EV≒黒船と国内勢力の台頭に勝てるか?

 アメリカ、カリフォルニアではワクチン接種率が70%に迫り、6月15日には、1年3か月ぶりに経済の再開を宣言、飲食店や遊興施設に対する規制のほとんどが解除された。CA州の知事は、今日のニュースでワクチンパスポートをスマホ上で利用できるアプリの採用を決定。特に通常の産業に加え、主要産業の一つでもある観光業にも一挙にテコ入れする動きだ。
 そして、コロナ禍だったにもかかわらず、シリコンバレーの動きは相変わらず堅調。IT企業のみならず、特に動きが顕著だったのは、EV(電気自動車)を中心とした次世代自動車産業関連企業だろう。今回は、前回のブログでも触れた内容の続編になるが、特に中国を中心とした新興EVメーカーの台頭から見える、この先の日本の存亡について考えてみた。

 現在のアメリカでのEV市場状況と言えば、王者テスラに加え国産新興EVメーカーであるLUCIDやRIVIANなどが、相次いで市場へのEV投入を今年本格的に行う予定。またGENERAL MOTORSやFORDも今までの製造インフラを大幅に変革し、大胆なEVシフトへの方向性を明確にしている。これら米国勢に呼応するかのように、既に2030年には全車種のEV化を明確にしているVOLVOをはじめとしたヨーロッパ勢の動きにも目が離せないが、それより脅威なのは中国EVメーカーの動きだ。既にアメリカで上場しているNIOやBYDと並び、中国国内で急成長を遂げているLi AUTOやX Pengといった新興勢力が昨年アメリカで株式を公開。またEVメーカーでは著名なBYTONも、最近のNEWSでは2021年中にアメリカでの株式公開を検討しているらしい。彼らは、今まで自動運転技術やバッテリー開発のR&Dを中心としたアクションを中心にシリコンバレーで活動をしていたイメージが強かったが、本国(中国)での急成長を武器に、テスラの牙城を切り崩すべく自社のEVで、アメリカ市場に攻勢をかける動きを鮮明にしているのが現状だ。
 このような状況から、今年は今まで見たことのないような多様なEVがアメリカの公道にお目見えする事だろう。

 果たして日本勢はどうだろうか?残念ながら日本の自動車メーカーのEVに関するNEWSはこちらで耳にしたことがない。自分の認識している限りではあるが、新車に関してもNISSANのLEAF以外にはお目にかかったこともなければ聞いた事もない(三菱のI-MIEVも生産終了らしいし…)。ちなみにアメリカで市場を拡大している韓国勢は、HYUNDAIでIONIQとNKONAの2車種を既に販売(何とNEXOという水素自動車も販売している)、KIAモーターは販売中のNIROに加え、年内にはラグジュアリーEVセダンのEV6も投入予定だ。勿論、TOYOTAやHONDAといった大手は、アメリカ国内で既存の市場を確保しているという安心感と絶対大丈夫という自負があるかもしれないが、残念ながら次世代のAUTOMOTIVE市場においては精彩を欠く以前に「本当に大丈夫なのだろうか?」という不安の方が大きく募ってしまう…。

 そして、このような状況は、今まで自動車産業で世界を席巻していた日本メーカーの牙城である日本国内市場自身にも、間違いなく襲ってくるのではないか?という思いが、最近いくつかのNEWSを見て一層強くなった。 
 自分の勝手な解釈で、かつ自身が司馬遼太郎先生の大ファンで、特に幕末ものに、かなり傾倒していた影響も多分にあって本当に恐縮なのだが、実は今の自動車産業の状況は、幕末の動乱期と同じように感じてしまっている。

