在米20周年

 自分の記憶が確かならば、今から20年前の1988年4月5日に私は始めてアメリカ本土に上陸した。それから20年のアメリカ生活。本当にあっという間だったという感じがする。2年間の韓国担当を経て、アメリカに来て仕事を始めた1988年は、ちょうどソウルオリンピックの年で、いいタイミングで韓国を離れてしまったことを後悔したのを覚えている。そして英語もそこそこ勉強して少しは自信があったのに、アメリカ行きの機内で、得意げに「COKEプリーズ」と言ったはずなのにコーヒーを持ってこられ、この先大丈夫だろうかと妙に不安になったのが昨日のように思い出される。
 当時のアメリカ、シリコンバレーは、日本より一足先に軽いバブルが終わって少し混沌としていた時期。UNIXベースのサンマイクロが破竹の勢いでサーバー市場を凌駕し、アジアの安いPCがこれまた凄い勢いで市場を席巻し始めていた。そして既にその地位を確立していたアップルがMS-DOSに押され衰退を余儀なくされ創立者であるスティーブジョブスが自らの会社を去った年だったと記憶している。当時はまだPCもモノクロのCRTで、ソフトウェアではワードスターやLOTUS、DB3などが主流を占めていた。
 その頃から90年代初頭にかけて、テレフォーニーという技術が急速に普及しはじめ、会社に電話をしても殆どの場合、個別のメッセージで「最近の営業は電話の機械にメッセージを残して終ってしまう」とアメリカ人の営業担当がこぼしていたことを記憶している。今になって思えば、このテレフォーニーに不可欠な小型の交換機の技術が後に来るインターネット時代に不可欠なROUTERの技術の布石になっていたのではないかとも考えられる。
 1995年あたりから交換する名刺にぽつぽつとメイルアドレスを見かけるようになってきたと思ったら、その後一年も経たないうちに怒涛のようなITバブルの幕が上がり、当時唯一ROUTERの生産をしていたCISCOシステムの株価が1997年の1年間で75倍になり、ZIPドライブのI-OMEGAの株価は50倍。そんな会社がざらにあってNSADAQ市場は空前の活況を呈し、周りに株成金やスタートアップで一山当てたにわか成金が現れ始めたり、友人のボーイフレンドで、パーティをすると彼女と一緒によく遊びに来ていたジェリーが、YAHOOを立ち上げて新聞の一面に登場したりと、何か自分のよくわからないところで、ものすごい流れが巻き起こっている印象があって自分もこればぼやぼやしていられないなあ、と思っていた矢先の98年に親会社が何と倒産。アメリカオフィスも清算を余儀なくされ、その当時現地法人の社長だった自分は、その業務に奔走して精も根も尽き果てボロボロになって、「これはもうやってられないな」と思い、1年間コスタリカあたりに行ってスペイン語の勉強と毎日サーフィンをしながらのんびり暮らしてみようと計画していたのに、友人たちに相談したら「お前馬鹿か?シリコンバレーはドッグイヤーだぞ。1年で7年先に進むんだ。おまけに今は一攫千金のチャンスがごろごろしてるのに、何でここを去るんだ?」と説得され、自分の周りの成功している連中を目の当たりにすると「そうかなあ?」と思い、自分ももしかしたら…などと単純にその気になってしまって、夢にまで見ていたコスタリカ行きをあきらめ、その旅行資金を元手に99年に会社を設立(本当にいいお客さんに恵まれたおかげで会社をスタートすることができた)し自宅の一室で業務をスタートしたのが1999年だった。
 ところがその年の後半にITバブルの崩壊…。幸か不幸か、IT産業とは、ある意味縁のない製造業に近いところで商いをしていた関係で、恩恵もこうむれなかったけれども損害もうけず、2000年からは本当にがむしゃらに奔走して今日に至る。という感じである。
アメリカに来て、それもシリコンバレーという環境で仕事ができたということは本当に自分にとっては素晴らしい経験だったし、90年代後半のITバブルのゆりかごから墓場(ちょっと言い過ぎだけど)までを傍観者としてみることができたことも何事にも変えられない貴重な体験だったと思う。そして今、本格的なWEB時代を迎え、その中枢を相変わらずリードしているこの地で、この先をどう生きるべきか?自分としては尊敬する梅田さんをはじめ、ここで得た多くの知人や友人たちの知恵と英気を十分に租借して、新たな展開を試みながら当分は頑張っていきたいと考えている(スミマセン乱文ご容赦ください)。

 

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