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次世代TV市場で日本勢は生き残れるのか?

 GOOLE TVとAPPLE TVが、この秋ついに発売される。俗にインターネットTVといわれ、既存の放送局の番組や放送時間とは関係なく、ケーブルTV(これは時間の制約があるが)やインターネット上の映像媒体を自分の好きな時に好みに応じてみることができる。たとえば検索ウィンドウに<石川遼>と入力すれば彼が登場する番組がすべてリストアップされ、その中から好みの番組をセレクトするということが可能になるのだ。そしてその可能性は既存の番組にとどまらず過去の番組や、自分がHDDに録画した映像まで広げることもできるようになるそうだ。アメリカで発売されるGOOGLE TVはかつてSONYだったメキシコのFOXCONNの工場でのOEM生産。サイズは20”~46”までで8月から月産40万台。年内中に200万台というかなり強気の生産量だ。APPLE TVはセットトップBOX型での販売でディスプレイは含まないが価格は何と99ドル。まだGOOGLEのほうは具体的な価格が発表されていないが、生産台数から考えるとAPPLEと同様、その販売方法は携帯電話のようにハードの価格を極力抑えケーブルTV との契約、また有料チャンネルの利用費を考慮して非常に安価に設定される可能性がある。
 既存のTVでは考えられなかったような新しいスタイルのTVは、このように販売方法だけでなく番組製作や、広告などすべてにおいて全く違ったかたちの市場を創出する可能性がある。たとえば制作では、今までのように大手の広告代理店がスポンサーと契約してその費用での番組制作という流れだったものが、今後は制作側が独自にスポンサーをみつけ(もしくは資金調達し)、番組を制作して配信会社に売り込む、といったこともできるし、YOUTUBE系の動画配信で個人クリエイターがどんどんTVという媒体に登場することも可能になる。これは今までのテレビ局を中心としたブロ-ドキャスティングの世界に壊滅的なインパクトを与えていくであろうことは容易に想像できる。そして非常に重要なことは、このようなTV(やそのOS)を開発し、実現させたのが今まで世界を席巻していた日本のTVメーカーではなく、APPLEやGOOGLEといったITメーカーだということだ。簡単に言ってしまえば、この次世代TVは、なんら日本の技術開発には依存するところがないので誰でも作れてしまう、つまり安く生産できるところに製造はすべて流れてしまうということだと思う。確かにGOOGLEの第一弾はSONYブランドで発売されるらしいが、その生産はアメリカにおいてはEOXCONNでのOEM生産なので日本における生産拡大に寄与することはない。前回のBLOGに書いたように雇用促進や国内総生産にはほとんど関係ないといえる。これは考えてみると恐ろしいことだ。ついにTV市場においても日本のアドバンテージがなくなってしまうのである。確か90年代当時、電話、TV、PCのどれがコミュニケーションの主流になるか、ということが問われていたことがある。結論としては、それぞれが個別に進化を続け現在に至っているのだが、PCでは、CPUはインテル、OSはマイクロソフト、そしてメモリーも台湾韓国勢にお株を奪われ、携帯電話に関しては、最高の技術と品質で世界を席巻してもおかしくなかったのに、CDMA規格に追従できずあっけなく敗北、最近ではタブレット型でもAPPLEに簡単に押されてしまい、いいところはまるでなし。そして最後の牙城として何としても頑張ってもらいたかったTVにおいてもついにその時が来てしまったか。。。という誠に残念な思いを隠すことができない。
日本は、この次世代TVの隆盛に対し、どうも最新のウェブ技術言語である「HTML5」に日本が持つ「BML」というテレビとインターネットを連動させる規格を盛り込み、その日本規格を世界の標準にする目論見らしいのだが、その規格に準じたTVの商品化は2~3年後だそうだ。この一大事にも関わらず相変わらず稟議書にたくさんのハンコをもらう作業に時間を費やさなければならない企業のお粗末な状況が容易に想像できてしまう。ちょっと絶望的だ。2年もあれば市場はあっという間にアメリカ勢や韓国、台湾勢の猛攻に席巻されてしまうことが目に見えるようだ。
 このような流れに対して、日本以外の新興TVメーカーのアクションは日本と違って非常に迅速だ。韓国勢は既に強大化したサムスンやLGがそのシェアと開発力を武器にGOOGLE TVのOSを踏襲しながらAPPLICATIONを主流とした新しい形態のTVを年内にも発表予定。また台湾勢はこちらも巨大化したEMSメーカー各社が傘下にあるディスプレイ製造メーカーとの連携を強化し、客先(もしかしたら日本のTVメーカーが中心になるかも…)からの要望に備え一括でTVの生産ができる体制づくりを着々と始めているようだ。
 果たして日本のTVメーカーは、どのような方法でこの流れに立ち向かおうとしているのか??? もはや、「裸眼で3Dが観れる!」ようなTVを発表したところで何のインパクトもないと思うのだが…。
 最近、日本のTV番組は、ほとんどが見たこともないような4流5流のお笑い芸人を集めたクイズ番組や、温泉、グルメ特集がほとんどで、全くと言っていいほど精彩を欠いている感がある。これらに比べたら、見たい番組を見たい時間に、そして無数の中から選ぶことができる次世代のTVが間違いなく非常にはやいスピードで市場に浸透するであろう状況が、容易に想像できてしまうのは私だけだろうか。。。

