中国を侮るな!

今年もあっという間に12月になってしまった。まだまだコロナ禍の中で、各国の工業生産や物流における影響はかなり深刻。おまけに、この状況に起因した過度の需要増大による半導体不足、加えて原油高の影響で、プラスチックの主原料であるナフサの高騰にともなう部材の供給不足等、ものづくりに関していえば全体として憂慮すべき状況と言わざるを得ない。
 自分も車載電装品や電池の製造など、どっぷりとその影響を受ける市場に携わっているので、
 
  部品/材料不足=モノのが作れない=納期が延びる=売りが立たず回収までに時間がかかる

 という流れは、特に資金力に経営のウェイトが大きい中小町工場にとって、まだ日本国内は半導体製造設備等の特需で潤っている感があるが、この先の見通しとして残念ながら快方に向かうか疑問だ。

 そんな中でも、注目を集めている脱炭素化に向けての自動車産業のEVへのシフトは確実に動きつつある。大御所のTOYOTAも2030年迄のEV生産目標を発表するなど、日本の自動車メーカーも重い腰を上げて相次いでEV化計画を打ち出し、加えて中国を中心とした新興の自動車メーカーも今までの既存インフラのない身軽な状況により、SPACでの上場等で資金の確保ができれば、更なる加速力で市場参入してくるだろう。勿論、上記の半導体や部品の不足により、生産、販売計画は大きく遅延している状況は否めないが、人が乗る自動車という分野以外のMOBILITY全般においても指数関数的にその規模が拡大していく事は間違いない。

 以前から、このBLOGで何度も触れているのだが、自分の顧客であるTESLAを訪問すると、受付で面会を待っているのは、ほどんどが中国系、韓国系企業の担当者だ(日本勢はどうしてしまったんだろう…)。そんな中でも特に中国のベンダーの動きが今迄にも増して活発化しているように感じる。勿論アメリカは中国に対しての制裁措置や輸入制限等、その活動は規制されているにもかかわらず、既にパーツ領域やインフラの部分に浸透し、コスト面でのアドバンテージのみならず、彼らの製品品質も十分に客先の需要に合致する水準に昇華していて、そう簡単に使う側も脱中国製品(部品)には動けないようだ。加えて最近では、納期でも間違いなくアドバンテージを確保している。中国からの輸送期間を考えても、景気が良すぎる状況で納期の短縮に対応できないアメリカ国内のローカルのベンターを退け、特にシリコンバレーで一般的な短納期重視の試作開発スタイルにも十分に対応しているようだ。

 実際、アメリカの新興EVメーカーであるLUCIDの調達に携わる知り合いは、最近の中国ベンダーの対応と納期に対する意識は完全に日本の系列構造に浸かりきった商習慣意識が抜けない日本のベンダーの市場を凌駕しつつあると語り、今まで長い付き合いのメキシコにあるEMSメーカーの友人も、最近取引を始めた中国大手の民生機器製造メーカーHI-SENSEとの商売は、仕事の進め方や、品質納期管理など、全てにおいて圧倒的に無駄がなく、未だに既得権と「俺は客だ」的意識で外注とのビジネスを進めようとしている日系企業とは雲泥の差だと話していた。そして、日本の大手デジタルMAP会社社長の友人も、通信ネットワークだけでなく、EV産業におけるイニシアティブを狙うHUAWEIのビジネス改革の速さに驚愕していた。
 自分の経験でも、細かいことだが中国のベンダーに加工品の見積もりをすると、確実に半日以内に見積もりが到着する。日本のベンダーだと未だに見積もりが出てくるまで2,3日かかるのは当たり前( 過去のデータの解析と統合ができていないので都度計算が必要、また工程によって外注への確認が必要などの理由で…)。既に話題になって久しいAIを利用した試作生産プラットフォームのFICTIVEやPROTO LAB、日本で言えば後発のCADDIが事業としているシステムインフラが既に当然のように普及している(もしくは自前開発している)と思われる。そして発注しても納期はしっかり遵守、決済に関してもWISEやPAYPALなど手数料もかからず簡単なシステムでの取引が一般的になっていて、未だに銀行送金による決済に固執している日本の中小町工場とは大違いだ。
 
 製造業に関しては、未だに中国をアジアの一国という認識で上から見る傾向にある日本の旧態依然の体質も、今の同国の実態の正確な把握を妨げている感が残念ながら強い。しかしながら、とにかく今までの製品に対する「安かろう悪かろう」的イメージ、そしてモラルの無かった商習慣も大きく様変わりしている事は間違いない。

  たまたまタイミングよく放映されていたNHKの「中国新世紀」に出てきた深圳のものづくり系スタートアップ達。彼らのスタイルやオペレーションは、もう今までの中国企業のイメージではない。
 彼らは今、IT産業だけでなくハードウェアの世界でいえば、ロボットやドローン、IT系ガジェットなどの完成された製品のみならず、 間違いなく今まで日本がハードウェアでイニシアティブをとっていた各種アクチュエーター、高性能モーター、リニアスケール、シリンダー類に至るまで、あらゆるものを国産に切り替えるべくAIを駆使したリバースエンジニアリングを進めている。更に中国政府もアメリカからの制裁の間に、国内の生産力を向上させるべく、14億総中流政策を掲げるものの、未だに大半を占める国営企業の旧態依然の人海戦術的生産スタイルを、これからのAI技術の向上と部材やロボットの開発によって大きく変貌させるために国が主幹となって彼らへ入札の機会を与えたり積極的な資金投入も行っている。まさに内需インフラの増強と安定化をいう基盤を確立し、さらに世界を獲りに行こうという新たな、官民一体のイメージが思った以上に浸透しているように思えた。

 特に、これから世界の製造マーケットの主流となるEV産業に関しては、十分な国内需要だけでなく、世界のメーカーにも部材を供給するための価格、品質、納期重視の生産と輸出を、先ずイメージ向上のため「品質の悪いものは出さない!」という統制を徹底するという
  
  EV産業における世界制覇の為の生産インフラの構築を国策として進めている。

 という状況が強く感じられる。 これを裏付けるかのように将来的に急激に需要が高まる車載用を中心とした恒久的な半導体不足への対応として同産業に対する日本の投資計画規模6000億円に対し、中国は何と10兆円を拠出するという。国を挙げてのビジネスに対する考え方と気合の入り方が全然違うのだ。

 さて、 こちらにいると、このような状況を身近に体感できるため、本当に一刻の猶予もないという気持ちが日々募るばかりなのだが(毎回書いている気がする…^^;;)、 その動きが更に加速し、中国の製造業が世界の産業を凌駕するようになったとき、日本(の製造業)はどう戦えばよいのだろうか? 今までの牙城にしがみつき最終的には鎖国をも辞さず!という動きをとるのか?それとも真っ向勝負で玉砕するか、もしくは共存できる方策を探し出すか? 勿論それぞれ賛否両論はあるかと思うし、加えて今の企業のマネジメント世代は、EV主流の世の中が始まるのは2030年で「まだまだ自分たちの目の黒いうちは大丈夫」という考えもあるかも知れないが、
 彼らはひたひたと忍び寄ってくるのではなく、怒涛のように押し寄せてくるのだという事を、来年に向けて今年のうちにしっかりと肝に銘じておいてもらいたいと思うのだ。

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