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MAKER FAIREを見学して思った事

5月の18,19日の週末に開催されたMAKER FAIREを見学してきた。これはアメリカのものづくり系、とにかく個人でも企業でもグループでも、ものを作っている人たちの集大成といった感じの展示会で、とにかくものすごい人気。私は2日目の日曜日に行ったのだが、10時の開演時には、既に周辺の高速道路が渋滞するほどの混雑。その人気の高さに見学前からちょっと驚いた。TVゲームがまさに完全に主流になっている今のご時世に、まだこんなにものづくり、創作といったものに人気があるのかと。言い換えれば子供のころ読んだ科学雑誌や工作系雑誌などに夢中になっていた子供がそのまま大人になっても未だに夢中になっている感じもあるし、当然その世代に育った親たちの意図(子供にもTVゲームではないものに興味を持たせたいという)もあってのことだと思うのだが、その層の厚さにはかなり圧倒されるものがあった。会場は屋外と屋内とに分かれており、大きなものや大道芸的なもの(スミマセン、的確な表現が見つからなかったんだけど、竹馬のお化けみたいなものとか恐竜の自動車とか墨でできたピアノとか下記の写真のようなわけのわからないオブジェみたいなもの)は外に展示されたり実際に動き回っていたりしており、室内では主に展示っぽい展示(普通の機械とか、玩具とか、部品とか、其の他諸々)が行われていた。そして会場全体に、特にギークとかナードと呼ばれる連中、実際に映画バックトゥーザフューチャーに出てくるドクと同じ様相や雰囲気を持ったイイ歳のおっさん達やお年寄り(失礼!)が驚くほど目についた。

<車全体に音楽で動く魚やエビをつけて車のバッテリーで動かしていた怪しい初老のおじさん…>

展示されているものは本当に昔ながらの木工細工のようなものから紙を使った模型、素朴な玩具などに加え、ハイテクを駆使したスマホで動くおもちゃや機械、はたまたセキュリティシステム、省エネ系製品(コンロの過熱を利用した発電機などがあった)など多岐にわたっていて、出展者も個人の発明家から、スタートアップ、趣味の開発グループ、AUTODESKや、INTEL,NVIDIAといった大手までと幅広く、まとまりがないと言ってしまえばそれまでだが、とにかく奇想天外な製品が多く、発想の豊かさと、ものづくりに対する執着、情熱みたいなものが感じられて、かなりおもしろかった。
そして、これがアメリカという国の製造業の根底にあり80年代から急速に製造を海外に移管し日本より早い段階で空洞化が問題になり、もう製造を忘れてしまったかと思われていたこの国には、実は絶対に無くならない製造魂みたいなものが残っているし、国外から移民してきた世界中の人々も、そのアメリカが持つMAKERS(ものづくり)気質みたいなものをしっかりと刷り込まれて育ってきているので、製造という分野においては非常に関心が高いのではないかと思われた。 加えて、そのようなMAKER達をバックアップする製品もたくさん展示されていた。3Dプリンターに至っては$1800で8インチサイズのものまで製作できるのが売られていたし、$2000台でルーターやミリングマシーンも売られていた。つまり個人やグループが自宅やガレージに、これらの設備を並べて簡単にものづくりができる。おまけにAUTODESKをはじめとしたソフトウェアメーカーもほとんど無償でこれらの機械を動かすデザインツールなどを供給している。そういったインフラも既に存在するのだ。このあたりの環境の充実度は凄い!これだったら本当に興味と情熱さえあれば、ほしいと思ったものは何でも作れる!という気になってしまう。日本には、こういう環境は既に存在するのだろうか??

考えてみれば自動車の量産を最初にスタートしたのはアメリカだし、ファクトリーオートメーションを確立したのもアメリカ、月に向けて最初にロケットを打ち上げたのもアメリカ、既に40年代にはほとんどの家電製品を開発/販売し半導体はもとよりPCだって全てアメリカから生まれ最近ではスペースシャトルまで飛ばしているのだ。製造業に関しては表現が悪いが「腐ってもアメリカ」「不沈のアメリカ」というゆるぎない地位を持っていると思えてならないし、このMAKER FAIREの盛り上がりを見て、さらにそれを確信した。
さて、これらアメリカの製造業の裏には、未だに多くの日本企業の素材や部品、製品が使われていることも、これまた事実であり、特に最近のアメリカの航空宇宙開発やプリンテッドサーキットのような次世代テクノロジーの裏には多くの日本メーカーが活躍している。 少なくともまだまだ日本の製造業がうまくコラボしながらイニシアティブをとることも十分可能なのだ。こういった部分で今回のMAKER FAIREで見たような個人がつくる奇想天外な製品の中から、もしかしたら物凄いヒット商品が生まれる可能性もあるかもしれない。そんなところに大手ではなく日本の中小、町工場の技術や少量多品種生産、そして小回りの利く対応といった価値がうまく結びついて、大手に負けないような製品がガツンと生まれてくるようなスキームを何とか構築できればと思うし、何とかそれを実現してみたい!MAKER FAIREを見てそんな事を強く思いました。

「ものづくり」から「価値づくり」へ!

