自分がデジタル庁に期待する事

 少し時間が経ってしまったが、新しい菅政権が発足した。海外にいる自分としては、国内の状況は客観的にしか見ることはできないが、長期にわたり国をけん引してきた安倍政権を継承する政権運営を進めながらも、世界がこれだけ大きく変貌を遂げる中、その動きに注力しながら、よりグローバルな流れを意識した国政を進めてもらえればと期待している。

 そんな中、既に多方面でも話題になっているのが平井大臣率いるデジタル庁の設立だ。これは正直、間違いなく非常に大規模な改革のかじ取りを余儀なくされるのではないかと考える。大げさだが、包括的な見方からすればアナログ文化という旧態依然の慣れ切ったスタイル、そのぬるま湯にどっぷりと浸かった行政やインフラのすべてに改革を加えていく必要があるからだ。少し考えただけでも、デジタル流通経済のインフラ整備、マイナンバー制度の整備拡充。地方都市の膨大なアナログインフラの改革、金融のIT化などなど、挙げていけば本当にキリがない。ここにどう優先順位をつけ、企業や行政、自治体を巻き込みながら改革を断行していくかが、平井大臣を中心としたTEAMの手腕の見せ所だろう。世界的に見ても、このデジタル化が、物理的な人や物の交流が難しくなった今、ITやビッグデータを駆使、そしてAIを活用することによって唯一世界を救済する手段であり必要不可欠でもあるのだ。是非お手並み拝見できればと思うし、本当の意味でこれらの改革を実現できれば、日本は再び新たなアジアの電子立国としての地位を確立できるのではないか?と考えている。
  
 さて、この改革の流れの中で、「ものづくり」に拘わる自分としては、優先順位は低い(か、もしくは全く考えられてもいない??)かもしれないが、現状の下請け体質が未だ主流となっている中小製造業のインフラを含めたIT化にも、デジタルフォーメーションの推進を一挙に推し進め、経済産業省を中心に中小機構やJETRO、民間企業との連携と組織編成によって是非とも着手していただければと思っている。勿論、これらの実現には中小製造業を営む側も、しっかりとした意識と志を持って取り組んでもらう必要があるが、今後間違いなくグローバル展開を推進していくうえで不可欠になる部分だけに、将来的な生き残りを見据えながら、この分野では先陣を切って先を行く中国を中心としたアジア勢に屈しないためにも早期に取り組んでもらえればと思う。また、これによって今まで下請け体質が否めなかった中小製造業自身の新たに強化にもつながると思うのだ。

 あくまで自分の意見だが具体的には大きく3つのカテゴリーが考えられる。

 1.社内の体制においてデジタル化が可能な改革。
 2.ビジネスを進める上で必要なインフラのデジタル化の推奨や
   体系化。
 3.自社だけでは対応できない既存因習の改革(決済制度など)。

まず1.は社内バックオフィスのインフラや体制のデジタル化だ。勿論、この先も取引先との関係から着手できない部分もあるかと思うが、できる事も沢山あるはず。よく言われるハンコを電子署名にする、FAXによる注文書や業務資料の送受信をオンライン化する、社員管理のID化によるタイムカード等旧態依然のインフラの改革等。これらの改善が今後のビジネス展開の上では間違いなくスタンダードになるし強みになっていくだろう。

2.のビジネスインフラだが、例えば社内の工程管理をデジタルによって見える化し、工程の無駄を削減により競争力のある価格を実現する。また客先への見積もり対応も可能事例に基づくAI化によって瞬時に対応できるようにするなど、より競争力のある会社づくりに貢献するために必要なものだ。

3.の既存因習は端的に言ってしまえば手形決済などの中小町工場の財政圧迫要因になっている商習慣の改革だ。納品が終わっても2か月も3か月も現金化できない状況が、つなぎ融資などの不要な借り入れにつながり、社内の新規開発や新しい体制強化や改革に資金を投入できない枷になっていると思えてならない。またこの状況が効果を生まない補助金の温床になっている気がする。
 アメリカでは基本的に数千万の支払いでもNET30(30日以内現金)が主流。これにより中小町工場もスタートアップも資金繰りに余計な時間や気苦労を費やすことは少ない。
 昨今のFINTECHの隆盛により、新しい決済制度や海外送金など大幅に経費や時間を軽減できるサービスが個人だけでなく企業間決済でも沢山生まれている。
是非このようなところを精査し、確実なものを採用し制度化、もしくは推奨してほしい。

以上のような部分だが、自分としてデジタル庁には、このような改革を支援するための:

1.社内デジタルインフラ構築に特化した助成金の支給や専門の相談窓口の設置。
2.競争力をつけるために必要な社内インフラののデジタル化構築を可能にする
 システムや商品などの精査及び採用による制度化、またはアドバイス。
3.大手を中心とした企業にも連携を促し、手形制度などの廃止に向けた法整備
 やデジタル決済インフラの構築。
4.上記を実現するためのアドバイザーなどを有した中小製造業向けのデジタル化支援機関の設立。

等を是非手掛けていただきたい。そして、上記の組織編成には是非、日本全国(特に地方自治体においては地元)の若手IT企業等をフルに採用して、頭の固い行政でなく餅屋は餅屋に任せる感覚で進めてもらえればと思う。

 先に書いた目の前に山積した国の制度としてのインフラの構築や、新しいデジタルビジネスの新規創生等の優先順位から見れば低いかもしれないが、何度もここで訴えてきているように、世界や世の中の動きは待ったなし。そこにコロナ禍の影響で更に加速度がついた感がある状況を考えれば、日本の99%を占める中小企業、そして産業立国の礎を築いてきた中小製造業のデジタル化も是非、同じ尺度で併行して進めてもらえることに期待したい。そのインフラを確立することで、底力のある中小製造業にも、まだまだ世界に打って出る無数のチャンスが生まれてくるはずだと確信している。



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