよ明朝(5月18日)上場する(現在はカリフォルニア時間17日夜の11時半です)。予想株価は$38.調達資金は1兆2,800億円、時価総額はなんと8兆3,000億円のIT業界ではGOOGLEを抜いて過去最大、全米でも3番目に大きな上場になる。そんなわけでCNNをはじめABC,NBCといったこちらのTVではその話題で持ちきりだ。CEOのザッカーバークは齢28歳!スーパー億万長者にはなるが、いつも同じような無記名のTシャツとジーンズ姿で、ふらっと近所のラーメン屋でラーメンをすすっているライフスタイルは変わらないだろう(というか変わってほしくないな)。確かにFBはソーシャルネットワークという未だ広告収入以外に明確なマネタイジングのモデルがない(少ない)だけに将来的な予測や成長に賛否両論がある。数日前にもGMがFB向けの広告を中止する発表をしたり、いろいろな見方があるのだが、この辺りは専門家に任せておきたいと思う。ただ単純に考えて現時点ですでに世界中に9億人ものユーザーがいるという事実は何物にも代えがたい(いろいろとプライバシーの観点でも物議を醸しだしてはいるが…)。これだけのマーケットを持っているということは事実であり、言い方を変えれば「やろうと思えば何でもできる!」というのが正直なところではいだろうか。。
さて、自分はここ(シリコンバレー)に長年住みながらIT業界には精通していないので(笑)、FBの今後に関しては言及しないが、同社の上場を少し自分の分野(視点)から考えてみた。
まず1兆円もの資金を調達するわけで、それをどこに投入していくか?当然新しいビジネスモデル、サービスの開発、既存のシステムの強化に中心はあると思うが、この大規模なシステムソフトウェアを確実に機能させるためのハードウェアの構築と維持も当然のことながら非常に重要なポイントになってくるであろう。GOOGLEの検索で世界のどこからでも検索をすれば数秒で結果が出てくるあのポータルの裏には、それを可能にするための巨大なデータセンターが動いていることは言うまでもない。そのためにGOOGLEでは、データセンタ向けのコンピューター、ROUTERそして使用するCHIPまでも自社で開発している。当然FBもその部分をお粗末にするわけにはいかないので、ハードウェアの強化は不可欠になる。もちろん自社開発か委託かは別にしても、そこには莫大なハードウェアの需要はあるわけだ。特に最近ではトラフィックが増大したデータセンターではその冷却が非常に重要な課題になっている(そのためにFBは同社のデータセンターを寒冷地のグリーンランドに建設)。またそのデータセンターを稼働させるための供給電源もAPPLEのように環境配慮から大部分をソーラーシステムで補うなどの需要も出てくるだろう。また地震等の天災にも対応できる仕様が必要になるかもしれない。これらハードウェアーの需要に対し何か日本の中小企業がもつ技術力を生かすことができないものか?今まで大企業の下請けとして培われてきたすぐれた技術をせっかくだからこのような元気(と金)のある企業のもとでぜひ活かせないか?と願う次第だ。併せて当然FBに特化したKINDLEやI-PADのようなタブレット端末、もしくは新しいスマートPHONE分野に参入してこないとも限らない(なんせ9億人のユーザーですから)。このあたりも可能性として注視していけば面白いのではないかと思う。自分の役割としてせっかくの機会なので、ぜひ、このあたりでも何か役に立つ情報を供給できるように今から少しずつリサーチを続けていきたいと思う。

余談になるがGOOGLEが上場を果たした時、シリコンバレーの自動車(高級車?)、不動産の売り上げが20%増加したそうだ。そのためにこの地では物価まで上がってしまったと記憶しているが今回の上場でもそんなことになると自分的には物価高という被害をこうむる可能性のほうが高そうなのが、実はちょっとばかり寂しい…。

100年以上前の日本人起業家の話

2009年に自分のBLOGに書いた記事ですが、最近、偶然にも友人が話に出てくる移民の子孫の方と出会った事と前回の記事とも関係があったので、これも何かの縁と思い再度UPします。
自分たちの大先輩は100年以上前からグローバルな志と起業精神を持っていました!
素晴らしい!このスピリットは継承していかないと!!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

自分のもっとも好きな趣味の一つである狩漁系ダイビング(潜って魚貝を獲ってます)のなかでもカリフォルニアを代表する獲物であるアワビについて、その背景を調べていたら、そのアワビ漁のルーツにに日系移民の起業家が非常に深くかかわっていることがわかったのでちょっとご紹介。

