幕末の激動に学ぶ!

今年の大河ドラマ「西郷どん」が盛り上がっている。アメリカでタイムリーに番組を見るのはなかなか大変だが、久しぶりに週末の夜が楽しみだ。自称、幕末オタク(笑)の自分は、未だに傾倒している司馬遼太郎先生の、このドラマと同じテーマで描かれた「跳ぶが如く」をはじめ、「竜馬がゆく」「花神」「世に棲む日日」等々、幕末を題材にした小説は殆ど読破したが本当に印象深い名作ばかりだ。
そんな司馬先生の著作で、自らが題材にしてきた主人公を評した「手掘り日本史」という短編があり、その中に坂本龍馬について「彼にとっての討幕は、実は革命を起こして日本を改革するのが本来の目的ではなく、グローバルな商社を起業して世界を相手に貿易する夢の実現の為だったと思われる」というくだりがある。確かに龍馬は亀山社中という日本初の株式会社(長岡藩と越前藩が出資)を設立したのだが(同社は幕末の激動の中で消滅)、そこから更なる展開を計画し、そのために当時で言えば各地にある藩(大企業)を脱藩(スピンアウト)し、自分のグローバル企業設立という目標達成の為の国家改革(開国)を目論んでの活動だったと思われる史料や形跡があちこちに残っているというのだ。これは非常に興味深い。

引用が続くが、日本を代表する漫画家、手塚治虫先生の名作「陽だまりの樹」は、江戸時代後半に医師として活躍していた彼の子孫を通じて幕末の動乱を描いた作品。この題名は、「陽光を浴びてぬくぬくと時代と共に巨大に育った大樹は外見はしっかりしているように見えても内部は既にシロアリに喰われたり朽ち果ててボロボロになっている」という江戸幕府をたとえたもの。そんな大樹を倒すために立ち上がった幕末の若手志士たちの物語だ。

藩が当時における大企業と考えれば、それを統括し300年続いたコングロマリット的存在の江戸幕府、それにケイレツのごとく従属する保守派の諸藩を倒し、新しい時代を興すために薩長土佐など革新的意識を持った藩(新興企業?)や龍馬のようなアントレプレナーたちが活躍したのが幕末の激動だったとも言えるだろう。

さて、前置きが長くなったが、先般「話を伺いたい」いう中京地区に本社がある鋼材を扱う一部上場商社の駐在員社長一行に会った。同社は自動車関連の顧客がメインで日系の製造工場周辺を中心にアメリカにも数か所事務所を持っている。年齢的には自分ぐらいか少し上の60前後だろう。彼らには何のしがらみもないので、この地で感じる日本の自動車産業の危機的状況やTOYOTAが無くなる日が来てもおかしくないという本音の話を小一時間ほどしたのだが、その間、連中は一言も口を開かず、憮然とした表情で「日本の自動車産業が無くなるなんて、そんなバカなことがあるわけないだろ。アホかお前は!」と言いたげな感じを終始醸し出していた。自分もその横柄な態度が頭に来たので挨拶も早々にその場を引き上げたのだが、この手の大企業駐在員の社長(もしくは管理職)がシリコンバレーにも実に多い。
勿論、半導体関係を中心に、こちらに10年以上駐在し根を張って本気で奮闘している尊敬できる社長も何名かおられるが、3年~5年といった期間で50代を過ぎて駐在している連中からは、残念ながら帰国後の円満退職を意識し保身に走り決してリスクを取らずカリフォルニアの陽光にワインと週末のGOLFをエンジョイしているイメージしか感じられない。特に自動車関連では大手メーカーをはじめT社の電装品を扱うTier1など多くの企業が50代過ぎの駐在員をTOPにオフィスを構えてるが会社の看板掲げて態度偉そうでも存在感は皆無だ。危機的状況が垣間見える同産業において、この先数年後に来る大変革に対して的確に状況を見据え判断ができるTOPがいなければ将来は無い。また、判断ができてもそれを実行できない、もしくは同じような管理職を多数擁し井の中の蛙になりかけている親元を動かすことができない輩が、法外な家賃と生活費を払ってまで、こちらに居ても何の意味もないし、そういう浪費に気づかない日本の本社も終わっていると思う。
先の商社社長のように、自分と同世代の大企業の面々が自動車産業の未曽有の危機に直面している状況に安穏としている様子を見ていると本当に残念でならない。

こうなると、頼みの綱は、やはり若い力だ。シリコンバレーのオフィスを構える関連企業大手の中にはY社やS社のように若手の精鋭に責任を任せ、時代や環境を読み取る鋭い感性と行動力で社内改革を含めてバリバリに動いている会社もある。偉そうだが、こんな企業の将来は期待できそうだ。
反面、この激動の時代の大役に、状況を的確に判断しスピード感にも追従できる気丈な若者を擁立できない会社は既に「陽だまりの樹」だろう。
そのような会社から自信のある若者は一日も早く龍馬のようにスピンアウト、もしくは長州藩の奇兵隊のごとく伸びそうな事業(部隊)をカーブアウトする作戦を是非検討してもらいたいし、若手スターアップ企業との連携などで保守的な企業の破壊と創造も何とか推進してくれたらと思う。加えて、多くの革新的若手スタートアップの勃興にも期待したい。

幕末の激動期に日本を動かし改革を実現したのは多くの犠牲を払いながらも、西郷、大久保、桂、坂本をはじめ殆どが20代、30代の若者たちだった。
シリコンバレーも然り。YAHOO, GOOGLE, FACEBOOK, APPLE,DROPBOX等々、世界を変える多くの企業を興してきたのも20代30代の若きCEO達だ。

既に我々には明治維新という実績もある。是非とも若い力で、日本にとって最後の牙城である自動車産業の破壊と創造に怒涛のように押し寄せる中国をはじめとした新興国や、連携を強めるヨーロッパ勢から死守し、その勢いでさらなる日本の再構築をも実現してほしいと思う。

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