 

 

 

デザインの重要性を真剣に考えないと!

アメリカに来た当時、昔から大好きだったアメリカのアンティーク、正確に言うとアンティークの定義は100年以上前のものの総称だそうで、時代が無いものはコレクティブルアイテムとかメモラビリアと呼ぶのが正しいのだが、自分は特に40年代のアートデコ(日本ではアールデコ)と50’sメモラビリアの収集に精を出していた。当時はE-BAYなど無いから、本当にフリーマーケットに出でかけたり、アンティークショップを頻繁に訪問したりして足で収集していた。それもまた楽しい思い出となっているが今でも膨大なコレクションがそのままうちには残っている。そんな自分のコレクションの中でも特に意識して集めていたのは40~50年代のトランジスターになる前の真空管のラジオだ。

木材に変わって、プラスチックが開発され自在にデザインが形になった黎明期。もちろんプラスチックの材質は非常に限られたものだったが、さまざまなデザインのラジオたちが、たくさんのメーカーから販売された。RCA、PHILCO, ウェスティングハウス、GE、モトローラなどなどそうそうたる顔ぶれ。当時のアメリカは家電の先端王国。もちろんすべてMADE IN USA,そしてそれらがアメリカの国民の生活を本当に豊かにしていた。そんな時代を髣髴させる家電製品の数々、その中でも特にラジオはメーカーの多さでも群を抜いているが、上の写真を見ていただけるとわかるようにそのデザインの豊富さも一番で、未だにみていて飽きないばかりかコレクターの収集欲を常に刺激し続けている。自分はその愛くるしいというか温かみのある雰囲気も大好きだ。さて、なぜ、ラジオに限ってこんなにたくさんのデザインがあるのだろうか?それは簡単で、ラジオという製品自身が非常に単機能だからだ。電顕(スイッチ)とボリューム、そして周波数を合わせるチューナーがあれば当時のラジオは完成だ。なので、その単機能の商品を販売するためには、単に価格競争にしてしまうのではなく各社独自の個性を出すために外見に非常に注力を注いだ結果が、このように膨大なデザインのらラジオを世に残したのだ。
さて、アップルの隆盛をみると、其処には一貫してデザイン重視のマーケティング戦略がある。若者の心を刺激するシンプルなデザイン、持つだけで優越感を感じられるスタイルの素晴らしさは本当に群を抜いているのは皆さんも感じられているとおりだと思う。こんな戦略を最先端の技術開発と併せて展開しているところもにアップルの圧倒的な強さがあると思うのだが(今回のI-PADも既に先行予約が凄いらしい)、それに比べて日本の家電製品、とくにTVはどうしてあんなに無個性で同じようなデザインなのか実は常々思っていた。家電量販店に並んでるたくさんの薄型TV たち、そのフロントパネルの下についている会社名を隠したら、どのTVがどのメーカー製かを判断できる人は皆無だと思う。もちろん最近はHOT STAMPなどの技法でカラーをグラデーションにしたりしているメーカーもあるが、外見はほとんど単一的だ。
TV自身の機能を考えたとき、それ自身は既に行き着くところまで来ている感がある。つまり画質のよしあしなどは誰が作ってもそれほど変化のないレベルになっていると思う。3Dやスカイプなどの機能追加。またLEDバックライトの採用などのハード的な違いはあるがTVに必要な機能自身に大きな違いはない。もちろん画面という一番重要でその製品の面積のほとんどを占めるものがある事による制約も大きいとは思うのだが、この状態では単に価格だけでTVを買っていく消費者がほとんどになると思う、というか既にそうなっているのが現状だ。残念ながら、このデザインという領域は日本の家電メーカーのもっとも苦手な部分であるとは思うのだが、思うのは今こそ、かつてのラジオのように一社ぐらいは斬新なデザイン、度肝を抜くようなアイデアのTVを作ってみてくれないものか?ということだ。宇宙時代をテーマにした映画によく出てきた(と思う)球形のTVは無理にしても、何か新しい発想でTVのイメージを変えてしまうような会社がなんとか日本のメーカーから出てくれないものか。
そんなことを最近、自分のコレクションを眺めながら、よく考えるようになった。それは、既にLG、SAMSUNGの韓国勢のTVが、この領域でも一歩以上先を走っているということもあり、このデザインの重要性という事を本当に真剣に考えていかないと日本のTVメーカーが今後も継続して存続する手段は無いような気がして仕方がないからだと思う。