前回から、まただいぶ時間が空いてしまったが、今回も前回と関連し「ものづくり」について…。
少しまえに、シリコンバレーで長年マーケティングを生業とし活躍されてきた方から製品にはマーケットイン、つまり需要(価値)のあるものを作ることが肝要、つまり、もうこれからは売れない(市場のない)「ものづくり」を標榜するのではなく、そこに必要(市場のある)な「価値」を考えるべきだ!いうご意見を伺い、ちょうど前回のブログで、このあたりを書いていたので、まさに解を得た気持ちで激しく共感すると共に、自分自身も、価値を見出し作り上げていく事は日本の中小製造業が、これからの世の中においてグローバルに展開していくために不可欠だなあという思いを新たにした。 それは前回書いたように今日の日本の製造業を語る上で枕詞のように使われてはいるが、独りよがりで需要やアドバンテージの無い「ものづくり」ではなく、それぞれが持つ独自の技術(もちろんこれがあれば一番!)やそれ以外の価値をまず明確にし、それを市場に応じて柔軟性をもって作り上げ、前面に押し出すビジネス展開を真剣に考えてみる必要があるという事だ。そして私自身は、非常にシンプルに「ものづくり」と「マーケティング&リサーチ」の融合が「価値づくり」になるのではないかと解釈した。
では、具体的に「価値づくり」、いったいどのように考えていけばいいのか? そのためにはまず第一に自分たちがもっている今の価値は何かを把握する必要がある。 今、皆さんは、どうしてお客さんから注文をもらえているのか?自社の持つ素晴しい技術や品質の為なのか?納期が非常に早いからなのか?値段が非常に安いからなのか?もしくは、マメなフォローアップができているからなのか?それとも実は先代からの付き合いでなのか等々、さまざまな要因があると思うが、これらをしっかりと分析することで、自分たちのどこに価値があるかを先ず明確に見出してほしい。
次にその価値が現在のニーズに合致しているかを検証する。たとえば大きな需要がある市場において果たして自分たちの現状の価値だけで食い込んでいけるかどうか?そこには、やはり現地の需要を把握することが不可欠になる。
たとえば特殊な加工技術で難易度の高い製品を製造できる会社があり、その価値を武器に、さらにこのような商品の需要が見込まれる新規市場(国)に参入しようとした場合、既にそこには同様の製品を作れる会社が存在していたとすれば、その会社の持つ価値はあまり意味をなさない。
そのような場合には、その市場の需要をしっかりとリサーチして把握したうえで自分たちの価値を生かしながら、そこに付加的な価値を補充(たとえばその加工技術を生かした水平展開や現地の会社より低価格で提供ができる等)するなどして、より高い価値を作り上げ臨機応変に展開する必要がある。そのような中で築き上げていくのが「価値づくり」だと思う。
一例をあげてみよう。京都にアルミ加工の試作品製造では間違いなく最高峰のレベルで業界では有名な山本精工という会社がある。同社は将来的に市場を見込めるアメリカへの参入をめざし、現地のリサーチとマーケティングを展開。その結果、自社の加工技術を価値とできる可能性よりも納期やコストの面での重要性と需要を見出し、自社の戦略を変更し、高度の加工技術に加え自社の工程の見直しを図って従来の納期を大幅に短縮、それに応じて工数を減らすことによるコストの軽減も実現し、この価値を従来の価値に加えて前面に押し出したPRでアメリカの展示会に出展。早々に数社からの受注と現地企業とのパートナーシップ提携というスタートを切ることに成功している。素晴らしいと思う。

確かに既存の「ものづくり」は素晴らしい言葉だと思うし、製造という面では非常に優れた技術、製品もたくさんあることは事実だ。ただ前回の内容通り、その言葉が持つ認識からでは現状は何も生まれてこない。この認識を再考し、加えて日本の商制度上、中小の製造企業においては余り必要性がなかったマーケティングを再考し、そこに力を入れることで自分たちの価値と融合させる「価値づくり」によって、少しでも新たにグローバル展開に燃える企業が増えてくれたら嬉しい限りである。

ものつくり企業はメーカーズになるべきだ!

昨年の秋以降ものすごいメーカーズブームになっている。自分も遅ればせながらようやくメーカーズ日本語版を入手し読了した。すでにご存じだとは思うが、単純に言えばメーカーズとは3Dプリンターやアルデュイーノといった開発ツールを駆使し、またネットやソーシャルを利用しての情報交換や資金調達、マーケティングなどを行い、今まで型の製作などで量産でしか対応できなかった製品の開発と製造が簡単に行えるようになり、加えて商品の販売も費用をかけず実行できる事によって個人や小規模のチームで商品の製造、販売が可能なるという流れに基づいた製造者(もしくはチーム)の総称(と解釈しました)。彼らが今、ものすごい勢いで増えているのだ。確かにある意味、これは今まで長きにわたり大手偏重、そして世間的に言えばITという流れにおいてはビジネスの主流が、どちらかといえばソフトに推移していた状況から一挙に流れがハードへと動き出す可能性を秘めている。人によっては「新たな産業革命になる可能性がある」とも言われている。この本の冒頭部分に「誰もが子供のころ、積み木やブロックなどを組み上げて物を作っていた本能が再現できる…」ようなくだりがあったが誰でもメーカーズになれる!そういうことを示唆しているのであろう。勿論生産されたものが、そのまま売れるものになる保証は一切ない。確かに個人であればふんだんに時間をかけ理想を込めた製品が出来上がるだろう。ただ、それが売れるかどうかは分からない。「金持ち父さん貧乏父さん」のロバート清崎さん風にいえば「マクドナルドよりおいしいハンバーガーを作れる人はたくさんいるがそれがマクドナルドを超える商売になることはない」ということだ。つまりそこにはしっかりしたマーケティングとセールスが不可欠になる。しかしながら明確に言えることは、この流れは日本の中小製造メーカーにとっては非常に意味のあるものだと思う。今までずっと「ものつくり」を標榜してきた彼らにとってはまさに自分たちの持つ真価を試す機会でもあるからだ。日本の中小企業の皆さんと話していてよく思うのは「自分たちはものつくりを通じて世界に羽ばたく」とか「世界一のものつくり集団」とか、「ものつくり」が技術立国日本の枕詞のように使われることが多いのだが、果たしてそれを本当に世界をみた上で言っているのだろうか?ということだ。シリコンバレーには5,000社(3年前です)近い町工場があるが彼らの技術力が世界のグローバルスタンダード製品の試作を支えているということを知った上で、それを公言しているかといえば甚だ疑問だ。そのくらい世界の技術レベルは高いのだ。何が言いたいかというと、自分たちが持つ加工技術や匠の技は既に誰でもできてしまう可能性があるものだという認識を持ってもらいたいという事だ。勿論、今まで下請けという形態ゆえに公には出てこなかった埋もれた沢山の素晴らしい技術があることも事実だ。であれば既に製造設備があり、それなりのインフラも整っている皆さんであれば、この埋もれていた技術によって今までにない画期的な部材、とくに省エネやコストダウンに貢献するようなものを製作することができればそれを是非公表(PR)してもらいたいし、自社のもつ製造技術で、出来ればオリジナルの商品などもぜひ開発してもらいたい。それができれば少なくともSNS、SMMなど「メーカーズ」に記載されている方法でマーケティングやセールスも思った以上に簡単にできると思うのだ。あえて言えば、それはアイデア主体の本当に簡単なものでOKだと思う。
例を挙げれば、今一緒にプロジェクトを推進している八王子の機械加工のナラハラオートテクニカルとPCB製作をしている美山技研がコレボレーションしてPCBの廃材を利用してI-PHONE用のケースを作った。

