何と仕事にかまけていた(?)ら、2カ月ぶりの投稿になってしまいました。どうもスミマセン。
先ごろ(と言ってもだいぶ前ですが…)、サンノゼ空港から出張に出かけたら、何とサンノゼ空港は全エリアで無線ラン(WIFI)がタダで使えるようになっていた。さすがシリコンバレーの中心であるサンノゼ!これはかなり粋な計らいだと感心。いつも空港に行くと私のような、月一トラベラーの場合は、そのつど空港にてテンポラリーのサービスを使用するために、1時間単位で課金(8ドルぐらい)されてしまうし、いちいちアクセスのプロセスをするのも煩わしいのだが、それが不要というだけでうれしい。それにしてもこの計らい、かなりしたたかな部分もあると思えた。当然最初に開くのはサンノゼエアポートのホームページで、その紹介が中心なのだが、彼らとしては、そこに広告スペースを設けて近隣のホテルやレストランからの広告で利ザヤを稼ぐことも可能になるだろうし、何より、その中でサンノゼの魅力を存分にPRできれば、将来的な利益につながってくる可能性もあるわけだ。そしてこれだけの理由でもサンノゼ空港をトランジットに使用する客が増えるかもしれない。。。もちろん先行投資に対する効果もあるからサンノゼ程度の空港サイズなので可能なのかもしれないが、やはりここにマーケティング戦略を垣間見た気がする。
これに加えて凄いと思ったのがサウスウェスト航空で、何とこのフリーWIFIを利用する客のために専用のテーブルを各ゲートごとに接地。やりますな!同じターミナルのアメリカン航空のゲートにはもちろんそんなものはない。経営状況を物語るような光景だがさすがサウスウェストと思わず唸ってしまう。
Archive for SALES&MARKETING
サンノゼ空港の粋
「おもてなしの経営学」を読んで
親友で、ITジャーナリストの湯川さんのブログに書かれていた中島聡さんの「おもてなしの経営学」という本が気になっていて、今回の日本で早速購入した。非常に面白い本で一気に読了。ソフトウェアの面から「ものつくり」に関してのUSE EXPERIENCE(おもてなし)の重要性を説いた内容で、もちろん、ものつくりが中島さんの場合には、コンシューマー向け、私の場合には、ビジネス向けではあるが、基本的には自分の商いの中心であるハードウェアの面からもまったく同じことが言えているという点では、色々と考えさせられた。
USER EXPERIENCE, 我々の業界では以前からUSER FRENDLYという表現がよく使われているが、使う側から見て「使い勝手のよいもの」が、製品の一つの重要な要素となるということはマーケティングの側面から見ても非常に重要な要素だ。これに加えてハードの場合には品質、サービス、価格という要因も重要になってくるのだが、製品は常に技術者の側面からの開発が中心になる傾向があるために、どうしても機能的にマニアックになる傾向があるのが常だ。中島さんは本書の中で「パソコン教室に通わなければならないような製品を作ってしまったこと」に対する真摯な気持ちを吐露している。そしてその気持ちが現在のアップルとSONYの現状に反映されていることを紹介している。会社の存続をも左右してしまうものつくりのコンセプトの本質がそこにあるという考えには非常に共感が持てる。
私が以前勤めていた会社のベストセラー商品は、技術的には決して優れたものではなかった。ある意味既存の技術をうまくまとめただけのものであったと思う。それが日本の製造メーカーの生産ラインに不可欠なものなって爆発的に売れて一時はシェア40%を確保していた。この背景を今になって考えてみると、日本中、そしてアジアの各国で採用されたわけは非常に単純で使い勝手がよかったのだろうと断言できる。その分、色々なメーカーに簡単にCOPY品を作られてしまったという経緯もあったのだが、先行逃げ切りで会社をIPOまでこぎつけられた。少し違うかもしれないが、これも中島さんの言う「おもてなし」のコンセプトに共通していたと思う。
話は変わるが、今回訪問した会社の役員たちと群馬県は富岡の老舗料亭で食事をした。その夜のお客は我々だけでお世辞にも繁盛しているようには思えなかったが、富岡製糸場の隆盛に呼応して80年の歴史があるという。料理が運ばれるたびに女将と歓談したのだが、したたかにビールを飲んで帰り際にトイレに立ち寄ると、こんな額がさりげなく飾ってあった。