ー追記ー
ちょうどこのブログを書き始めた後、シャープの新製品QUATTRONのCMを見た。
スタートレックの名俳優ジョージタケイさんを起用した非常にコミカルなCM.そしてTV自身のデザインも普通のスクェアでは無く、ラウンドエッジシェープの結構斬新なスタイル。そしてシルバーのトリムラインもなかなか良い感じ。と思ったけれど、よ~く見ると
「これってI-phone????」
実はお付き合いのある成型品メーカーにお邪魔した際にシャープの新製品は「I-PHONEに似たデザインだよ。」と聞かされていたのだが、ここまで似てるとは…。I-phoneをここまで意識してしまったら、少しも目の付けどころがシャープじゃないではないか・・・。でもでも、このくらい大胆にデザインを変更してみるという志は素晴らしい!日本の他メーカーもどんどん追従して「TVデザイン競争が勃発!」なんて嬉しいニュースが一日も早くネットや新聞紙上をにぎわしてくれたらいいな~!

 

 

自動車革新の大きな影

10月の中旬は日本に出張。おりしもトーキョーモーターショウが開催されていた。自動車不況のなか、その可憐さもずいぶんおとなしくなってしまったとNEWSが報じていた。今までモーターショウといえば、キャンペーンガールで溢れかえり熱気でムンムン、そして若者たちでごった返していたイメージが強かった(少なくとも自分の年代ぐらいまでは)が、最近では若者の車離れも非常に顕著で、そういった意味でも精彩がずいぶんとかけてしまったのだろう。しかしながら昨年から始まった不況の直撃を受け、前代未聞のGM,クライスラーの倒産という歴史的な大事件もあり、メーカー各社は新しい時代の幕開けとばかりに、次世代のトレンドになるであろう電気自動車を紹介。そしてその経済性とエコロジーに大きく貢献する性能を大々的にPRしている様子がテレビのNEWS番組をにぎわしていた。
 それらの車は、いままでのキャンペーンガールに変わり百花繚乱の感がある。デザイン的にも非常にユニークで見ていて非常に面白い。そしてほとんどのメーカーが同じようにハイブリッドではなく電気自動車をメインに展示を構成していたという点もこれまた一気に加速がついたという感じをうけた。おまけに今までは聞いたこともないような新規参入の多くの会社も電気自動車を発表していたという点が非常に興味深かった。この勢いだと本当に2,3年以内には、まるでレコード店からレコードがあっという間になくなりCDに変わってしまったように、ガソリン自動車も電気自動車に取って代わってしまうのではと思うほどである(ちょっと大げさだけど)。 
 さて、そんなニュースのさなかにも自分はあちこちの取引先訪問などなど、相変わらず慌しい日々を送っていたのだが、大阪でお世話になっている町工場(失礼!)の社長さんが、そんなモーターショウでの電気自動車の話題に触れて、「いやいや、実はこの電気自動車が本格的に日本自動車産業の中心になると、このあたりの工場はほとんどなくなってしまうんですよ」と、深刻な顔をして話はじめた。聞くところによると、この地域では自動車の基幹部品である車軸やそれに使う細かいナット、ボルトといった部品、またそれらをメッキするような工場がかなりたくさんあるとのことなのだが、電気自動車になれば当然駆動系もいままでとはまったく異なる構造になり、非常に簡素化されるため、これらの部品は殆ど不要になってしまうというのだ。言われてなるほどと思った。考えてみれば電気自動車になれば、まずモーター駆動になるので、エンジンがいらない。つまり、今までエンジンの鋳物やピストン、リングなどなど、それに必要な部品はすべて不要になってしまうのだ。当然、先の駆動系も然りで、ほとんどの部品が不要もしくは代わりのものになるわけで、これらを今まで長年にわたり専業で製造していたメーカー、特に中小企業にとっては、かなり深刻な話なのだ。 
 実は同じような話取引先でTOYOTAの最大手強力企業であるA精機の方からもうががった。同社でも現在のスタイルの自動車用に生産している部材の比率は非常に大きく、ある意味深刻な状況は避けられないという。ちなみに1万点近い部品が電気自動車に代わることによって不要になるという…。話を聞いていてちょっとゾッとしてきた。考えてみれば今まで折に触れてこのBLOGにも書いてきた電器産業の海外流出の次に自動車革新に伴う産業構造の変革がもたらす日本の自動車工業を支えてきた多くの企業にものすごい勢いで危機が迫っているのだ。ちょっと大げさかもしれないが、これって非常に現実味をおびていないか? 加えてもう一つ恐ろしいと思ったことは、電気自動車になることによって、自動車の製造プロセス自身が非常に簡素化され、極端な事を言ってしまえば、各部品がキット化し、バッテリーとモーター、これに駆動系とシートやボディを組み合わせれば簡単に車が作れてしまう可能性も非常に高いと思われる。それが証拠に、今回のモーターショウでも新規参入の電気自動車メーカーは確実に増えている。そうなると、これまた今まで日本の独断場だったテレビの生産が、デジタル化した途端にどんどんアジアのEMS生産に変わってしまったように、自動車もまた、このような生産方式が主流になってしまうのではないか? そうなってしまった時、日本は完全にアイデンテティを失い、ものつくり立国としての地位すら消滅してしまうのではないか?ということを決行背筋に冷たいものを感じながら考えてしまったのは、繰り返すようだが、やはり電気、特に家電産業の急激な流れを目の当たりにしてきた事に大きく関係していると思う。
 家で充電ができ、排気ガスを発生せず、経済的にも非常に優れた電気自動車。そして各家庭にソーラーを主体とし充電設備が整えば、本当の意味でエコロジーな環境と生活を送ることが可能になる近未来がすぐそばまできている。それは誰もが理想とする世界ではあるが、そのために日本の礎である多くの中小企業があっという間に姿を消し、日本の経済自体が理想の世界を迎える前に消滅してしまうという大きな影となっていることに、いまどのくらいの人が危機感をもっているのだろうか・・・・。