1994年まではカリフォルニアのアワビ漁は商用目的で大々的に行われてたが乱獲から絶滅の危機に陥ったために禁漁になる。このアワビ漁ルーツ、実は日本の南房総、白浜の海産物商の兄弟によっ1890年代今から100年以上前に始められたものだった。1890年の初頭に日本から移民した人が、カリフォルニアはモントレーの海岸に無数に生息するアワビを発見!これは絶対に事業になると確信し、当時日本で海産物商を営む小谷兄弟を招請しカリフォルニアのアワビ漁がスタート。当時アワビはラッコの餌か中国人が食用で少し取るばかりで、焼けば長靴のゴム底のように硬くなってしまい誰も見向きをしなかったしろものだったそうだ。おまけに北カリフォルニアの水の冷たさもあり当時は誰も手を出さなかったために海底はアワビのジュータン状態だったらしい。小谷兄弟はモントレーで本格的にアワビ漁を展開。当時アメリカには存在していなかった潜水器具を使った漁を始めて行ったのも彼らである。そのための人材はすべて日本から採用した。当初は干しアワビを生産し中国や日本に出荷していたが(1915年に禁止される)1900年代初頭には食用に適した加工法(やわらかく食べる)を開発し缶詰として発売し大成功を収める。ところがカリフォルニア州政府はアワビに大きさの制限や販売エリアの規制などをかけ始め、また移民に対する土地没収や商業規制なども強化し始め、隆盛を極め最盛期にはアワビのカンズメ工場を4つも経営していたにもかかわらず1931年にはアワビの工場は全て閉鎖、そして第2次世界大戦での排日命令により、日本人が立ち上げたカリフォルニアのアワビ漁の実態そのものが歴史からすっかり葬り去れてしまった。 アワビ漁自身はその後もヨーロッパ移民やメキシコ移民、そしてもちろんアメリカ人の手によって継続されたが最終的には乱獲がたたり絶滅の危機に陥ったために1994年にカリフォルニア全域で全面禁漁になった。 ちなみに1994年以降はサンフランシスコから北、オレゴンボーダーまでの間でリクリエーショナル目的での漁は可能。ただし年間24個一日3個までという数量と大きさもインチ以上という厳しいルールがあります。

さて、戦後60年以上が過ぎ、それまで少しずつアメリカ人の歴史研究家により調査されてきたこのアワビ漁の歴史が、ちょうど100年の歳月を経てまさしくアワビが全面禁漁になった1994年に小谷兄弟のカリフォルニアモントレーエリアでの産業発展の功績をたたえる記念式典で再度脚光を浴び(今では自然保護区となっている工場跡地はKODANI VILLAGEと命名されている)、その後多くの研究家や日本のNPO法人によって文章にまとまられるまでに至った。

このような背景があることを知って、自分もこちらでアワビHUNITNGをしている日本人として、そんなDNAが体の中にはあるのかな?などと思ってしまったのだが、それより今から100年以上も前にアメリカでリソースとビジネスの可能性を見出し、会社を立ち上げ、日本からの潜水士(エンジニア)を招請し、現地の人材を育成、新しい製品を開発し、インフラも商習慣もまったく異なるアメリカという地で、見事に起業して大成した大先輩達がいたことを誇りに思いたいと思う。残念ながら第2次世界大戦という大きな節目のために葬り去れてしまった彼らの功績は、まさしく今の起業家魂に通じるものがあると思うし、このようなスピリットはこの先もずっと大切にしていく必要があると思った。
ちなみに本内容のほとんどは、上写真の日本のNPO南外房文化財.戦跡保存活用フォーラムがこのあたりの交流と歴史的な流れをまとめ2005年に出版した上記の「太平洋にかける橋」、そしてAMAZONで入手可能だが、ほとんど絶版状態のCALIFORNIA ABALONE INDUSTRYという本を参照させていただきました。

まず飛び出す志を持とう!

