またまた最近、サボり気味のブログ(申し訳ありません…)。今年に入ってまだ1回しか投稿していない。と思って何と気が付いたらもう6月…。今年ももう半分が終わろうとしている。加えて最近、歳のせい(?)もあり、その速さに加速がついている感がある…T_T 。自分の思いの記録を残す意味でも、これからはもう少しマメにアップするよう努力します^^。
さて、早くも1か月以上前になったが、4月に名古屋と大阪で、オンラインでの講演会をする機会を得た。名古屋の方は自動車関連企業がメインで運営するインキュベーション施設の管理団体での講演で、TOYOTAを始め大手Tier1からの参加者も多く150人以上が集まり、なかなかの盛会。大阪は中小機構からの依頼で、こちらは中小町工場からの参加者が中心で人数的には50人程度だったがラウンドテーブル的な雰囲気もあって、趣きが異なってそれなりに自分も楽しむ事ができ、それぞれオンラインながらも「日本の状況を何とかしていかないと!」という自分の主張は伝わったと思っている。
そんな講演会のあとで、皆さんから感想を聞く機会や、また個人的に連絡を頂くこともあるのだが、その中で参加された会社のトップや上層部の方から聞いて多いな~と感じるのは「遠藤さんのお話は凄く良かった。自分たちも真剣に将来を考えていかなければいけないと思いました。で、取りあえず何をすればよいのでしょうか?」という類のものだ…。
いやいや、そこを考えなければいけないのは皆さんですよ!
自分の話は提言であって、そこから先は自分たちの会社や組織において、海外の状況や市場の動きを注視しながら、今の自分たちの技術や製品、そして組織としての活動など、これらをどうマーケットインしていくかを、第3者ではなく自らが考えていかなければ、何の意味もないばかりか成功もないと思う。特に中小町工場の場合、勿論、全てとは言わないが、残念ながら今まで”下請け”という黙っていても仕事が下りてくる環境が長かったせいか、特にマーケットインに関しては「自分たちで考える」という部分が去勢されているかもしれない…。彼らの場合には組織自身が小さいこともあり、言い方を変えれば、会社の長がこのような危機感をもち、そこに対して自分たちがどの様に動けるのか?会社の強みは何処か?製作しているものは世界に通用する可能性があるか?そして、そこをリサーチしていく志があれば、大企業と異なり組織が小さい分、直ぐに行動に移せるのではないか?といつも考える。要はそのようなトップの意思決定をスピード感をもって実行できるのだ。ここは是非、最初に意識してもらいたい。
ただ加えて言えば、そのトップの判断が間違いなく正しい方向、将来性のある方向へつながるものでなければならない。前回のブログ「新たなイノベーションへ舵をきれるか?」の中でも触れたが、特に中小製造業の場合、現状の業績を100%維持することが至上であり、将来的なマーケティングやR&Dに予算や時間を費やすことを良しとしないところにトップがフォーカスしてしまったら、残念ながら結局のところ何のイノベーションも起こらない…。前回は山形県の町工場の話を例に挙げたが、今回も同じような話を聞いた。埼玉県にある、PCB(回路基板)の製造メーカー。同社は以前よりシリコンバレーに拠点をもち、その多層板の製造技術を活かして、容量の増大が顕著な通信機器メーカー向けに製品を供給し拡大してきた。ただこの業界も中国を中心としたアジア勢の追い上げ厳しくビジネスも減退になりつつある中、起死回生をかけてアメリカでは新たに盛りあがっているスペース産業に着目。通信業界での実績もあるので引き合いもあり、その部分で本腰を入れていこうと意気込んでいたのだが、折しも日本の本社は昨今の半導体不足による半導体製造装置の需要急拡大で、其の特需で全く余裕のない状態。半導体設備という少量多品種で利益率も高い製品製造に100%フォーカスしていて、こちらの拠点からの新規案件には見向きもしてくれないそうだ…。確かに半導体製造設備の需要は、この先も間違いなくあるだろう。しかしながら、国を挙げて潤沢な予算で挑んでくる中国勢をはじめとした列強の存在が大きくなることは目に見えている(2022年度の中国の半導体設備投資は10兆円、日本はたったの6000億円T_T )。スペース産業界であれば未だ未知の分野でもあり、うまくスペックインできればオンリーワンになる可能性の方が遙かに高く、将来もあると思うのだが、トップの判断が現状の顧客対応にフォーカスしろという事になってしまえばそれまでだ。本当にもったいない話だと思う。