「ものつくり立国」台湾の実現

SONYがまたしてもしでかしてくれた。昨年からアメリカとメキシコの2大工場を閉鎖し、この2拠点の製造を集約すると思われた最後に残ったメキシコのティファナ工場を、なんと台湾のFOXCONNへ売却。これからは設計を含めSONYのTVは、ほとんどが先のODM先であるWINSTRONと、このFOXCONNの台湾の製造メーカーで生産されSONYブランドで販売されることになった。先に同社の凋落ぶりを、このブログでも書いたのだが利益追求のために、ここまで徹底した政策を取るあたり極端かもしれないがSONYは既に日本の企業としてのアイデンテティを放棄してしまったようだ。自分としては、ほとんど最近では取引がなかったのだが、同工場ができた1988年に、この工場の品質管理をサポートする製品のメーカーの駐在員として渡米してきた経緯もあり、本当に寂しい限りである。
 ところでFOXCONNといえば、80年代までは一介の台湾のコネクターメーカーだったのではないか?それが90年代初頭にPCのOEM生産を始めてからは、めきめきと頭角を表わし、かつ強大化して、今は世界最大のOEMメーカーとなり、SONYの工場をもいとも簡単に買収するだけの力を本当にわずかな期間で作り上げてしまった。そのパワーとダイニミックさは凄い。勢いが違う。液晶TVがデジタル機器の一つとして生産方法も単純化してしまったことにより、キットで簡単に組み立てられるようになったPCと同様、誰もが生産可能になったという背景が勿論大きく関係していると思われるのだが、それにしても単に生産にとどまらず設計や開発も含めて今後は対応するところに実は凄く重要なポイントがあるように思えてならない。台湾は自身の経済力と国力を強化するために、90年代には多くの学生をアメリカやヨーロッパに送り出し、戻ってきた人々に起業を奨励、新竹にシリコンバレーを彷彿させる巨大な先端テクノロジーパークを作り上げ、半導体やコンピュータ、そして通信を中心としたエレクトロニクス産業の基盤を作り上げた。それが昨今の大幅なデジタル化に呼応して見事に開花。特にPCの分野ではその製造拠点として世界のPCのほとんどを作り上げていると言っても過言ではあるまい。そんな台湾が同じデジタル製品の製造ということで今、もっとも勢いづいているのが液晶TVだ。すでにVISIOやEIZOといったオリジナルの台湾ブランドだけではなく、その確立された製造技術により、今回のSONYはもとより、既に激しい価格競争にさらされ瀕死の日系TVメーカーの生産も多数手がけるようになっているようだ。業績の不振が深刻なHITACHIは、やはり北米向けの液晶TV の生産を同じくメキシコで工場を展開する台湾のTOP VICTORY社へ。そしてシェア的には気を吐いているTOSHIBAも生産の一部を同じ台湾のCOMPAL社へ委託。いづれもODMでの生産となるらしい。
 最近、ACERをはじめとした台湾のPCメーカーは今までPCの製造で培ってきた生産技術により、昨今のトレンドであるネットブックスタイルのPC生産で鼻息が荒い。日本の家電量販店でもこの手のPCでは圧倒的に台湾ブランドが幅を利かせている。この先は日本にもブランド名はかろうじて日本のメーカーがつくものの台湾のメーカーで生産されたTVが続々と輸入され販売されるようになるだろう事は疑いもなさそうだ。そして台湾のみならず、既に40%近い液晶TVの世界シェアをもつのSAMSUNG、業界2位のLGといった韓国勢も怒涛のように日本に押し寄せてくるかもしれない。
 いままで日本メーカーのお手芸家電製品として世界を席巻し、半導体と並び「ものつくり立国日本」の象徴として誰もが疑わなかったTVの製造スタイルが大きく変わり始めている。そして日本メーカーのTVのODM(OEM)生産を次々にこなして、設計だけでなく生産技術、品質管理といったすべてのノウハウを吸収、確立して新たな「ものつくり立国」として市場に君臨するのは、かつて日本が歯牙にもかけていなかった近隣国の台湾になる日が間もなく実現しそうだ。