今回は1週間の日本出張。短い期間だったがいろいろな人に会い、たくさんの話を聞くことができた。どことなく重い雰囲気が否めない状況の日本。特に電機メーカーにおいてはP社、SH社、SO社等、TV大手メーカーの壊滅的な状況を見るにつけ、その従業員はもとより、数多くの協力工場がこの先どのような苦境に立たされてしまうのかを考えると非常に心苦しい思いがした。もう親元には頼らず自分で何とかしていかなければならない!という意識を確実に持つか持たないかが、この先の大きな分かれ道になるかと思うし、日本の国内需要ではなく、これからはさらに海外にあたらなチャンスを求め、グローバルに展開することが必要不可欠になってくる気がするのだが、、実際に数社の会社のオーナーたちと話をする中で感じたことは、「気持ちはあるが、どのように営業活動をしたらよいかわからない」「海外に乗り出すといって貿易も為替も何の知識もない」等々、いろいろな要因もあり、中々大きく行動をとることができないという現実だ。幸い日本では中小企業庁や中小機構、JETROなどの団体がこれらのバックアップにいろいろと手を貸してくれるし、また海外にあるNPO(たとえばシリコンバレーではSVJENなど)等にも気軽に相談することが可能なので、このような機関を有効利用し、少しでも不安要因を払拭することをまずお勧めしたい。
そして、さらに強く感じたことは、このような状況の中において各社が本気でグローバル化をしたいという志をもっているか?ということだ。上記のようなマイナス要因があって、この先の活動を真剣に考える必要性があるのにグローバル化を躊躇してしまうということに加えて、彼ら自身の志がどうあるかということは非常に重要だと思う。実際に素晴らしい製品や技術を持っているにも関わらず、国内需要の低迷で状況が悪化しても、それを独自に展開していこうという気持ちに乏しい会社を実はたくさん知っている。なんとなくさめているのだ(現在、政府が行っている手厚い補助の数々が志をなえさせてしまっている要因にもなっているような気がしてならないのだが)。本当にもったいない話だ。特に大手安定神話が音を立てて崩壊してしまった今、少しでも大きな志を持って海の向こうに飛び出さないと、この閉塞感(いやな言葉ですな)を打ち破ることは難しい感じがする。A社の精密加工技術は非常に卓越したものがあり、それをTABLET PCのシャーシに利用することができれば、少なくともまわしこみの配線を何本か削減することができる。とかB社のもつ放熱冷却装置は非常に効率よく低コストで、年々巨大化する大規模データセンターに必要とされる交換機の冷却装置として期待できる。等々少し話を聞いただけでもいろいろな可能性がある技術や製品があるのだ。もちろん彼ら自身で単身海外に乗り込み、売り込んでいくとなるとそれなりの覚悟は必要になるだろう。特にシリコンバレーには世界中から開発需要に食い込もうとする強豪があつまってきている。その戦いが熾烈になることは必至だ。でもやりがいもあるはずだ。極端だが日本のJA〇社は、特化した技術で特殊なコネクターの開発に成功し、その部品だけでAPPLEと年間100億円を超える取引をしているという例もある。要は何度も繰り返すが、まず飛び出す志を持つことが必要不可欠ということだ。そして、日本の素晴らしい技術をもった会社に少しでも、こちらの状況や市場動向を伝え、一社でも”よし!ひとつやってやろう!”という気持ちにさせることが、自分の大きなミッションであると思っている。

 

INTELのセットトップボックス市場参入のNEWSで考えたこと

3月12日にWSJ(ウォールストリートジャーナル)に掲載されたインテルのセットトップボックス(以下STB)市場参入のNEWSは非常に興味深かった。以前このBLOGにも書いたTV市場で生き残れる可能性の話がこんなに早い段階で現実味を帯びてきたという事もさることながら、インテルの壮大な構想を垣間見ることができたからだ。インテルは以前からGOOGLEをはじめとしたインターネット系のTVメーカーにチップセットを供給しているのだが、今回は自ら、このコンスーマー市場への参入を決定した(まだ100%確定ではないらしい…)。 BtoBを主体としてチップセットでは長年王者として君臨してきたインテル(未だに半導体市場の20%を抑えている)が、今回STBへの参入によって同社がこの先、このシステムとを利用して、さらにホームネットワーク市場の根幹を牛耳ろうというわけだ。勿論APPLEをはじめ、この先多数の強豪の参入は必至だがチップセットでイニシアティブをとっている点が同社の最大の強みだろう。
半導体エキスパートの先輩からの報告で、今年のCESでINTELは自社のブースでスマートフォンとTVをワイヤレスでつないでアプリケーションを走らせるDEMOを披露していたという。勿論これは、将来的にスマートTVに参入してくるメーカーに彼らのチップセットを売り込むためのものとも思えるのだが当然自社製品として、その技術をSTBに集約すれば彼ら自身がホームネットワークプラットホームの中心を抑える事も可能になる。想像するに家の中に設置されたインテルのSTBは、スマートフォンをリモコンとしてのインターネットTV機能に加え、ブルートゥースでの映像配信が完成すればICチューナを複数搭載することにより、家の中にある数台のディスプレイへの通常のブロードキャスティングの個別映像配信も可能になり、加えて家中のいろいろな家電製品のコントロールを可能に…といった具合に、次々を多様性のある機能(この部分はCLOUDに集約)を実現することができるものになる。そうなると市場としては一家に1台の需要が考えられるのだ。ここまで先を見越した戦略が本当であれば、とにかく凄い。こう考えるとICメーカーであるインテルが昨年セキュリティソフト大手のMcAfeeを買収するという一見無縁に見えたNEWSも(勿論SSDの普及により最近ではUSBにも埋めこみ型のセキュリティソフトが必要になってきているが)、コンシューマー市場参入を視野に入れていたとすれば「なるほど」と納得できる。
最近のデジタル化とネットワーク化の急速な進歩に伴い、このテクノロジーを利用して今年のCESで大きな話題を呼んだNEST(学習機能を持った空調コントロールシステム)のように、既存の設備やインフラをよりスマートにして新しいネットワークにつなげ省エネ化を実現するという部分に新しい市場の可能性がたくさん生まれてきている。日本でもLED照明の普及に伴い、スマートフォンと連動して出勤した社員が会社の玄関を入る際の認証で自分の机上のシステムと頭上の照明をオン/オフできる省エネモジュールを開発したスタートアップもある。
考え方によってはこれらを統合するプラットフォームとして、このインテル製のSTBが家内の必需品となる可能性は十分にあるのだ。この先数年というわけにはいかないだろうが、10年先には間違いなく、ここに家庭医療や教育といった部分も統合されてくるだろう。この10年、20年先を見越しての壮大な事業構想をもち、それをきちんと実践するところがアメリカのIT系大企業の凄いところだ。残念ながら既得権に胡坐をかいて未だに受信メイルを秘書にプリントアウトさせているような役員が多数いるであろう今の日本の大企業からは、このような凄さというか迫力は全く感じられない…。
実は、この新しい市場はハードウェア面からみるとすでに確立された技術の応用が中心でマネタイズするのは少し難しいかもしれない。しかしながら、ハードウェア生産需要の増加に伴い、その需要によってインテルのような素晴らしい里親(前々回の記事参照)にうまくADOPTされれば日本の中小企業も既存の優れた技術を駆使できる可能性もあるし、また独自にこの新しいネットワークから生まれる省エネ市場への参入の可能性も今の日本の中小企業の技術力をもってすれば十分にあると思う。こんなところに大いに期待してみたいし、是非少しでも考えてみてもらえたらと思う。