面白いではないか!特に奇てらったものではなく身近にある材料を加工し製品として付加価値をつけて完成させる。これもメーカーズの真骨頂だと思う。別に3Dプリンターやオープンソースの開発ツールを使わなくても、彼らは立派なメーカーズだ。勿論売れるかとどうかはわからない。でも少なくとも、製品が完成すれば金のかからない方法で、この商品を世界中にPRする事はできるのだ。
このような発想で是非、オリジナルの商品の開発に取り組んでもらいたい。そしてものつくり企業という言い換えれば少しロートルな感じのするイメージを一新して、新しい発想のメーカーズとして(というかそういう意識を持って)、是非、世界に対しての主張をしてもらいたい。願わくは、このメーカーズブームが一過性の流行で終わることなく継続して既に世界(アメリカ)にリードはされているが、これから一挙に盛り上がって日本発信の第3の産業革命というムーブメントになってくれればと願う次第である。

2013年の年頭に考えた事

遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

2年前のNHKの大河ドラマ「竜馬伝」。その中で若き日の岩崎弥太郎が、会話の内容の詳細は記憶が非常にあいまいなのだが投獄された牢屋の中で、そこの主ような老人から「あきないというのはなあ、ほしいと思っているひとのところへ、ほしいものを探して持っていくことや。ただそれだけや…」という話を聞き、いたく感動して商売に目覚める…。というくだりがあった。この話を聞いて今まで売れもしない(というか誰もほしくない)鳥籠売りを辞め、猛勉強を始めてビジネスに開花して行く様子は香川照之の好演もあって印象的だった。
先週ラスベガスで開催されたコンスーマーエレクトロニクスショウ。昨年以来瀕死の重傷状態の日本のTVメーカーの目玉は残念ながらほぼ全社が4Kテレビだった…。そうでなくとも毎年一社たりとも個性を打ち出すことなく右へならえのマーケティングには残念ながらがっかりせざるを得ないのだが、今回もまったく同じ状況で本当に呆れてしまった。おまけに日本独自の技術ならともかく3Dテレビの時と同様、SAMSUNGもLGも4Kテレビを発表。これでは3Dの時と同じように最初から価格競争に巻き込まれて、またまた同じ轍を踏むことは明白だ…。そして今の世の中、どれだけの人が小じわまでしっかり見えてしまう現行のテレビの画質以上の高品質な部分に付加価値を感じ、2割も3割も高い金を払うのだろうか??誰が考えても明白なこの部分に気づかないのはとてもおかしいと思うのだが…。というか4K以外に新たな新技術の開発が考えられなかったというのが本当のところかもしれない。自分的には「ほしいと思われてないものをつくって売ろうとしている」としか思えない。これでは弥太郎が売っていた鳥籠と変わりがない。それにしても、どうして日本の大手メーカーというのは個性がないのだろうか?今回(実は昨年も)はせめて一社ぐらい「映像技術は現行のままで十分という判断のもとに、今年は省エネに力を入れました。今回発表の新型TVは、今までのTVより消費電力を50%削減に成功!SAMSUNGやLGより3割高いですが、3年試使用すれば、その差額も解消でき、さらにそれ以降は十分メリットのあるTVです!」というTVを発表してもらいたかったというのが本音だ。
携帯電話の時もそうだった。以前にも書いた記憶があるが90年代の初頭、自動車電話と携帯電話が急速に普及しはじめ自動車社会のアメリカにおいては非常に期待が持てるということで、日本の大手電話メーカーはほとんどがアメリカ(NECはメキシコ)に工場を設立し生産を始めていた。それが96年(だったと思う)にアメリカが移動体通信の方式をCDMAに決定した途端、DOCOMO方式を期待していた日本勢は当時の日本の携帯市場隆盛もあってほぼ全社が潮が引くように撤退…。なぜ一社ぐらいCDMA方式を採用し、こちらの市場で頑張ってみようと思わなかったのか…。余談でいえばその時、国内市場がほとんどなかったSAMSUNGとLGは、さっそく同方式の携帯を開発し、アメリカ市場を牛耳ったばかりか、同方式を採用したヨーロッパにおいても市場を席巻している。そしてこれが彼らの知名度を上げ、今日のスマートフォン市場においても好業績を生む結果になっているのだ。
日本勢はこのような経験を何度となくしていながら、今回もまたTV産業という本当に大きな柱を同じような過ちで失おうとしている。自分は日本人、それもいままで日本のTV産業で生計を立ててきただけに何とか踏ん張ってもらいたかったのだが、それも残念ながらあきらめざるを得ないのかな、という悲しい決断を強いられた感じが否めない…。
さてそんな状況だが、製造業の状況は、ひとつ前のブログにも書いたように今大きく変わろうとしている。これからの製造業、コンスーマー製品に関しては明らかに大手偏重ではなく個が注目を浴びるであろう胎動が聞こえてきているのは自分としては本当に興奮を隠しえない。勿論、このような製品がヒットするというのは1000三つの確立かもしれないが、少なくともそうい市場にチャレンジしてくる新興勢力がどんどん出てきてくれることが、いづれ必ず大きな力になるように思える。特に期待したいのは今まで大手の傘下で生きてきた多くの中小企業の方々だ。彼らが今まで親元のために培ってきた技術やノウハウにはかなりすごいものがたくさんあると思う。内容的には前回と同じことを言っているが、できればそういうノウハウや技術を自分たち独自の新しい商品開発に生かすことができないか??今まで見てきた多くの中小企業、特に受託製造を行ってきたところは残念ながらセールス、マーケティングといった部分が非常に脆弱に思える。それは当然で親元から黙っていても仕事がもらえた環境があったからだが、そんな親がナサケナイ状況になってしまった今こそ、そのような関係を切り捨てて原点に返り、インターネット、ソーシャルメディアで情報を収集し、仕事の合間で勿論OKなので、3Dプリンター、安価な開発ツールやインフラを利用して独自の商品、それも「ほしいと思われているもの」を開発してみてはいかがだろうか?ヒントはあちこちに転がっていると思うし、志のある会社には自分もできるだけの応援をしたいと考えている。
2013年はそんな、気概と志のある日本の中小企業の皆さんと本気で語り合い、ひとつでも多くの会社が実績を残す手伝いを真剣にしていくことを自分の抱負にしたいと思います。