まずは中国を中心とした列強のEVメーカーの存在だ。
 深圳を拠点とし、バスやタクシーなど公共EVを得意とするBYDは、2005年には日本に拠点を開設し、その後の自国内での実績を元に、日本では、小型から大型までのEVバスや電動フォークリフトといった商品で数年前から日野や三菱ふそう、いすゞといったバスメーカーの牙城に環境保全や脱炭素化への貢献を武器に一気に切り込みをかけている。特に首都圏ではなく、地方の観光バス会社や、過疎化や環境インフラの整備に時間がかかりそうな行政をターゲットとした営業戦略が鮮明で、企業のしたたかさがうかがえる。
 中国の大手BYTONへは既に丸紅が資本提携を行い、将来的な日本における市場参入が視野に入っている。急速に動きを加速しているXPengやLi AUTOといった新興EVメーカーが、この先、単独、もしくはBYTONのように巨大な国内インフラを持つ総合商社、またはEVの定義を家電と考える大手家電量販店との提携で販売をスタートするかもしれない。加えて中国勢のみならず、既に販売を開始しているTESLAをはじめとしたアメリカ、ヨーロッパ勢も将来的には怒涛の如く日本市場に参入してくるだろう(その頃の日本が魅力ある市場であるかは分からないが…)。
 勿論、かつて参入を試みたHUNDAIを短期間で撤退に追い込んだ日本メーカーの牙城である我が国の市場に、そう簡単には参入できるかは分からないが、この状況はまるで

 ”EV”という”黒船”による列強の攻勢が始まりつつあるように感じられる。

それだけではない。
 この4月に佐川急便が自社の保有する配送用トラック7,200台ののEV化を発表したが、その提携(発注)先は何と既存の自動車メーカーではなく、中国に提携製造拠点をもつの日本の新興EVメーカー”ASF”だ。佐川急便は、日本の安全基準の確保や走行実証試験などをクリアできれば2022件から正式に導入を予定。ここで突破口が開けば、このメーカーに限らず、同じような国内のファブレスEVメーカーの出現により、他の運送関連企業への普及のみならず、将来的には独自のBtoC向けEVの販売を目論む企業も増大する可能性がある。既に日系メーカーでTHAIでの先行販売によって頭角を現している小型EVメーカーFOMMのような新興勢力の存在が、この先は、かなりクローズアップされてくるであろう。これは幕末で言えば:

 薩長土佐のような国内勢力の台頭のようも思える。

幕末の日本、当初は尊王攘夷を主張してた彼らは、蛤御門の変以降、矛先を一挙に幕府に変え、あれだけ毛嫌いしていた諸外国と手を組んで、倒幕に舵を切った。同じように今の自動車業界も、国内の新興勢力の動きが益々加速していくと思えてならない。
 自身の経験で少し話は逸れるが、1990年代に深くかかわっていた携帯市場でも当時の日本はI-MODEを抑えたNTTの独断場で、その製造を担っていたD,N,S,F,Pなどの頭文字を付けた大手メーカーの携帯電話が市場を席捲。各社とも空前の好景気だった。それが通信方式のCDMAへの変更により、ビジネスがサブスクリプションモデル主体になった途端、SOFTBANKやKDDIと言った新興キャリアの出現で、ハードの捉え方が、ただの端末に変わり、コストの安いHTCやXIAOMI, SAMSUNG、そして多彩な機能で充実のAPPLEが中心となって、そのほとんどが消えてなくなってしまった。
 
 そんな携帯電話の製造分野で生きてきた自分の経験(前記事のTV産業でも同じ経験をした)から、同じ状況が自動車産業にも重なってしまうのだ。

このような状況に既存の日本メーカー(幕末で言えば江戸幕府と譜代大名諸藩?)は、この先どう対峙し、どう戦っていくのか? そして打ち勝っていく事ができるのか?
 国内の自動車産業は製造だけで200万人近いという膨大なインフラの関連雇用の維持を考えれば、勿論一筋縄ではいかないし、前回も書いたが、先ずはハイブリッド化からプラグインという動きにならざるを得ないだろう。また、国内の中小協力製造工場に至っては、車関連需要の落ち込みを補うように世界的な半導体不足による製造設備の特需で、現状は、そんな将来のことまで考える余裕や必要はないと思うかも知れない。
 ただ、ここでは既に、しつこく訴えているので、敢えてキツくは言わないが、手遅れになる前に、世界の動きを見ながら、真剣に出来ることを考える。この気持ちを決して怠ってはいけないと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です