 

 

食品製造業が熱い!

先週はサンディエゴに出張。途中LAにて知り合いでファクトリーオートメーションを手掛けている知り合いとランチを共にした。話の中で、1年ぐらい前から日系の食品製会社からのライン増設に伴うひきあいが増えているという。これにはどうも円高が大きく関係しているらしい。昨今ではIT産業で話題に上ることが多いアメリカの経済界だが、実は農業大国として未だに大豆、トウモロコシ、小麦等々の一大生産国だ。日本の大手食料品メーカーは、これらを原材料として日本(もしくはアジアの工場?)に輸入してそれを食品に加工していたのだが、円高のメリットをさらに生かすために原材料をアメリカで加工し製品としてアメリカ国内の販売や日本、アジアへの輸出に充てるスタイルを強化しているとのことだ。確かに加工費の高い日本での加工や原材料の出荷コストと時間もかかるアジアでの生産の価格的なメリット分が25%もの円高によって減少している状況を見ると、なるほど非常に納得がいく。実際にカップラーメンを製造する東洋水産や、日清食品はアメリカでも人件費が高いといわれているカリフォルニアのLA近郊に10ライン近い大工場を所有しカップラーメンを量産している。アメリカで販売されているこれらメーカーのカップヌードルは殆どがMAME IN USAだ。
また日本酒の製造メーカーである月桂冠や大関、宝酒造もカリフォルニア米を使用した酒造りを強化し、米国や南米への輸出を行っている。そのほか、KAGOMEや、MIZUKAN、KIKKOMAN,CALBEE等々、日本でも有名な各メーカーはその製造で非常に景気がいい。
さてさて、このような需要にはやはり高度な技術と信頼性のある日本のFACTORY AUTOMATIONが不可欠に思われるのだが、意外とこの分野での日系メーカーの進出は少ないようだ。そんな関係から知り合いは、かなり日本とも連携すべく奔走しているそうだが、なかなか供給が間に合っていない状況だという。その大きな理由はやはり食品関係ということで、その基準の違いや衛生上の規制におけるためらいがあるのだという。確かに日本の厚生省(いまもそうですか?)にあたるアメリカのFDAには訴訟大国のアメリカならではのかなり厳しい基準があるようだが、この基準、自分も実際にかつて飲食店の設備を手掛けていた関係で感じた事は思ったより複雑ではないということだ。逆に日本のほうが規制が厳しい(たとえばアメリカで一般に販売されているBBQグリルは日本には食品に触れるということで特殊は許可と承認がなければ個人輸入もできない。)ということを考えるとアメリカのほうが、考えようによっては最初の敷居を超えてしまえば案外簡単に行きそうな気がする(勿論きちんとした事前調査は必要になるかと思うが)。また食品製造ラインといってもその中には検査、洗浄、計量、梱包、充填といった数多くのプロセスがあり、これらを個別に考えてもがんじがらめの規制に縛られているということはないのではかと思う。自分自身の経験でもあるのだが、よく日本のメーカーに「御社の製品をアメリカで販売したい」と持ちかけた際、「いや、うちの製品はUL(電機製品規格)やOSHA(労働安全衛生)の規格に準じてないから」という話を返されることが多いが一般的にULは消費者向けの電気製品のの規格であり、工業製品や製造設備には適用されていないということがわかっていなかったりする。どうしても訴訟大国というイメージが強すぎるのかも知れない。いづれにしてもしゃんすは多分にありそうだ。我は!と思う会社はぜひそのあたりのリサーチからスタートしてみてはいかがなものか?かなり大きな需要があるのだ。もしかしたら、このビジネスだと円高は逆風だが、それにも勝る大商いができるかも知れない。

元気のある里親を探そう!

