第10回 素顔のシリコンバレー-その2

シリコンバレーは一大製造拠点

日本から見るとシリコンバレーはエレクトロニクス産業の集積地。常に時代をリードするテクノロジーを生み出すエリアとして理解されていると思います。その中にはたくさんのソフトウェア会社もありますが、当然の事ながら、そのソフトによって機能する数々のハードウェアを製作する世界に名だたる企業もこの地に拠点を構えています。このような会社が開発・設計する製品の数々、もちろんその量産のプロセスは価格的メリットを出すために東南アジアや南米に移管されることが多いのですが、製品として完成するまでの試作等、量産の前段階は、その大半がシリコンバレーでまかなわれます。そして、その試作のための板金加工や基板の生産、メッキや成型品は、製品化までの時間短縮とR&Dのためにほとんどがバレー内にある中小企業によって供給されます。シリコンバレー内には、その様な製造業を生業とした会社が、実はたくさん存在します。以前このコーナーでも紹介いたしましたが、ここはいろいろな国の人たちが集まる一大多国籍エリア。ここの存在する製造業者はそのほとんどが、白人以外の主にアジア系の人々によって経営されています。彼らの勤勉な労働姿勢、器用な手先を生かした品質の高い加工技術が、シリコンバレーで開発される先端のハイテクノロジーを駆使した製品の一端を担っているのです。

私自身もそのうちの何社かと現在取引をしておりますが、日本の製造業にもまったく引けをとらない技術と品質、そして低価格の製品の供給をしてくれます。基本的にはシリコンバレーの最先端技術の一端を担う製品ですから、製品自身の機能や加工技術にも最先端のものが要求されますが、彼ら(アジア人)のもつ習得に前向きで勤勉な姿勢がその様な需要に充分こたえられる部材(製品)の供給を可能にしています。
昨今のシリコンバレーの景気低迷は前号でお知らせしたとおりですが、そんな中、特に感じることは、これらの企業が、したたか(?)にこの地に根付いて営業を続けているということです。その特徴のひとつに柔軟性があります。現在取引のあるKA TOOLS社は、主に実装基板のアッセンブリをサポートする治工具を供給する専業メーカーでした。IT産業が全盛のころはその超高密度実装をサポートする微細加工を得意とし数台の加工機を駆使して、かなりのシェアを確保していましたが、ITバブルの崩壊により、その需要は急速に落ち込みました。しかし、その経験を生かし自社の設備をそのまま利用, またその一部をグレードアップして、現在でも比較的安定しているメディカル関係の精密加工部品の製造や将来的な隆盛が見込まれるMEMS(マイクロエレクトロニクスメカニカルシステム)向けの治工具の生産に積極的に取り組んでいます。このように同じ分野に固執することなく、その産業の流れやトレンドに応じて柔軟に生産品目を変えていくことにより、会社としての安定を確保しています。

もうひとつの特徴は、彼らの人種を背景としたネットワークを構築していることです。IST社の社長は韓国人、社員はベトナム人や中国人などのアジア人を中心とした会社で、主にサンマイクロシステムやシスコシステムズに、製品の耐久試験やエージング用の装置を生産していました。この会社もKA TOOLSと同様、ITバブル全盛の頃には、大きな社屋に数台の工作機を導入しすべての生産をアメリカ国内、それも当時人件費が最も高かったシリコンバレーの中で行っていました。しかし、ITバブル崩壊後は、需要の減速と低価格化に対応するために、生産の工程を大幅に変更し、彼らのネットワークを駆使することによって加工部品として価格的にメリットを出せるものは例えば中国で生産する、また部材を安価で購入することができるのであれば、そのようなものはベトナムから購入する等、コストを軽減することによって競争力のある製品を供給できる体制を構築し相変わらずの売り上げを確保しています。もちろん彼らの柔軟性とネットワークを利用した生産体制の再構築の背景にはその市場のトレンドや流れを把握するマーケティングと営業力があるように思います。またそのような情報を常に入手するためのシリコンバレーの内部における、同じ民族(人種)を中心とした強固なネットワークも存在しています。このネットワークというのはある意味このシリコンバレーの大きな特徴であるともいえます。
次回はこのネットワークについてお話したいと思います。

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