加えて思うことは、そのトップの判断の重要性もさることながら、そのトップがしっかり責任を取るという事も重要であるという事。トップの判断は往々にして独断とみなされることもあり、会社の存続や従業員の生業確保を憂慮しての責任回避から、トップダウンという大号令にトップ自らが躊躇してしまう例もあるような気がする…。日本は鎌倉時代に生まれた合議制のDNAが未だに組織運営に刷り込まれている感があり、吐出したアクションには蓋をされてしまう傾向に加え、非効率的な年功序列が未だに中心となった状況なので、社内の改善も含め大号令をかけにくい状況があるように思える。
しかし、それと異なるのがこちらの企業運営だ。APPLE, TESLAをはじめ、躍進している企業は全てトップの大号令で組織が大きく動く。ちょうど今週(6月3日現在)TESLAのイーロンマスクが、全従業員に関し「これからはリモートではなく週40時間を出社して働け!出社しない従業員は解雇だ!」とツィートしたことがニュースになっていた。勿論コロナ禍でリモートワークが中心になった従業員も急に環境を変えることができるかわからないが、ここで、多くの退職者が出たとしてもきっとイーロンはその責任も全て自分で取るつもりなのだろう。こういう、TOPの姿勢が逆にカリスマ性をもって従業員の共感を得る場合もあり、その姿勢が新たなアクションに迅速に向かう組織を構築しているのだと思う。
そんなイーロンのトップダウンアクションの例として聞いた別のエピソードを紹介しよう。
北米でEV用電池を生産するGIGAファクトリー。日本のP社との共同操業でTESLA向けの電池を生産している。この工場で、なかなかTESLAからの要求目標を達成できないP社の製造プロセスについて、イーロンが自らP社との直接ミーティングを企画、その席上で現場の製造責任者たちを前に「これから、皆さんが不可能だとしている現場の稼働率を、要求目標である10%上げて動かしてもらいたい。それが皆さんの生産指標を越える超過稼動であれば、どこかに必ず問題が発生するはずだ。そこがネックになっているので、その部分を徹底的に改善すれば目標達成は可能だろう。そこで、その問題が発生した箇所、もしくは設備の動画を撮ってレポートしてほしい。その部分の修繕や改善、費用負担も含め、全て自分が責任を持つ!」と確言。この指示により実際に稼働率を10%上げたところ、何と目標はクリア。しかもどの設備にも故障やシステムのオーバーフローも発生しなかったそうだ。
日系製造業の場合、その多くが稼働率や可(べき)動率という生産指標によって、生産の効率化を管理しているが、そのコンセプトが時に、その向上に水を差している事を、彼は責任を取るという事を前提としたトップダウンの指示で明確化できたわけだ。
トップダウンのメリットは圧倒的なスピードだ。トップの号令で全員がその動きに同調する。ただ上記のようにその判断が見識に優れておらず誤っていれば失敗する。言い換えればもろ刃の剣かも知れない。しかしながら圧倒的に昨今の世の中の流れ、マーケットの動きの中で重要なのはスピードだ。このスピード感を意識し、更に間違わない見識を身に着けることがトップに求められる必要条件になるだろう。そして失敗に関しては責任を取る器量の深さで臨めば、社内の改革だけでなく新たな市場に向けての営業展開等々、この先に向けてできることは十分にあるはずだ。今回も相変わらず内容にまとまりが乏しいが(^^;;)、是非トップの皆さんには熟考していただきたい。