懇意にしているMさんのWALLで紹介頂いたダイヤモンドオンラインの特別寄稿「日本エレクトロ二クス総崩れの真因」の記事を読んだ。自分自身が何を隠そう日系のTV製造メーカーを相手に過去20年以上商売をしてきただけにこの記事の内容は非常によくわかるばかりでなく、本当にその通りだなと、妙に感心してしまった。実際にTVの激戦区であるアメリカ。今売れているというSAHRPの60”のAQUOSの価格はなんと$1,200@@!60インチのパネルの原価が日本円で8万円ぐらいすることを考えると、まったく利益が得られていないばかりか逆にお金をつけて売っているような状態だといえなくもない。勿論市場をいかに確保するかということが重要な要因であるかとは思うし、同社の場合には先行投資でつくられた日本の大液晶工場の生産を維持するためにも、このような販売活動が必要なのかもしれないが、そこで得られた市場に次に投入する製品があるのか?と言われても残念ながらTVの行く末を考える限り、思い浮かぶものは今のところない。同社は、この先も80”90”という大型TV で市場の巻き返しを図ると鼻息が荒いところもあるが、全体的な需要の落ち込みが明確なアメリカ市場ではたしてどれだけ販売数が延ばせるか??これもBIG QUESTIONだ。結局このような状況(勿論アメリカ市場だけの問題ではないのだが)を反映してか同社は2,200億円の予想赤字計上、SONYの2,800億円と続き、最後までPLASMAに固執し、それでも必死で頑張ってきたPANASONICに至っては8,000億円の赤字という前代未聞の状況になっている。当然来期はこれらのマイナスを克服すべく、各社必死で対応策を考えていかなければならないだろう。そして、その中には事業縮小やリストラなど、かなりシリアスな部分も多々含まれることは容易に想像できるし、さらに今までこれら大手の縁の下の力持ちとして頑張ってきた多くの協力工場、協力企業は、より厳しい岐路に立たされることは明白だ。中には力のある会社もたくさんあるであろうが、今まで親(会社)のために滅私奉公的に頑張ってきたこれら企業の多くが矛先を失い路頭に迷う可能性は十分にある。
さて、この記事をお書きになられた神戸大学の三品教授はその内容の中で「日本のエレクトロニクスメーカーは韓国のエレクトロニクスメーカーの担ぐ日本の材料、装置メーカーに負けたと言い換えてもよい」と書かれているが、自分はこれを読んで、これこそが、この先日本企業それも中小企業の生きる道だと考えている。以前から事あるごとに話しているのだが、封建的な日本の大企業とそれに付随する協力企業の構図がいまの日本の敗因だと思えてならない。大手の庇護下にあるがゆえにマーケティングや営業力をあまり必要としなかった多くの企業がもつ優れた技術や商品はまさに宝の山ではないか?SAMSUNGやLGのつくる液晶パネルの基幹部品の多くは、教授の書かれているように本当に日本メーカーのものである。液晶に代表されるような、日本発祥、もしくは日本が育んできた優れた技術はまだまだ世界で必要とされているのだ。力と志をもつ中小企業はさっさと日本の親元に見切りをつけてどんどん海外の元気のある企業に取り入ってそこで安定した生業を確保できている。韓国のこれらメーカーに限らずアメリカではAPPLEの製品に部品を供給している多くの日本メーカーがある。その中には小さな会社もたくさんあるのだ。そして部品ひとつで数十億の売り上げを確保するに至っている。このような素晴らしいリソースを今までの恩恵はあったにせよ先の見えない親元で収束させてしまうのは本当にもったいない。特にモーター、バッテリー、その他世界の企業がほしがっている技術や製品はまだまだたくさんあると思うのだ。
だいぶ前になるが、こちらでスタートアップ企業のサポートをしているSUN BRIDGEのKさんと「日本の中小企業はもうさっさと今の親には見切りをつけて里親探しに出るべきですよ!」という議論を交わしたことがあるが、まさに今、その時期に来ていると思う。そんな里親探しを、支援、サポートしてくれる人たちや団体もあるし、自分自身も志のある企業はしっかりと応援してあげたいと思っている(まったくの微力ですが…)。そして、1社でも多くの企業が今の状況に見切りをつけ真剣に元気のある里親探しをいち早く始めてくれることを願う次第だ。

 

 

アメリカの展示会を見て考えた事

今週カリフォルニアのアナハイム(ディズニーランドがあるLAの南の都市)で西海岸最大のエレクトロニクス/製造業関連の展示会MDMが開催されたので自分も足を延ばしてみた。この展示会は、メディカル関連の製造メーカーの展示が有名だが、併設してプラスチック、プリシジョン、AREOSPACE,ほかの製造にかかわるカテゴリーの展示など9つの分野の展示会が一斉に行われるという西海岸では最大規模を誇るものだ。 この展示会をみて、考えたことを2つほど紹介したい。

まずはアメリカの製造業はまだまだ健在だ!ということだ。
今回の会場はアナハイムコンベンションセンター。広さ約12,000坪の会場に所狭しとブースが並んでいる。その総数はなんと2,000社以上。勿論、アメリカにあるメーカばかりではなく世界中から関連企業がブースを出しているのだが、アメリカ系の製造メーカーも「まだこんなにたくさんあるんだ!」ということに驚かされる。勿論メーカーの中にはアメリカでの生産ではなく東南アジアに生産拠点を持ってこちらで販売しているメーカーもたくさんあるとは思うのだが、「こんなものをまだ作っているんだ@@!」みたいなもの、たとえば工業用のブラシや、単純なスプリングなどもたくさんあって、そのような見方(MADE IN USAかどうか)で、個々のブースをのぞいてみるのも非常に面白く、この人件費の高いアメリカで製造しても需要があるものには、どのようなカラクリ(マーケティング?)があるのかぜひじっくりと話を聞いてみたいと思った。