日本に昔から存在するおもてなしの極意というのは、まさにこういう事だったのではないかと思う。長い間のアメリカ生活で忘れかけていた、サービスの粋に感動。このような素晴らしい「おもてなし」の技を本来習得しているはずの日本を代表するSONYが、簡単にAPPLEにお株を奪われてしまったのは、I-PHONEのときにも書かせてもらったが、本当に不甲斐ない気がしてならない。
カーエレクトロニクスの将来性
先週は久しぶりに中西部へのトリップ。テキサスは南端のマッカレン(メキシコのレイノサ)を皮切りに、テネシー、アトランタをまわってきた。基本的にこのあたりにあるお客様はいづれもカーエレクトロニクス関連。車載電装品のメーカーが中心だ。それにしても値段の下落がはなはだしいコンシューマー業界とは異なり、こちらのメーカーはどこも大忙しだ。これだけガソリン代も高くなるとやはり経済的な日本車の需要は高まるばかり。各社ともその自動車に搭載するアイテムの生産に追われている。やはりカーエレクトロニクスの強みは、この先どんどんと新しいものができる可能性があるということに尽きる気がする。特にガソリンに頼らず将来的には太陽電池など次世代の燃料の搭載が不可欠になってくれば当然車の電装率も高まってくるであろう。そして新たなテクノロジーの搭載という面でもその可能性はさらに広がると思われる。今回訪問したカーステレオメーカーが生産する商品には何と高級車向けにノイズキャンセレーション機能(最近ヘッドホンでよく見かけるマイナスの周波数をかけて騒音を中和してしまう機能)まで搭載されているそうだ。これによりエンジン音や風切り音はもとより外部からの騒音をなくしてしまうとのこと。凄い!別の知り合いの会社では脳波センサーの開発をしているのだが、このセンサーも将来的には車のシート(ヘッドレスト)に搭載され、眠気や注意力散漫を防止する機能を持たせることが可能らしい。当然、これらの生産自身も将来的には車載電装品メーカーの手にかかってくることを考えると、車の進化に伴って今後ますます需要は増え、必ずしも楽観視はできないが、将来性はかなり明るいような気がする。
サービス(気配り)の粋
サンディエゴに行きつけのコーヒーSHOPがある。サンディエゴの滞在中はいつも朝家を出るときに途中このお店に立ちよってコーヒーを買うことを常としている。朝の時間帯には、私のような通勤途中のお客や、地元の人たちが、歓談の場として利用しており結構にぎやかだ。当然オーダーを待つ人の列がいつも少しばかりできているのだが、ここの女性店員たち(皆若くて結構美人)は、私の顔を見ると「Hi, Yoshi」と声をかけてくれ、私が注文をしなくても、私のいつものオーダーを「これでいいわよね?」といって出してくれる。毎朝飲むコーヒーなので、今日はラテだけど明日はエスプレッソ…などと、ころころ変える人は当然少ないと思われ、私以外のなじみの客も皆同じような感じでオーダーがサーブされている。う~ん、やるな!と思う。思わずサンキューの一言と少し大目のTIPを置きたくなってしまうのが心情だろう。アメリカでは稀有な、こういうサービス(気配り)には粋を感じでしまう。
私の尊敬する知り合いに、アメリカでビジネスに成功し、まだ還暦前だが半リタイヤの生活をして人生を謳歌している大先輩がいる。彼は30年近く前にアメリカにわたり、無一文から今のステータスを築きあげた。当初、手に職も専門的な知識もなく、当然就職もかなわず、ほとんどできることがないので誰にでもできる掃除屋からはじめたそうだ。幸いある小さな会社の事務所の清掃を請け負うことができ、その仕事からスタートした。余計なお世話だと最初は思ったそうだが、見た目に殺伐とした雰囲気の事務所がちょっと気になり、自分が愛飲していたアップルジュースのりんごの形を模したかわいい小さな瓶が沢山あったので、それに庭の花を挿してトイレやレセプションなど、気になるところにそっと置くようにしたそうだ。もちろん仕事がきちんとできることが大前提だが、そんなちょっとした気配りが、その会社のオーナーに気に入られ、次々に知り合いや関連の会社を紹介してもらって急成長。数年後にそのビジネスを売却し、あとは持ち前の努力とサービス精神でいくつかのビジネスを成功させて今日に至っている。
本当に些細なところにビジネスのチャンスとそれを伸ばすか否かのヒントがあると思う。特にサービスに関してはカスタマーサティスファクションを常に全面に押し出しながら何をカスタマーサティスファクションだかまったく理解しているとは思えない対応を普通にする輩が多いアメリカにおいては、その傾向が顕著だ。サービス(気配り)の粋はその際たるヒントだと思う。
プラズマ/LCDパネル戦線異常あり?
