「おもてなしの経営学」を読んで

 親友で、ITジャーナリストの湯川さんのブログに書かれていた中島聡さんの「おもてなしの経営学」という本が気になっていて、今回の日本で早速購入した。非常に面白い本で一気に読了。ソフトウェアの面から「ものつくり」に関してのUSE EXPERIENCE(おもてなし)の重要性を説いた内容で、もちろん、ものつくりが中島さんの場合には、コンシューマー向け、私の場合には、ビジネス向けではあるが、基本的には自分の商いの中心であるハードウェアの面からもまったく同じことが言えているという点では、色々と考えさせられた。
USER EXPERIENCE, 我々の業界では以前からUSER FRENDLYという表現がよく使われているが、使う側から見て「使い勝手のよいもの」が、製品の一つの重要な要素となるということはマーケティングの側面から見ても非常に重要な要素だ。これに加えてハードの場合には品質、サービス、価格という要因も重要になってくるのだが、製品は常に技術者の側面からの開発が中心になる傾向があるために、どうしても機能的にマニアックになる傾向があるのが常だ。中島さんは本書の中で「パソコン教室に通わなければならないような製品を作ってしまったこと」に対する真摯な気持ちを吐露している。そしてその気持ちが現在のアップルとSONYの現状に反映されていることを紹介している。会社の存続をも左右してしまうものつくりのコンセプトの本質がそこにあるという考えには非常に共感が持てる。
 私が以前勤めていた会社のベストセラー商品は、技術的には決して優れたものではなかった。ある意味既存の技術をうまくまとめただけのものであったと思う。それが日本の製造メーカーの生産ラインに不可欠なものなって爆発的に売れて一時はシェア40%を確保していた。この背景を今になって考えてみると、日本中、そしてアジアの各国で採用されたわけは非常に単純で使い勝手がよかったのだろうと断言できる。その分、色々なメーカーに簡単にCOPY品を作られてしまったという経緯もあったのだが、先行逃げ切りで会社をIPOまでこぎつけられた。少し違うかもしれないが、これも中島さんの言う「おもてなし」のコンセプトに共通していたと思う。
 話は変わるが、今回訪問した会社の役員たちと群馬県は富岡の老舗料亭で食事をした。その夜のお客は我々だけでお世辞にも繁盛しているようには思えなかったが、富岡製糸場の隆盛に呼応して80年の歴史があるという。料理が運ばれるたびに女将と歓談したのだが、したたかにビールを飲んで帰り際にトイレに立ち寄ると、こんな額がさりげなく飾ってあった。

日本に昔から存在するおもてなしの極意というのは、まさにこういう事だったのではないかと思う。長い間のアメリカ生活で忘れかけていた、サービスの粋に感動。このような素晴らしい「おもてなし」の技を本来習得しているはずの日本を代表するSONYが、簡単にAPPLEにお株を奪われてしまったのは、I-PHONEのときにも書かせてもらったが、本当に不甲斐ない気がしてならない。

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