そして、もう一つ考えた事がある。今回はたまたま自社の持つ技術で、新たに医療系のナノチューブの市場に参入を計画している知り合いの会社の社長が来られていたので、少し感想を伺ってみたのだが、彼曰く「もうすでに同じような商品をこちらで製造販売している業者がこんなにたくさんあるとは思わなかった」との事。確かに日本という市場にこもっていれば、グローバルなマーケットという点では非常に限られた部分しか見ることができないのだろう。そして「自分たちが考えていることを既に実現している会社もあって、自分たちの視野が狭いことがわかったばかりでなく、かなり勉強になり刺激になった。」とも話していた。私も彼と同じ感想を、こちらの展示会に来ると思うことが多々ある。特に自分の分野である電子基板(PCB)の実装などは、APPLEに代表される大生産体制の確立でほとんどが東南アジア中心であるにもかかわらず、同じく西海岸で開催される同産業の一大展示会であるAPEXはいつも盛況だ。つまり、まずアメリカで地位を確立し知名度を残すことが、将来的に中国やインド、そしてこの先、これらの産業が確立されていくであろう新興国においては先ずステータスとして重要であるという感じを非常に強く受ける。加えてそのような意味合いから、アメリカでの展示会には世界中から同じような目的の企業やメーカーが集まるので、その市場の動向やトレンドを知る上でも重要な意味があるということだ。その証拠に韓国や台湾の製造機器メーカーもこぞって大きなブースを構え、すでに需要的には先細りになったこの地の展示会に出展しているのだ。これはアメリカ市場での販売拡大だけが目的ではあるまい(きっとそう思う)。
先の知り合いの会社の商品も仮に大手の医療機器メーカーの目に留まり、こちらでの供給が始まればそれがもしかすると一つのステータスとなり、将来的にますます需要が高まる莫大な人口を有する中国やインド、アフリカなどへの浸透は想像以上に容易に実現できるかもしれない。そんなポテンシャルも含め、アメリカの製造業は市場としてまだまだ魅力的だということを改めて強く考えたし、やはりアメリカの市場やマーケットの動きをしっかり把握し、自社製品の地位や実力がどんなものかを把握することが、将来のグローバル化には不可欠だと新たに感じた次第である。