次世代産業のトレンドもシリコンバレーから!?

 最近そんな胎動が聞こえてき始めた気がする。ここシリコンバレーはご存じのように70年代の半導体に始まり、その後80年代にはPCやオフコン(そういえば今日IBMによるSUN買収の話が流れていた)、そして90年代にはITとそれぞれの時代のトレンドリーダーとして君臨している地域で流れ的には次世代トレンドも、またこの地からというのは不思議ではない話しだ。ただ今回の不況においては、その兆候というものが全く見えないままに2007年の暮れに始まったサブプライム問題に端を発してあれよあれよという間に半導体を中心としたシリコンバレーの基幹産業も深刻な事態に陥ってしまい今日に至っている。シリコンバレーの中心ともいえるサンタクララにあるインテル本社のまわりにあれだけ空き事務所の看板が乱立しているのも、その不況の深刻さを物語っているような感じだ。今回の不況の始まりを一昨年の12月とすればすでに16か月を経過し、アメリカの歴史の中でも最も長い不況になりつつある。
 しかしながら、オバマ大統領による「グリーンエンジニアリング」のよびかけに呼応するかのように、今まで少しづつ芽を吹いていたエコ関連の様々なビジネスが、この地で着実に動き始めていることを最近訪問した韓国系の金属加工工場で目の当たりにした。日本で言ったら本当に町工場のような加工メーカーや板金メーカーが実はこの地には数百社あり、先端産業の下支えになっていることは折にふれて書いているが、この知り合いの会社も元々は半導体製造装置メーカーやHDメーカーを相手に商売をしていて、昨年は会社の存続も危ぶまれるぐらいどん底の状態だったのに、年末あたりからぽつぽつとソーラー関連のスタートアップからの受注が増え始め、現在はフル稼働の状態だという。聞けば既に40社以上のソーラー関連会社がここにはあるとの事。それが、新たに国からの援助を受けることができること、そして何より、不況のあおりを受け、大手メーカーをレイオフされた優秀な人材をリーズナブルに採用できる点など、多くのアドバンテージを持って一挙に拡大する機運が高まっている雰囲気が強く感じられた。そういえば、かつてはこの展示会から産業のコメである半導体のトレンドが始まるといわれ、世界中から多くの人々を集めていたセミコンウェスト。昨年は本来の半導体会場は閑散としているにも関わらず、併設していたソーラー関連の会場はあふれんばかりの人で賑わっていたという話を思い出した。すでに当時から、その兆候は始まっていたのだろう。今年はSHOW全体の割合をソーラー関連にさらにウェイトをおくとの話も出ているらしい。
 さて、ソーラーは氷山の一角であって、すでにそれ以外のエコ関連の数々のスタートアップも、間違いなくこの地での活動を拡大しつつあると思われる。正確にはわからないが少なくとも51%以上の資本金をアメリカ企業(もしくは個人)がもつ、この手の産業関連の会社を設立すれば、優先的に公的資金の援助を受ける可能性も十分にあるわけで、既にそのあたりに着目した目ざとい韓国、台湾、中国系の企業の設立も増えているらしい。 
 そんな状況に加え、私自身が何より、この地がエコ関連の次世代産業のトレンドリーダーになると思う理由は、その風土にある。ご存じの通り、シリコンバレーの突端にあるサンフランシスコは、60年代後半にヒッピー文化の聖地として世界中から若者たちを引き寄せた。ヒッピーの主張、概念は、反体制、反社会、そして自然回帰だ。自然回帰、まさにエコに通じるこの文化に洗礼を受けた多くの若者がこの地には多くとどまって、ある意味シリコンバレーの隆盛の一端をになってきたような気もする。APPLEの創始者であるスティーブジョブスも極論すれば、この流れに通じる体制にとらわれない独自の発想と行動で時代を席捲する商品を作り上げてきたと思う。
 そして、ちょうど団塊の世代を迎えたこの世代の人々が、シリコンバレーの中枢をになうVCや組織の中には多数存在し、その子息たちもこの地の第一線で活躍中だ。そんな環境だからエコ(グリーンテクノロジー)に対しては本能的に順応でき、積極的に取り組むことにも何ら抵抗はないと思う。先ごろ(昨日?)プラスチックの買い物袋の使用禁止を市条例で決定したパロアルト(スタンフォード大学があるシリコンバレーでは有名な市)の決議は、この典型的な例であると思うし、こんなに多くのプリウスをシリコンバレーで見かけるのは単に燃費がいいからという理由だけではない気もする。
 そんなわけで刷り込みが既に十分されている人々がまだ多く活躍しているこの地は(もちろん大多数はそうでない人々だとは思うが)、エコを中心とした次世代産業のトレンドリーダーになる事は間違いないと思うのだ。

