第14回 真のベンチャー魂

真のベンチャー魂

 新年おめでとうございます。
 アメリカは11月の終わりにサンクスギビング(日本の勤労感謝の日にあたる)のホリデイがあり、土日を入れてほとんどの会社が4連休になります。これを過ぎるとクリスマスホリディ気分一色に染まります。本場のクリスマス商戦は日本の比ではありません。アメリカはほとんどの会社の期末が暦通りの12月なので奮闘するのはデパートや商店だけではなく、企業も最後の追い込みに必死になります。そういったところで日本とは違う12月の活況を感じるのかもしれません。
 2003年のアメリカは国際情勢の緊張感に呼応しイラクへの攻撃をするなどめまぐるしい一年でした。政治ではシュワルツネガーがカリフォルニアの州知事になり(う~ん…将来的な不安が…)、経済的には相変わらずITバブルの後遺症が根強く
失業率も高水準のままでした。
 特にシリコンバレーは、そのバブル景気のあまりの異常さ(一挙に4兆円近い投資が僅か1~2年という短期間に投入された)のため、景気回復の兆しが見え隠れするアメリカ全体と比較するとその痛手からは立ち直る術はまだまだ見出せていないようです。それでも確実に復興への息吹は聞こえてきています。マーケティングというひとつの確立された手法がその要因であることは前回書きましたが、それ以外にもいくつかの要因があるようです。
 アメリカ人、またアメリカに移住してきた人達の根底にはベンチャー魂(昔風には開拓魂)のようなものが根強くあると思います。19世紀のゴールドラッシュ時代、アメリカには一攫千金を求めて多くの人々が集まりましたが、ネットバブルの時も世
界中から腕に自信の技術者が一攫千金を求めて集まってきました。しかしITバブル崩壊後、現在に至るまで大企業を中心に多くの人々が簡単にレイオフされています。日本ではよく一時帰休と訳されますが、元の会社に戻れることはまずなく、簡単にいってしまえば会社都合による解雇です。
 解雇される側はたまったものではありません。朝会社に行ったら机の上に解雇通知が置いてあり、その日の午後には荷物をまとめて会社を去らなければいけない。これがレイオフの一般的なかたちです。家のローンや子供の養育費など、さまざまな困難を抱えなければいけない人も多いはずです。ただ私がいままで会ってきたレイオフさ れた人々はなぜか非常に楽観的です。「レイオフされたけど会社都合だから3ヶ月間は会社が給料払ってくれるし、とり あえず1ヶ月はのんびりして残りの2ヶ月は大学でも行って新しいスキルでも身につけ るよ」、「どうせならもっと期待の持てる新しい会社をじっくり探すさ」…
 非常に軽快に話す彼等をみていると何か夢を叶えるには少々の苦労は気にならない、どうにかなるでしょ! といった気概すら感じます。これがアメリカ人の根底にある真のベンチャー魂であり次の復興へのひとつの原動力になっていると思えてなりません。
 友人に、日本の大手企業を定年を目前に控えてスピンアウト(自主退職)してアメリカに渡り、研究職としての自分のテーマだった技術を基に起業した人がいます。40の手習いならぬ60の起業です。
 多い時には60人近いエンジニアを抱え設立から7年後には株式上場も期待できるまでに成長しました。が、特許侵害訴訟のためやむなく会社をたたまざるをえなくなりました。そこで共に頑張ってきた従業員に少しでも金銭的な還元をしようと
自社開発の技術の売却を決め、売り先を探していたところ、運良くアップルコンピューターが購入を決めてくれたそうです。その売買契約の日には、アップルコンピューターの創始者でありベンチャービジネスの教祖ともいえる同社の総帥スティー
ブンジョブズが自ら契約書にサインをし、堅い握手を交わした後、友人であるその70 を前にした老人(失礼)に向かい「WHAT’s NEXT(次は何するんだい)?」と聞いたそうです。
 日本では不況による生活苦、経営難による中高年の自殺が深刻な問題になっているそうですが、シリコンバレーではITバブル崩壊後、自殺者が増えたという話を聞い
たことがないばかりか記憶する限り15年のアメリカ生活の中で自殺者が出たというNEWSすら聞いたことがありません。

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