アメリカ製造業復活の兆しを考えてみた。

アメリカにおける製造業が、にわかに復活の兆しだ。自分がアメリカに来た80年代の終わりは、まだ国内で販売されてるPCの大半がアメリカ製だったと記憶している。確かにサンマイクロシステムやAPPLEのPCは自分のオフィスの近くで生産されていた。それが90年代に入ると製品のコモデティ化に伴いどんどん東南アジアを中心とした地域に移管。90年代の半ばに入るとEMSによる生産体制が一般化し、そのEMS企業も2000年の頭ぐらいまではまだアメリカで気を吐いていたのだが、FOXCONNを中心とした巨大EMSメーカーにその市場をどんどん凌駕され2000年代の半ば以降ソレクトロン、フレクトロニクス、SCIといった大手はほとんど姿を消してしまい、その後のリーマンショックが致命傷となり、シリコンバレーからは完全に大手の製造メーカーはなくなってしまった。そして失業率も高止まりの状態が続いているのが現状だ。ちなみに全米の失業率は大体9%強なのだが、ここシリコンバレーは12%と異様に高い。これはこの地域の特殊性が大きく影響している。世界中から一攫千金を求めて集まる優れたエンジニアたちが限られたエリア、業種に集中しているために競争が激化しているからだ。
ところが去年の秋を過ぎるころから、その製造を取り巻く状況が少しずづ変わってきた。まずアメリカ市場向けの一大生産拠点であるメキシコに生産が戻ってきた。2~3年前までは価格的に中国に対抗できず、大手のメーカーが廃業や東南アジアに生産を移管し一時はかなり深刻な状況だったのだが、ここにきてPANASONICがマレーシアから生産を引き戻したり、メキシコの製造メーカーには、今まで中国をメインに生産されてきた電動工具や通信系のデバイスなどの部材や製品自身のアウトソーシングの見積依頼がだいぶ増えているという。
このような状況について、なぜ再び製造業がアメリカ(もしくは近接するでメキシコ)で復活しそうなのかその要因を考えてみた。まずアメリカ国内における失業率対策に政府が動き出したからではないかと思う。実際に高い失業率は国の景気を良くは見せない。APPLEが月に100万台のI-PHONEを製造販売し最高の利益を上げても、そのほとんどを中国で生産していたのでは、アメリカ国内の雇用にはまったくと言っていいほど寄与していないわけだ。オバマ政権はこのあたりを重視し、先般の演説ではアメリカ国内で製造を行うメーカーには税金優遇を適用し、国外で製造を行うメーカーは法人税を引き上げるといった措置を示唆している。つまり雇用対策としての製造業の復活が大きく貢献するわけだ。次に考えられるのは、これは私の個人的な推測なのだが、アメリカの国内需要の低下があげられるのではないかと思う。この根拠はTVだ。一昨年までとにかくアメリカ市場向けのTVは、とにかく安いことが大前提だった。そのために大量生産を実施しコストを極限まで抑えた韓国勢が市場を席巻し、日本勢はことごとく敗北してしまった(なんせSHARPの60”のAQUOSは、いまこちらで10万円ですから…)。当時は安く売ればいくらでも売れたのだ。ところが昨年の上期の段階では、市場を席巻しているSAMSUNGもLGも大量の在庫を抱えて赤字転落。つまりこれは、ほかのメーカの物が売れているのではなく需要が低下したことに他ならない。ということは今まで大量に生産することによって製造コストのみならず輸送コストなどを軽減できた中国生産の意味が薄れてきてしまったわけだ。限られた需要(生産数)であれば、大量購入による不良在庫のリスクがなくなり、短納期(現状中国からのOCEAN出荷はどんなに早くとも3週間以上かかる)と市場でのクレームのフィードバックも早くできるアメリカもしくはメキシコでの生産が非常にメリットがある。おまけに人件費もインフレが進む中国とメキシコでは大きな差がなくなってきているとも言われている。ここに(TVに限らず)製造業がアメリカにもどってくる要因があると思う。そして、最後に日系メーカーのアメリカへの製造移管に関して言えば円高の回避だ。アメリカで10万人以上の雇用を誇るTOYOTAは、先の震災や洪水による天災の影響を考慮し、また円高回避策として今後はアメリカを製造の一大拠点にすると、デトロイトのショウで副社長が発表している。確かに1円の差で何億円もの損益が生じる企業では、今回の円高対策としてはごもっともといえる策だ。おまけに円高であればドルベースの決算なら差益で今までより数十パーセントも安く進出が可能だ。TOYOTAに呼応するかのようにHONDAやMAZDA,そして日産もアメリカとメキシコに大規模な生産工場の進出を今年から来年にかけて予定している。円高回避の点では、ほかの製造業にもメリットはあるはずだ。
いづれにしても製造業のアメリカでの復活は、同国の景気対策だけでなく、日本の中小企業にとっては今まで新興国に流れるだけだった製造プロセスが、源流に近づくことによって、よりグローバルな展開ができる可能性もあり大歓迎である。この状況、今後も注視しながら、ことあるごとにレポートしてみたい。

ビッグサイトの展示会を見て思った事

今週は日本出張、毎年この時期に開催されるアジア最大のエレクトロニクス製造実装技術展「NEPCON JAPAN」視察がメインの目的だ。この展示会はこの業界に入って以来、過去27年近くにわたり毎年欠かさず訪れている。最近では、この展示会に併設されて今のトレンドである「カーエレクトロニクス技術展」「次世代証明技術展」なども同時開催され(まあ一説には単独の展示会では十分な集客ができないという背景もあるようだが…)、現在のトレンドの産業における日本の技術力の詳細を一括で見ることができるとい点では非常に効率がよい。
 電子回路基板(PCB)に部品を実装する、という電気製品にはまず不可欠な製造プロセスを担う製造機械、実はこの分野で日本は世界のトップシェアを誇っている。昨今は需要の減少から韓国勢や一部ヨーロッパ勢もシェアを伸ばしているようだが、技術レベルでは圧倒的に日本製だ。大手のPANASONICをはじめ中小では富士機械製造など、この分野のブランド品として世界で圧倒的な人気を誇るメーカーもある。またYAMAHAやTDKなども未だに根強い人気をもつ。特に最近では、微小パーツの実装、これはスマートPHONEなどに使用される0.6mmX0.3mm角の部品をも確実に実装する機械精度が不可欠になりこの部分ではやはり信頼性という意味で日本製品にまた軍配が上がるケースが多いようだ。面白いのはJUKIなど、ミシン製造メーカーの大手もこの分野で結構根強い人気を持っている。かつて工業用ミシンでは世界的なシェア(未だに頑張っている)をもっていた同社が、その技術力を生かしミシン針の代わりに部品を実装するノズルを装着したシステムで他業種にも参入しているわけだ。これら実装機器メーカは先に書いたように確かに需要自身の衰退により十分な利益を確保できないという状況にあるのは事実だし、リーマンショックのあたりには少なくとも大手数社がこの業界から姿をけしてしまったが、製品がより小さく高機能になり部品レベルの形態が変われば変わるほど、そういうところに強みを出せる日本勢がシェアを確保し続けるような力強さを今回は感じることができた。
 今回の展示会でもう一つ面白いと思ったのは県単位、また市町単位で地方の行政がバックアップしていると思われる多数の中小企業が出展していた事だ。勿論この電子機器製造に関する製品を扱うところが中心なのだが中には「これは面白い」という商材もたくさん見受けられて、これはこれで非常に興味深かった。話を聞いてみても、技術的にそれなりにしっかりしていて、これだったらアジアだけでなく源流アメリカのR&Dでも興味を持ってもらえるのでは?と思えるようなものもあった。今までもこのような中小企業が独自に小さなブースを借りて出展しているケースは見受けられたのだが、今年はその数が新規で100社以上にもなっているところに、いい方を変えれば現在の日本の状況が今まで展示会に出展する必要もないほど安定していた需要の低迷に直面し死活問題になっている感もうかがえる。ただこれで自分たちが持つ製品のレベルや需要を肌で感じ、さらなる飛躍のためのステップとなれば十分に有意義ではないか。そして運よく新しい顧客や海外での需要を見出すことができれば、素晴らしいことではないかと思う。特に私のような海外にいるものが、そんな小さな優れた技術や製品をうまく見つけてグローバルの舞台に引っ張ってあげることは、やはり可能性としては十分アリなのだなという思いを新たにした今回の展示会であった。