電池とモーター

 自動車業界の不況は本当に深刻だ。電装品を自動車メーカーに納品している協力会社の多くが一時帰休や週休3日(会社によっては4日)といったシフトを引いたり、本格的にワークシェアリングを実施したりしている。日本の自動車メーカーを中心に看板方式が普通になっている関係で製品を作り込んでおくことができないので、このような極端な状況になっているのだと思う。
 さて、あまりにも体たらくなGMやクライスラーも公的資金の援助をうけることで、もう「マーケットが大型トラックを欲しがってたから」という訳のわからない理由で燃費の悪い自動車を作り続けることができなくなり、公約にも明記されているようなハイブリッド、電気自動車の生産という部分にも今後は力を注いでいかなければならないのだが、ご存知の通り、この分野では群を抜いて製品を市場に送り出しているTOYOTAやHONDAの生産を支えている日本の電装品メーカー各社は、そういう意味では、既存の顧客以外に、新規でビッグスリーの新規事業のインフラをつかさどる可能性が出てきた点、今後は明るい未来が見えてきそうな期待は大きいと思う。
 ところで、このような次世代の自動車をつかさどる技術は集約すると、その基幹部品となる電池とモーターになるのではないかと思われる。ご存知のように電池とモーターは日本が圧倒的なシェアを握っている分野だ。電池でいえば松下やSONY、そして大御所であるSANYO、モーターでいえばオリエンタル等々、日本の独断場であるといっても決して過言ではないだろう。ただ、少しばかり危惧する点は、このような技術が将来的にも日本の独断場でありえることができるかと言うことだ。かつては液晶もメモリーも、すべて日本の独断場だった。これが瞬く間に韓国や台湾、はたまた中国にイニシアティブを奪われていった。将来的には益々の需要がみこまれる電池とモーター。これが同じように他国に主導権を握られてしまう事だけはなんとしても避けてもらいたい気がする。特に日本の真骨頂である自動車業界においてはなおさらの事に感じてしまう。そのために自分ができることがないかと考えてしまうのだが、残念ながら今はこの先の状況と変化を見守る以外に術はないのかも。。。とにかくなんとしても電池とモーターのメーカーはイニシアティブを死守してもらいたいものだ。

新型iPhoneの発表に見るアップルの脅威!