NOKIAの話を聞いて来年に向けて考えた事

2012年も、あとわずかで終わろうとしている。クリスマスも終わった今日、品物を納品にNOKIAのシリコンバレーオフィスに足を延ばした。通常アメリカではクリスマスからNEW YEARの1月1日にかけて、ほとんどの企業がSHUT DOWN、もしくは開店休業になるのだが、クリスマス明けというのに、オフィスはオープンしておりエンジニアたちは仕事をしていた。28日まで勤務だという。実は数日前、ここに勤める古くからの知り合いに数年ぶりに再会して色々と話を聞いた。元SONYの生産技術エンジニアだった彼は、確か2000年の初めにこちらのスタートアップに勤務、その後の変遷を経て現在に至っている。アメリカでは、SMART PHONEの普及にともないAPPLE, SAMSUNG, HTCの台頭により、ほとんど撤退モード(失礼)といった感のある同社だが、実はこのR&Dセンターには百名以上のエンジニアが勤務しているという。そして彼とそのチームが現在携わっているのはハードウェアの開発、それもなんと20年後30年後に予想させる通信ネットワークに使用されるであろう端末やメインシステムの開発をしているというのだ。端末市場をほとんど失ってしまったアメリカにおいて、同社がこんな規模で研究開発を行っているのは、ここシリコンバレーは人材の確保がしやすいだけでなく、この地が将来においても間違いなくデファクトスタンダードを生み出す場所であることを認識しているからであろう。それにしても、なんと壮大でスケールの大きなプロジェクトではないか@@!そんな未だ未知の世界のプロジェクトに多くの人材を投入しているNOKIA。これこそが本当の意味で世界制覇を狙うグローバルな会社のあり方であり投資の方法だと思う。知り合いの彼自身も食事をする暇もないくらいめちゃくちゃな忙しさだが夢のある仕事に本当に満足そうだった。
一方で今までは銀行の世話にならずに潤沢な資産によって君臨していたPANASONICやシャープ。その大半をプライオリティをつけられない間違った経営方針と、将来を見据えない中途半端な開発計画への投資によって失い、今や瀕死の状態で、かつては見向きもしなかった銀行に救いの手を差し伸べている彼らの状況をみるにつけ来年以降の復活に関して言えば、残念ながらNOKIAのような海外の列強とのアクションの違いから、ため息をつかざるを得ない状況だ。

さて今年に入って注目すべきことは、新しい製造のスタイルが急速に普及し始めてきたということだ。これには3Dプリンターの存在とアルデュイーノ(オープンソースハードウェア)等、新たな開発ツールの普及が非常に貢献しているのだが、新しいスタイルとしてお金をかけずに簡素化した機能やデザインを重視したプロトタイプを製作し、ソーシャルによって資金集めをするという流れが非常に面白くなってきている(このあたりはクリスアンダーソン著の「MAKERS」に詳しいです)。特にもともとハードウェアを得意中の得意としてきた日本の製造業にとってはもしかするとこれが新たなブレークスルーになる可能性が非常にあるような気がするのだ。勿論、大手ではなく今まで彼らに奉公してきた中小企業にとっては献上するだけの部品や部材だけでなく、今こそ自社のオリジナル商品を世に出す敷居が非常に低くなってきたということを理解し、是非、来年はこのあたりに真剣に取り組んでもらえたらと思う。

上記のNOKIAと日本の大手企業の歴然としたグローバル企業という意識の差を見るまでもなく、そして新しい選挙で政党は変わっても残念ながら今の彼らの技量では国際関係の体たらくの穴埋めに右往左往して、本来最も必要な国内経済の体質改善には気が回りそうもないし、大手企業の記者会見を見る度に感じる彼らの間違った方向性も、どこかが良い意味で破綻でもしない限り変わりそう(わかりそう)もない状況を見るにつけ、何度も以前から一貫して主張していることだが、彼ら大手に頼る体質を自ら早期に改善し、今まで生業のに加えて来年は少しオリジナル商品を開発しアピールするような計画を立ててみたらどうだろう?