今週から本格的に仕事始め。昨年のクリスマス商戦の結果と2008年度のカスタマーの計画を確認すべくメインの客先に足を伸ばす。LCDのTV市場はやはり昨年の状況がそのままクリスマス商戦にも繁栄していて売れ筋だったのは大型のTVではなく32、37インチといった2~3台目の需要(子供部屋に置いたりBEDルームに置いたり)が中心だったらしい。日系の各メーカーが予想した大きくなればなるほど需要があるといったもくろみは見事に外れた結果になった。既にこのレンジは完全に台湾、韓国そして中国の独断場。最近では37インチが$500をきる勢いだから正直なところ既に日系の各メーカーが太刀打ちできる状況では無い感がある。そんな中、2008年の南北アメリカのLCD市場は今後どうなるのか?断片的だが色々な意見で気になったものを書いてみた。
ー2008年は昨年と同じように32,37インチといったLCDTV需要が堅調だろう。
ただしこれらのサイズのTVを作っても既に韓国勢でも利益を出すことはむずかしい。
ー昨年パネルの工場をメキシコに作ったS社はTVではなくパネルの販売という戦略でこの
状況を乗り切る方針。
☆さずか目のつけどころがシャー○でしょ!
ー韓国製のパネルの使用で何とかアメリカ市場を確保したS社。今年は台湾勢のVISIO,
EIZOに挑むべく中国製のパネルに切り替えて全面対決の構え!
☆社長がアメリカ人になって、終わってしまいましたね…
ー台湾のLCD製造メーカー最大手のチーメイの予測では20087年も32、37インチを中心
に20インチの需要が伸びるだろうとの見解。
なぜ20インチか。それはGAMEの需要が伸びるという意見
☆なるほど!ゲーム市場を席巻しているわが国は、この需要に気づいてるのかな?
ー高級路線で北米市場では堅調な伸びを見せたP社。ただ同製品の中南米、南米での伸び
は期待できそうも無い。商品名のKUROはスペイン語で「ヶ○の穴」の俗称だからだ。
☆カルピスと同じですね~もうすこし配慮が必要では?
ー大型スクリーンでニッチ路線で行くM社は今年もこの路線で突き進む方針。
☆いいですね、これこそ日系企業の進むべきスタイル!
ーCESで150”の巨大プラズマスクリーンを披露したP社。
☆でも、このサイズの生産コストに見合う需要はあるの??
というわけで、2008年のLCD/プラズマ戦線では日系企業の躍進に期待したいところだが、なんとなく他のアジア勢に最初から分がある感じが否めないのが悲しい。ただ、独自路線のM社やP社、パネル工場をつくったS社などなど、まだまだ十分頑張れる余地ありなので彼らを中心とした今年の活躍に期待したい!