アップルのWWDC(ワールドワイドデベロッパーズカンファレンス)で、やはり誰もが予想していた事だが新型iPhoneが発表された。3G機能搭載。価格は$199で世界同時発売だという。もちろん日本でも発売されるわけだ。このiPhoneが日本の携帯市場でどのような評価を受け、数々の競合他社を相手に健闘していくかは、非常に興味のあるところだ。なんせ日本の独断場でもある(というか当然なんだけど)、携帯市場に殴り込みをかけるわけだから…。ひとつ言えていることは、以前最初のiPhone発売の時にも、このBLOGに書いたのだが機能的に見れば日本にある携帯電話の方が数倍充実しているように思われる。当然日本語の機能はあるものの、あれだけメイルをこまめに使う日本人にとって、そのあたりの機能が充実しているかどうかは非常に疑問だし、すべてグラフィック管理で表示される本体のバッテリーの持ち時間も切磋琢磨され続けている日本の形態とは違って、格段に劣るかもしれない(そういえばアメリカでは携帯の簡易充電器見たことないなあ)。しかし、そのデメリットをもカバーしてしまうほどの機能は十分にあるようにも思える。まずグラフィックの美しさ、そしてファッション性、くわえて自分がまるで魔法使いにでもなったように錯覚してしまうほど、指先の動きでコントロールできる操作性などマニアックなユーザー、ファッションにうるさい若者、そしてハイセンスな女性には間違いなく浸透してく可能性がある。加えてエンジニアを虜にして離さないアップルならではの機能が満載されていることも見逃せない。私の友人のスーパークリエイターが以前「iphoneはガっツリ来てますよ!」と興奮して話してくれたのは、ほんの些細な機能なのだがイヤレスで話ができるBLUETOOTHのヘッドセットがOPTIONであり、そのヘッドセットは通常個々に充電、もしくは電池を搭載しなければならないんだけど、そのバッテリーの残量が、きちんとiPhoneの画面に表示されるのだそうだ(純正のもののみ)。自分もこの種のヘッドセットを使用していて、肝心な時に電池が切れたりして困ったこともあったので、それはきっと便利だろうと思ったのだが、こんなちょっとした機能がアップルマニアにとってはたまらないらしい。そして、このような充実した機能やデザインが一般にも理解されるようになったとき、それはアップルの脅威として我々の前に登場するのだろう。まるでI-Podが瞬く間に日本メーカーの牙城であったポータブル音楽機器市場を席捲してしまったように。。。
このiphoneの日本での発売がそうならないことを日本人としては切に願いたいところであるが、昨日のコンファレンスで、総帥スティーブジョブスがこの新型iphoneを満員の会場で発表したとたん、会場を揺るがすような大歓声が上がったという話を友人から聞いた時、日本メーカーのまさに独断場であるはずの家電商品で発売される新商品で、これだけの期待で迎えられるものが最近あるのかと考えると、残念ながらその敗北が垣間見えたような気がしてしまった。。。

雑誌の記事に

昨年の話になるが、御世話になっている民営化が近いN銀行の N部長を交えての地域活性化に関する談話の内容が、私の話がメインで雑誌の記事になったと同席していたK出版の方から連絡を受けた。とはいうものの、この談話は昨年、それも確か夏ごろだったような記憶もあり、もしかしたら年が明けて相変わらずドッグイヤーで猛進しているシリコンバレーの今のトレンドとはちょっとずれてしまっているかもしれないけど掲載の承諾をいただいたし特に後半の日本に関するくだり以降は自分が昔から感じ、繰り返し機会あるごとに話している事なので、ちょっとご紹介を!

地域経営と地域資源(10)
-シリコンバレーと日本を行き来する企業家のモノローグ-
地域に「育てる」風土と文化を  
 

はじめに-編集部より

  遠藤吉紀さんは、アメリカ・シリコンバレーの日本人起業家である。もともとは日本の中堅メーカーに勤務し、80年代後半にシリコンバレーでの現地法人立上げのため渡米された。その後、日本の親企業が倒産。しかし、現地法人の顧客から「アメリカでの取引は続けて欲しい」との要望もあり、アメリカでの自らの起業を決意し、99年ビーンズインターナショナルを設立、現在に至っている。

 創業以来、日本の、とりわけ中小メーカーの優れた技術や製品をアメリカ企業・市場へ橋渡しするというユニークなビジネスを展開されている。そのため、アメリカをはじめとした海外電子部品市場の情報に精通する一方、2ヵ月に1度は“商品開拓”のため日本を訪れている。
 そのような「複眼思考」の遠藤さんの目に今、アメリカ、シリコンバレーそして日本はどのように映っているのか。伺った話から日本の「地域力」鍛錬のためのヒントが見えてくる。