NOKIAの話を聞いて、来年に向けてこんなことを考えてみた。2013年が、皆さんにとって素晴らしい年になりますように!

マーケティングの重要性を真剣に考えてみるべきだ!

少し時間が空いてしまったが(スミマセン)、今回も食べ物の話から…。シリコンバレーの古くからの知り合いで飲食店を展開し大成功している友人がいる。彼はこちらでは一般的な寿司カウンターのある日本食レストランを2店と日本風にメニュー構成をした中華レストラン1店の3店舗を経営。特に日本食レストランは連日行列のできる繁盛店。それが何年も続いている。もちろんシリコンバレーには同じようなレストランは山のようにあるが彼の店だけが特別に繁盛しているのには彼のしっかりした戦略があった。大きな特徴はといえば客の大半、少なくとも8割近くは日本人ではなくアメリカ人、それもアジア系の人たちだ。味付けはといえば、もちろん本来の日本食のそれではなく、日本人になじみのメニューに少し手を加えてアメリカ人受けするようにきちんと工夫されている。少し甘目の効いたテリヤキ(あえてカタカナで書きます)。ころものボリュームがある天ぷらにダシよりは醤油風味がちょっと際立った天つゆ等々、個々の詳細を聞いたわけではないが、それなりの工夫がされていることは間違いがなさそうだ。これは寿司にしても同じである。彼曰く「いま日本食レストランで一番お金を落としてくれるのはハイテク企業に勤めている中国人を中心とした20代から30代の若者たち。彼らが寿司を食べ始めた時には、既にカリフォルニアロールやフィラデルフィアロールといった俗にいうミッキーマウス寿司がスタンダードとしてメニューにあった。このような客にシャリの炊き方が重要とか青物の〆方が重要とか、ネタの寝かし方が肝要とか、このようなところにこだわってもまったく意味がない。なので勿論妥協はしないが仕込みを含めた部分でこだわりを抑え、万人に合う味を提供することが繁盛につながる」ということだった。なるほどといった感じ。このベーシックに加えて、上記に書いた味付けの工夫、たとえば甘味がある卵料理はゲデモノ料理と同等というアメリカ人の意識に基づきダシ巻卵の甘味を抑える等の工夫を施すことが繁盛のベーシック、つまりマーケティングとR&Dの賜物だといえると思う。
このマーケティングとR&Dがグローバル化にいかに重要かということは、「ものつくり」を自負している日本の中小企業に実は今一番欠けていることだと思う。最近多くの日本の中小企業の皆さんと会う機会があり色々と話を伺う中で、それぞれ素晴らしい商品や技術を持っているのだが果たしてそれらが今のトレンドである製品の何に応用できて、どこに使ってもらえるか?このあたりにリサーチしている会社は残念ながら非常に少ないことが分かった。つまり自分たちが作った製品がそのまま世界で通用するという事はまず皆無だという事を残念ながら今までお会いした企業の殆どが理解していないような印象を強く受けているのが現状だ。少したとえは異なるが具体的な例でいえば、知り合いが、あるアメリカの著名企業のCEOを日本に招請した際、金沢の代表工芸である金箔製造を見学させたそうだ。その際にCEOはそのプロセスを見て(もちろん金箔製造は日本以外でも行われているが)、その技術力の高さと製品の素晴らしさに驚嘆したそうだ。が、結局それで終わりである。仮にこのCEOが今トレンドのハードウェアの生産主だとしても、それが、この会社の製品にどのように生かされてコストダウンや製品の付加価値に応用できるのか、その薄膜精製の技術を応用してさらに素晴らしい製造技術を確立できるのか…というところまで言及されなければ結局この金箔製造は金沢の伝統工芸のままで終わってしまうのだ。
ものつくりを標榜し、それに酔っている感のある日本の中小企業の皆さん。確かにその技術や製品には素晴らしいものがあり、それによって数々のヒット商品を世に送り出してきたことも事実だろう。しかし、これからさらにグローバル化を図り業績を上げていくためには、今のトレンドや市場の需要にそれらが合致しなければ何の意味もない。このあたりを真摯に受け止めることによって自分たちの持つ技術が、たとえば今旬であるスマートPHONEやタブレットPCにどれだけ需要があり、それによって製品のコストダウンが可能になるのか一度真剣に取り組んでみてもらうことを是非お勧めしたい。もし需要がないことがわかればそれもまた良し。他の新しい市場をさらに開拓するきっかけにもなるのだとPOSITIVEに考えてもらえばと思う。