やっぱりマーケティングの重要性
現在お付き合いしている大手の日系TVメーカーでは、大幅な在庫調整がこの5月6月にあった。要因は売れ筋だと確信していた50”以上の薄型TVの販売が思ったように伸びずに過剰生産になったらしい。
昨年より日本のTVメーカー各社は大幅な設備投資を敢行し、将来的に需要が見込まれそうな50”以上の薄型TVの増産を今年に入ってスタートしている。おかげさまでビジネス的には好景気が続いており非常にいい傾向だったのだが今回の在庫調整には「大型TVが安くなれば需要は必ずある」と確信していたメーカーサイドにマーケティングの甘さがあったようだ。確かに見方としては悪くないと思う。今までほしくても買えなかった大型の薄型TVが2,000ドルを切るレンジにまで下がってくれば、そこに大きな需要が生まれるはずだったのだが、結局一番売れたのは30″~37”といったサイズのTVだったという。現在これらの薄型TVは1,000ドルを切るレベルで売られている。この価格帯に手が届く消費者層が大勢をしめたということだ。米国の平均所得を見れば必然的にその差の意味するものがわかるように思う。そして私が考える別の要因だが、カリフォルニアは、少しは落ち着いたものの最近の住宅建築ラッシュはまだまだ堅調なようで、借り手のないオフィスの跡地がどんどんコンドミニアムやタウンハウスに変貌しているのだが、アジア人やメキシコ人の多いこのエリア(カリフォルニア)で、昨今コンドミニアムは一部屋のサイズより部屋数の多いものに需要がある。たまにモデルルームを冷やかしに行くと部屋数は多いのだが、これは日本の四畳半?と思うような部屋があるものが大半だ。当然そのしわ寄せかリビングルームも狭い感じがする。そんなリビングに50”~のTVはちょっと大きすぎるかもしれないし、ましてや日本サイズの4畳6畳レベルの部屋に大型TV は無理だ。ここまで少し切り込みを入れていけば在庫調整をするまでの余剰生産はせずに済んだのではなかったか?と少し考えてしまった。
面白い(失礼。。)のは、この在庫調整が1社ではなくP社やS社の最大手を中心に大半の会社で実施されていたということだ。右へ倣えでマーケティングの重要性を軽視して、また皆揃って同じ轍を踏んでいるという状況はここでも顕著な気がする。
サウスウェスト航空の機敏
仕事がら、サンディエゴに行く機会が多いのだが利用するのはいつもサウスウェスト航空だ。アメリカの航空会社でUNITEDやAMERICANの最大手を尻目に唯一利益を出している航空会社として有名。しかし彼らのサービスや動きをみているとそれもうなずける気がする。まず社員に妙に屈託がなく明るい感じがする。きちんとした制服に身を包んで神妙な面持ちのほかの航空会社とは違ってサウスウェスト(以下SW)の制服はボタンダウンシャツにチノパン。夏はそれがポロシャツに代わる。畿内を動きまわる作業にはうってつけだ。そしてたまに冗談を交えた軽快なアナウンス(時に耳障りな時もあるが…)もイメージ的には明るい。そして、運営もユニーク。乗られた方はわかると思うがシートのアサインができないというか不要で乗り合いバス同様のシートは早い者勝ち。いいシートに座りたければ早くチェックインすればいいという感じ。これによってある意味複雑なシートの管理や配分が不要になり、かなりの合理化ができていると思う。加えて飛行機会社の課題である「どれだけオンタイムで離発着できるか」という点に関しても、従業員がみな協力して取り組んでいる姿が見れて小気味よい。SWは着陸後客の誘導が終わるとキャビンアテンダントが自ら手袋をはめて客席の清掃を始める。あえて専属の人間に委託せず、できる事を最大件に短時間で実行するという合理性もあって、着陸後は給油の時間のみでの出発ができるようだ。
待つ側にとっては5分10分の遅れが気もちを憂鬱にさせるものだが、彼らの真摯(?)な姿を見ているとそれも許せてしまう気がするから不思議だ。そんなわけで今までは、そのような合理が功を奏して価格的にも低価格を打ち出し、それでメリットを出していたようだが、たとえ燃料費の値上がりで他の航空会社と差がなくなっても、同じビジネスパーソンとしては機敏さを常に意識させるSWを今後もひいきにしたい気がする。
米)BEANS International Corporation代表。 神奈川県出身。1988年に渡米。10年間の駐在員経験のあと1999年に独立しシリコンバレーにて起業。同地で一貫して次世代産業を支える製造業関連の仕事を継続し現在に至る。