最近のアメリカ市場トレンド

 最近のアメリカ、といっても広いので、私が居住するカリフォルニアを中心に話せば、総じてエネルギー、環境そして健康に対しての人々の関心が高まり、マーケティングもそれらの分野で、年齢や世代に応じたターゲットの絞り込みが行われている。

 特に健康に関しては、もともとカリフォルニアにはオーガニック文化とも呼ぶべきものがあり、モントレーベイというエリアを中心に、オーガニック-有機栽培農家が数多く存在し、生産にビジネスにと熱が入っている。ただし、このオーガニックブームは、突然現れたものではなく、かつてサンフランシスコを中心に若者を魅了したヒッピー文化のころに端を発し、以前から潜在的にあった市場がここに来て顕在化しているのである。

 もともとアメリカは国民全体に「健康管理」を意識する文化が根強く存在している。たとえばフィットネスやスポーツジムなどが日本に比べて活況を呈しているのも、このような文化的背景によるところが大きい。また、ご承知の通り、アメリカには国家が管理する健康保険制度は存在せず、また、企業単位でも日本では当然の企業負担による従業員の健康診断サービスも存在しない。健康は自分で管理するよりほかなく、しかも高額医療費が当たり前である。健康意識の高さは、このような社会事情の裏返しという見方もできるだろう。
 それにしても、最近のオーガニック食品への関心の高まり、それに伴う市場の活性は健康管理意識からだけでは捉えきれないものであり、その意味で、新たなマーケティング分野が育ってきていると言うことができると受け止めている。

オーガニックはシリコンバレーも

 このオーガニック食品への関心の高まりは、シリコンバレーにおいても同様である。たとえば、今や世界に冠たる検索エンジン企業であるグーグルでは、社内の社員向けレストランで提供される食材はほとんどオーガニック系素材を使用しており、しかもそれら食材・素材はシリコンバレー半径100マイル以内で生産されるものしか使わないという徹底ぶりとなっている。また、料理を提供するレストランやカフェの設置にも心が配られており、キャンパス内には施設が18ヵ所も用意されているのである。
 このようなグーグルの行動様式には、アメリカ企業の風土としてもともと存在する、「社員へのふるまい」意識が作用していることも事実である。そのようなふるまいの文化に、オーガニックや環境・健康といった市場トレンド、消費トレンドを絡み合わせたサービスを提供することで、従業員のモチベーションを上手に高めているという点は、特徴ある企業経営のあり方ということもできるだろう。また、日本の企業にとっても、参考になる点を含んでいるようにも思える。

シリコンバレーの現況

 ところで、シリコンバレーの経済・産業状況は、2000年のITバブル崩壊以降、目立って新規の会社が出てきているという実感はないが、かといって企業数は減っていないし、相変わらず「おもしろいこと」をやっている企業は生まれ続けている。たとえば、脳波や心拍数を把握して脳疾患や心疾患の予防に働きかける半導体チップを開発している会社がある。それらに共通するのは、技術的には半導体とバイオ、分野としてはヘルスケアである。つまり、医療・健康とITの融合を試みている分野が元気なのである。

 これに対して、ベンチャーキャピタル(VC)は「事業化に失敗したら投資に見合った分を返せ」といった風潮も見られはするが、それは「金儲け」を主目的としたVCのことであり、潜在能力を持った人や技術を育てるためにする「育てる投資」は依然として続けられている。そして、それらの出資元はアラブ、中国、ロシア、ブラジルなど世界の資金が集まる国やエリアである。
シリコンバレーは「カネのあるところからカネを集める」という図式が相変わらず活発であり、この図式が、以前留学していた、あるいは親類縁者がいるなどシリコンバレーとの地縁・人縁を通じた「人の交流」に基づく「カネの循環」である点も相変わらずなのである。

シリコンバレーの日本人・日系企業は

 ひるがえって現地の日本人・日系企業の場合は、「人の交流」に発したカネの流れはほとんどない。グローバル・キャタリスト・パートナーズを経営する大澤弘治氏のような企業家的バックグラウンドを持つ日本人投資家も若干は存在するが、彼らがパートナーとするのは、当地で確固たる地位を築いているインド人など「人の交流」で「生きたカネの流れを生む」ことを知っている人々である。
 これら少数を除けば、日系VCはいわば大企業系サラリーマンであり、行う投資もリスク