アップルVSサムスン訴訟の判決で考えたこと

スマートフォンをめぐるアップルとサムスンの訴訟はアップルの勝訴で幕を閉じた。これによって「ああ、やっぱりサムスンは物まねの会社なんだな~」と思った人,特に日本の電機業界にかかわる人の中には、かなり多かったのではないだろうか・・。確かにサムスンは物まね会社だった。早いもので今から26年も前の1986年、日本のベンチャー企業で働いていた私はサムスンのKNOCKDOWN生産のプロジェクトのために頻繁に韓国のサムスンの製造拠点であった水原市の生産技術研究所に通っていた。当時自分のいた会社の主力製品はPCボードの検査機。電気製品の基幹となるPCボードにきちんと部品が実装されているかを検査するシステムのメーカーに勤務していたのだが、その検査機にサムスンが目をつけ、「どうですか?部材の安い韓国で製品の製造をしてみませんか?」という誘いにのってのプロジェクトだった。もちろん先方の目論見はわかっていたので断ることもできたのだが、当時すでに顧客であった同社に反旗を翻すわけにもいかず、また「製品をコピーされても、彼らが追いつけないような新しいものを開発していけばいいさ。」という甘い考えもあった。形態としては検査機の心臓部である計測系のハードを私がいた会社が供給し、それ以外の部分をサムスンが製造するという流れだったのだが、購入したのは最初の20セットだけで後は見事にコピーされ、検査機はサムスンの製造ラインのスタンダード製品となり、サムスンの全製造工場の製造ラインに設置された。その数は10,000台を裕に超えているだろう。もちろん新しいものを開発していけばという安易な考えは日本の一介のベンチャー企業と異なりソウル大学に奨学金で通い国益のためにという名目で兵役をも免除された秀才エンジニアばかりを集めた同社には敵うはずもなく安心しきっていたROMのデータまで簡単にコピーされてしまった。そして私が通っていた生産技術研究所の広大なフロアーには、この検査機のみならず当時世界最高峰といわれていた日本のPCボード製造ラインの数々の製品、PANASONICの実装機、日本電熱計器の半田層などが、彼らの手によってリバースエンジニアリングされていた光景を今でも鮮明に覚えている。
しかしながらCONSUMERエレクトロ二クス、家電分野でいえば、彼らの、このような物まねも2000年の半ばまでだったのではないだろうか?それ以降のサムスンの製品、特に自分が深く携わっていたTVの分野でいえばLCDやプラズマの薄型が主流になった段階で完全に立場は逆転していたように思う。日本勢が薄型TV では先行してキリギリス状態になっていた時期に彼らは製品のR&Dに執拗なまでに注力し、いかに基幹部品のひとつ、ワイヤーの一本でも減らして安価に効率よく生産できるかに心力を注いでいた。そして同社と同じプロセスを踏んでいたLGとともに市場を席巻し現在に至っているのは周知の事実である。そんな状況に、ようやく尻に火がついた日本勢が「なぜ韓国勢はあんなに安くTVを作れるのだろう?」ということで2008年ぐらいからPANASONICをはじめSHARPもSONYも皆サムスンやLGのTVを分解し必死になってリバースエンジニアリングをしていたことはあまり知られていないだろう。おまけで言えばデザイン性まで完全に優位に立った韓国勢のTVと全く類似したデザインのTVを2011年に新製品と称して日本の雄であったPANASONICが発表した時には残念ながら絶望感を感じてしまったものだ。また最近で言えば1cmを目標に薄ければ薄いほど良いというLCD TVに固執していた生産を既にサムスンは辞め2cmであっても安く製造する事が肝要というマーケティイグデータをもとにさらなる市場拡大に挑んでいる。いまだに4KやらビヨンドTVと称して高付加価値にこだわる日本勢には、残念ながら明るい未来はない感じがする。
とまあ話が長くなってしまったのだが、要は「サムスンは物まね会社だ」というのことはやさしいのだが、物まねされるような技術や製品がありながらグローバル市場で成功できなかった日本勢は真摯にその現実を認めるべきであり、その中から新たな活路を見出してもらいたいと思うのだ。この辺りは先日ダイヤモンドに寄稿された安藤さんの記事と全く同意見だ。非常に残念かもしれないが自力でどうにもできなければグローバルに展開する企業の軍門に下ることもありではないか? 特に今後その需要拡大が期待され日本が優位に立っていた電池、モーターの分野においては、その技術の流出を憂慮するより、逆に潤沢な資金のある国外企業に入りこみながらも、いぶし銀(表現がおかしいかも知れませんが…)のような技術を供給しつづける努力をすることで、大中小を問わず確実にイニシアティブをとることができる日本企業の出現に大いに期待したいところだ!

家電があるじゃないか!

一昨年の3D機能を最後にTVは進化を止めてしまったようだ。これに呼応するかのように値段の下落がはなはだしい状況で、最近のこちらの市場では、50”のLCDテレビで$600台が定着している。日本円でいったら5万円だ。SHARP,SONY, PANASONICといった今まで世界に君臨していたTVメーカーが軒並み総崩れになってしまったのも無理もない気がする。ちなみに日本で生産していた当時のLCDパネルの工場出荷価格は昨年の時点では50”で概算50,000円ぐらい。すでにこれをアメリカに持ってくるだけで、こちらの競合他社の販売価格と同じなのだから、お金をつけて販売しているような結果になっていたわけだ。巨額損失のあと、上記3社をはじめ日本のすべてのメーカーは少なくとも40”以下のTVを現在では台湾系、中国系のEMS企業でODM生産している。本当に残念といえば残念だが、デジタル化によってコモディティ化してしまった商品はこのような末路になってしまうということを真摯に受け止め、今後に生かしてもらいたいと思う次第だ。
さてさて、アメリカにいると、あまりそのあたりの情報が入ってこないので、ついつい疎くなってしまうのだが、出張の際に足を運ぶ家電量販店の賑わいには目を見張るものがある。そして、そんなTVの業界にどっぷりだった自分の目線で日本の家電に目を向けてみると…。これがなんとビックリ仰天@@(って疎いのが自分だけだったことを痛感する感じだが)!日本の家電はますますハイテク武装し機能も強化されておまけに価格も軒並み上がっているではないか!!!、特に驚愕なのは炊飯器。10万円台がざらにある。こんな炊飯器でご飯を炊いたら本当に涙が出るほど美味いんだろうな~と思うけれども10万円という価格には驚いてしまう。そしてほかにも目を向けてみると、プラズマクラスターが標準装備された空気清浄器やエアコン、エアコンに至ってはアレルゲン除去機能までついている。サイクロン式掃除機は、これまた軒並み10万円近い値段のものが並んでいるし、冷蔵庫には無駄に冷凍させず鮮度を維持するパーシャル機能やナノイー(これらはPANASONIC製)というイオンで除菌脱臭までしてしまう機能が付いたものが標準的だ。当然こちらで見かけるようになったLGやSAMSUNG製のドラム型洗濯機の大元は日本メーカーだし、あの洗濯音の静かさは、アメリカブランドの大音響(大げさかな?)に比べたら雲泥の差があると友人がおしえてくれた。そしてスチーム型電子レンジ等々…。とにかく凄いのだ!

