武士道の負の影響を変える意識を持つ!

自分の大好きな司馬遼太郎先生の名著「この国のかたち」の中で先生は「名こそ惜しけれ」という考え方が日本人の倫理規範の元になっていると書かれている。平安時代末期、坂東武士の誕生により、今までの寺社(宗教関連)や貴族間にはなかった「自分という存在にかけて恥ずかしいことはできないという意味」をもつこの言葉は、「一所懸命」、「いざ鎌倉」という領土を与えてくれた主の恩義に報いるために忠誠を誓うという「武士道」の基本的な精神として日本人のDNAに刷り込まれている。
この精神によって、日本は明治維新以降十数年で、海外列強に引けを取らない経済力を確保し、第2次世界大戦後は、わずか5年で奇跡の復興を成し遂げ、世界で有数の産業立国となった。
東日本大震災の後、あれだけの大惨事に見舞われながらも大きな略奪や暴動も起こさず、秩序よく配給の列を作り、粛々と復興に全力を尽くしてきた姿はまさに、この精神の成せた技であろう。世界から驚嘆と思われても不思議はない誇るべき国民性だ。

さて、この「武士道」に立脚した国民性だが、実は日本の中小企業にとって、またスタートアップ企業にとって時にネガティブに作用しているのでは?と思う事がある。

少し前になるが、浜松市の金融機関の皆さんと懇談する機会があった。その中で、浜松は歴史的に自動車を中心とした機械産業で地元には多くの優れた中小町工場が沢山あるにもかかわらず、グローバル化や新規事業への意気込みは低いという。理由は長年にわたり培われてきた大手企業との主従関係だ。地場にはSUZUKI, YAMAHAといった大手企業があり、そこの下請けとして長年生活を維持してきた企業の中には、「新たな分野に進出などして、親元の気持ちを損ねないか?」とか「十分な仕事をもらっているのに新しい展開をする余裕があると思われないか?」といった理由で、新規事業への展開やグローバル化を躊躇しているところが沢山あるという。そして大手も「うちが依頼している注文で培われた技術を外に展開してくれるな」という暗黙の圧力をかけているらしい。これでは優れた技術や、グローバル化できる力があっても、忠誠心の為に可能性がなくなっている訳だ。

別の話で、かつてシリコンバレーで活躍し、日本に帰国後、電動モーターサイクルのベンチャー<テラモーターズ>を立ち上げ、インド、バングラデシュを中心に大成功をおさめ、現在は<テラドローン>で新たな市場を切り開いている徳重君。彼は生粋の長州人で、良い意味で、そのDNAがシッカリ刷り込まれており、日本から新たな世界制覇、メードインジャパンの復活を旗印に、あくまで国産電動バイク製造を希求していた。その実現のため世界に冠たる日本のモーターサイクルメーカーを支えている協力工場に同じ市場という考えから電動バイクという新たな市場開拓をオールジャパンで展開すべく、部品供給の依頼をしてまわったのだが、大手傘下のほとんどの企業から「同業の新参会社は相手にできない」「競合になるような電動バイク製造には手を貸せない」、「長年培ってきた、取引先との関係に支障があるといけない」等々の理由で取引を拒否されたそうだ。その後、彼は、新規事業やスタートアップ支援に積極的な台湾のベンダーを開拓。モーター製造をはじめとした多くの企業の協力のもとで、電動モーターサイクルを生産、現在では、インドやバングラディシュでも現地での生産体制を確立し現在に至っている。 もし日本の中小町工場が一丸となって協力し、オールジャパンとしての大成功ができていれば、まさに彼の本望であり、日本にとってもグローバル化を推進するうえで、素晴らしい事例にもなったはずだ。それがなんとも残念でならない。

さて、2016年もそろそろ終わろうとしている。今年も色々な機会に50社近い中小町工場のオーナーの皆さんと会ったり、話を聞いたり、彼らに講演をしてきたが、残念ながら本当に気概を持ってアメリカへの進出を具体化した会社は1社だけだった。勿論、残りの殆どの会社は、上記のようなDNAによって新たな第2創業への展開を躊躇しているとは思わないし、現状を何とかしたいという意思も実は旺盛に違いないだろう。ただ、その奥にある日本人の持つ素晴らしい武士道精神が、無意識のうちにも、自社の展開のみならず新規起業家の展開にも影響している様子が全体からは垣間見れたことも心に残る。

何度も機会あるごとに話しているが、日本の持つ技術や製品はまだまだ無尽蔵にグローバル化のチャンスがある。それを是非とも具体化し実現するためには、あえて、その意識を変える勇気を持つことも必要と考え、本気で臨んでくる企業の皆さんとの対面を2017年は楽しみにしたい。

P.S. 2016年も奔放な駄文にお付き合いいただき有難うございました。皆さんにとって2017年が
素晴らしい1年になる事をお祈りいたします。

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