TV市場で生き残れる可能性

非常に抽象的なタイトルだが、先週開催されたCES(CONSUMER ELECTRONICS SHOW)の数々のレポートを読んで、こんなことを漠然と考えてみた。想像通りTVに関して言えば前回に書いたGOOGLE TVのパートナーたちがその新しい機能のお披露目に割と力を入れていたようだ。スタイルとしてはインターネットTVから脱皮してスマートTVという位置づけになったことは明白だろう。
こうなるとTVの本体は完全にプラットホーム化するので、極端な話、何処で製造されようがこれは安いところで製造されるに越したことはないという自然な流れになる。またスマートTV というスタイルが一般的になり、この先数年は、勿論インターネットとの混在路線が続くと思うのだが、近未来ではブロードキャスティングの必要がなくなればチューナーも不要になるためにPCと大差がないようなSTB(セットトップボックス)スタイルが主流になることは容易に想像できる。勿論そのSTBの中にはCPUをはじめ、通信系やOSにかかわる数多くの新しい機能をつかさどるデバイス類は必要になるので、この辺りの需要が増大することは間違いがない。残念ながらMARVELLやNIIVIDA、BROADCOMと言ったアメリカ勢が強烈だが、日本勢には、まずここで何とか頑張ってほしい(村田、TDKみたいにパーツレベルでも)! 加えて注目したいのがディスプレイだ。今回はSAMSUNGとLGの55”の有機ELのパネルが非常に話題になった(有機ELのTVをいち早く世に出したSONYは、この分野から撤退との話…残念だ)が、これがこの先、有機ELのディスプレイとして本体とは別に販売される可能性は十分にある。また各社が力を入れている高機能3Dのディスプレイや4K2Kといわれる高解像度DISPLAY、CRYSTAL LED DISPLAYなど今回のCESでもいくつかの新しいスタイルのものが発表されたが、これらが将来的には顧客の要望やニーズに合わせて本体とは別に(単純に言ってしまえばパソコンのように)選べるようになっていく感じがする。加えてこの先、大型化が進む液晶パネル(SHARPは昨年これでアメリカ市場で巻き返した!)についても今後の需要はだいぶあると思う。ただコストが高いという難点がある。この分野、実は投影型のスクリーンもかなり面白い分野ではないかと思う。アメリカでは実際に三菱が頑なにプロジェクションタイプTV(80”90”)の製造販売を堅持し、数は少ないものの確実に業績をあげている(アメリカの中西部では寒い冬場は殆ど娯楽がないので、大スクリーンで映画やFOOTBALLを見るのが最高の娯楽です)。今後本体がプラットホーム化すれば液晶のクオリティに負けない100インチ以上の大スクリーンが個別に販売されていく可能性も十分にある。勿論STB本体にプロジェクション機能が付く必要があるが、これもそのうち今回発表されたSONYのプロジェクション機能付きのハンディカムなどを見るにつけSTBに標準装備されていくと思われるし、もしくは他の方法が出てくるかもしれない。この分野、日本のT社やD社がかなり技術力もあり市場的には強烈な影響力がある。このスクリーンに限らず、上記の液晶パネルでいえば未だにその内部に必要になる5枚以上のフィルム類は日本メーカーが独占的に製造しているものも多い。当然これらにかかわる数多くの協力工場にも十分にチャンスがあると思う。
だらだらと取り留めもなく書いてしまったが日本が先行し一時は世界を席巻したTVがデジタル化とともに大きくその市場をアジア勢に奪われてしまった現在、そして近未来にはTV自身のプラットホーム化によってそのスタイルをSTBに変えPCとの差が大きくなくなってしまえば、そこで日本勢がイニシアティブをとることは残念ながら非常に難しいかもしれないが、パーツレベル、そしてディスプレイであれば、まだまだ活路を見出すことができると考えたい。大手に限らず力のある中小企業を含めた日本勢がTV市場でグローバルに生き残っていく可能性は、ここに十分あるような気がする。