”なんだこんな素晴らしい家電があるじゃないか!!”

と正直、思わざるを得ない。アメリカの電気量販店に行っても日本製をCOPYしたとしか思えない、LGやSAMSUNGNの冷蔵庫や洗濯機。老舗として未だに健在なGEやWHRILPOOL、参入してきた中国はHAIERのアプライアンス製品。そんなものが店内に鎮座しているのだが、残念ながらこ優れた日本の家電たちは見たことがない。なぜだろう???本当に不思議である。勿論、ブランド名だけつけたOEM製品と思しきSHARP製、QUASER(PANASONIC)製はあるのだが値段の安い旧態依然のものばかりだ。やはり価格がネックになっているのだろうか・・・・・。

実はアメリカ、その一部を占める富俗層のお宅にお邪魔すると、いままで見たことも聞いたこともないようなブランドのキッチン製品や冷蔵庫、電子レンジ、オーブンなどが並んでいる。INDESIT, CAPITAL, SUB ZERO, Northland, Leibherr等々…。こんなメーカーの商品が彼らのキッチンには鎮座しているのだ。勿論大きなキッチンにふさわしく商品も大型だったり、いろいろと特徴がある(アンダーテーブルに入る製氷機やセラー類、壁に収納できるレンジやオーブンなど)のだが、少なくともこのようなところに直接参入するのではなく、独立型の商品として、この富俗層向けの高級家電としての位置づけで日本の優れた高級(日本では一般的だけど)家電を売り込むことは十分可能ではないかと考えられる。乾燥したカリフォルニアにナノテクで肌に潤いを与える機能の付いた空気清浄器、中西部で一週間の買い物を一回で済まさなければいけないエリアには鮮度を長期に保つ機能がついた冷蔵庫、そして高温多湿なエリアにはダニやカビをとる機能がついた掃除機や日本の夏を乗り切るためのアイデアが施された家電の数々は必ず需要があると思う。考えれば考える程、また国土の広いアメリカだからこそ、その可能性は広がると思うのだが、いかがなものであろうか?
とまあ、このような市場があるにもかかわらず、いまだに日本の家電をほとんど見かけないのは既にそれなりのことをやったのだが、ダメだった…。ということかもしれない(かな?)。しかしながら、この先ほとんど見込みがなく回復の余地がなさそうなTVの生産と販売にしがみついているよりは、このような新しい可能性に向けて再度マーケティングをスタートさせる会社(今回は大手企業ですよ!)が1社ぐらいあってもよさそうなものだと思う。今までのように皆で同じ方向をむく!ということに執着しないで独自の道を切り開く会社が出てきてくれる事に期待したい!そして、これでうまくいけば、将来的には、そのもとで頑張る何十社もの協力工場の活路にもなるのだから。。

電子書籍端末とタブレット型PC市場はどうか?

ここのところ、タブレット型PCや電子BOOKの端末発表が相次いでいる。既にアメリカでは最大のシェアを誇るIーPadをはじめとしてAMAZONのKINDLE, アメリカ最大の書店チェーン、バーンズ&ノブルのNOOKが市場に出回っていたが、6月半ばにマイクロソフトのサーフェースが発表になり、そのあと6月の末にはGOOGLEのNEXSUS、日本ではKINDLEの参入に呼応するかのように楽天がKOBOを超低価格で発表。これに付随するためのソフトウェアも大日本印刷など大手のバックアップによりますます一般的になってくる感じだ。勿論タブレットPCと電子書籍端末の位置づけは異なるのだが、本を読めるという点では共通している。
これらの製品に要求されるのは、というかこれらの製品の優劣を分ける要因としては当然のことながら高画質のディスプレイとデータ容量の大きさ。そして長時間の稼働を実現するバッテリーだ。また落下の場合の耐衝撃性や風呂でも読める防水性(これは一部の需要ですね…^^;)等々、これらの技術を低価格で供給することができれば、これから市場はますます広がると思われる。
さてさて、そんな新たな市場の隆盛を見てみると当然われらが日本勢、それも中小企業がそこへ食い込目る可能性も極めて高い(毎回同じような話になってしまいますが…)と自分としては考えたい。少なくともSHARPのLCDパネルの高画質を実現した裏には多くのFILMメーカーの製品が不可欠だし、高寿命バッテリーには今はどこも覇気を失ったが今まで世界を席巻していたSONY, SHARP, PANASONICの電池事業を支えてきた多くの協力工場があるはずだ。彼らが独自の製品や技術を駆使して、これらの新市場に独自に進出できれば(というか開発時のスペックインに食い込めれば)、量産時の生産に関しては東南アジアや新興国になっても極論をすれば新たな展開の可能性はあると思う。勿論そこには新たなR&Dが必要になるし彼ら(日本の中小企業)が不得意としているマーケティングにも真剣に取り組まなければならないだろう。衝撃吸収でいえば生卵を落としても割れないパフォーマンスとαジェルとしてシューズメーカに採用され一躍脚光を浴びたT社は、今新たな市場開拓のためにシリコンバレーに拠点を構え、これらのタブレット型端末の新しい市場や振動吸収が必要となりそうな半導体製造メーカー、医療機器メーカーへの食い込みを狙って奮闘している。この努力が大事なのだと思う。やるだけやってみて市場がない、もしくは要求されたスペックに到達できないということであればそれは仕方のないことだ。そこで次を考えればいい。そして、その努力を日本人ならできるはずだ。少し話がそれるかもしれないが日本の米が世界一美味いのにはちゃんとした理由がある。それは遠い昔、日本は税金が米だったからだ。平安時代の荘園制あたりから年貢米を納められない民が断罪に処されてきた結果、日本人は地域ごとの気候や季節の変化、水質、天災などの状況においても確実に収穫が出来るコメを必死に品種改良してきた。その結果、鎌倉時代にはすでに100種類近い品種があったそうだ。当時は勿論、上からの強制と生死をかけての葛藤があったことは事実だが、やるときはやる!そして努力を惜しまない気質がそこにはあったように思えてならない。
このDNAが少しでも残っていることを期待して、多くの会社が挑戦してみよう!という気になってくれれば、この新しい市場に食い込めることろが少なからず出てくるに違いないと考えている。

テスラモーターズの戦略から考える。

5月の終わりに、世界ではじめての民間宇宙貨物船が宇宙ステーションへの運搬任務を完了し無事地球に帰還したニュースが流れた。この宇宙貨物船を開発した会社はSPACE X。シリコンバレーのもっとも成功した起業家の一人であるイーロンマスクが2002年に設立した会社だ。イーロンマスクはアメリカでもっとも普及しているオンライン決済システムであるPAYPAL(最近日本でも普及しつつあるらしいが)の開発者で、その会社を世界一のオンラインオークション会社であるebayに売却して得た巨万の富で、2002年にこのSPACE X社を設立。これまでに何回かの打ち上げを行ってきたがいづれも失敗に終わり今回が最初の成功になった。この成功により、本格的な宇宙開発にも弾みがつくとNASAをはじめとした関係者は語っている。
実はこのイーロンマスク、電気自動車(以下EV)のベンチャー会社テスラモーターズの創業者でもある。SPACE Xに遅れること2年後の2004年に設立されたテスラモーターズは4年の開発期間を経て2008年に最初のロードスターモデルを発表しセンセーショナルなデビューを果たした。その後2009年に新しいセダンを発表したが実際の発売は今年(2012年)になる予定(6月22日に販売開始になりました)。同社にはトヨタが2010年に50億円の出資をしたことでも話題になっている(って過去の話になってはいるけど)。そして2013年にはRAV4のEVモデルを発売するという話もあるが未だに不透明だ。自動車メーカーとして鳴り物入りで参入してきた割には未だに発売されたモデルは2車種のみであり実際には何をしているのだろう??という疑問も少し抱かざるを得ないのだが、実はこの会社が最も力を入れているのは高性能車載用バッテリーの開発だ。自社ブランドの車であれば車種が多ければ話は別だが、当然モデル数をある程度確保し台数を売らなければ会社の利潤を維持することは難しい。特にものすごい額の初期投資が必要な自動車メーカーへの参入ということになればなおさらだ。ところが将来的に電気自動車には不可欠になるバッテリーであれば自社のモデルに限らず性能が評価されれば、当然不特定多数のメーカーへ販売ができるわけだ。この方が会社としての利潤を確保することは容易だし車種別の生産ラインの構築も必要なくなるので投資も抑えることができる。決済システムという物販には必ず必要になるインフラで巨万の富を得たイーロンマスクが考える自動車メーカーのゴールがここにありそうだという事は容易に考えられる。同社は既にメルセデスやVW向けのバッテリー供給に関する提携を結んでいるという。
実はこのEV用のバッテリーに限らず、家庭用蓄電池をはじめ、細かいものでは長寿命のタブレットPCやスマートフォン用のバッテリーなど、この分野の需要は急激に伸びてきている。そんな需要に呼応するかのように、アメリカ国内だけでも既に24社のバッテリーメーカーがあるようだ。彼らが、EV用に限らず、いろいろなマーケットにおける覇権の確保に精力的に技術開発をおこなっている。かつて日本は高性能バッテリーの一大生産国でもあった。SANYOはもとよりPANASONICやSONYの高性能バッテリーや電池は世界中で評価されていたのだが、SANYOが亡くなりPANASONCやSONYも巨額損失を余儀なくされた今、これらの事業にも少なからず影響が出ていると思われる。そして本当の意味で彼らの実績を支えてきた数多くの中小協力工場はどのようにして今後を考えていけばいいのか??2次電池用材料の精製技術をはじめ殆どの技術は彼らによって確立されたものだ。現在では韓国、中国のメーカーが、こぞってこれらの技術をもった会社との提携を進めようとしているという。日本人としては何とも歯がゆいのだが、これも今後の方策としてはありかもしれない。そして、可能であれば今アメリカでHOTな産業になりつつあるこちらのバッテリーメーカーにも自分たちの培われてきた技術を元に積極的にアプローチをしていけば、間違いなく日本の大企業に依存しているよりはポテンシャルがある展開ができるのではないか思う。志のある中小企業には、できればこんなアクションを早期に起こして何とかアメリカでの躍進を実現してもらいたい。