第7回 当たり前だが日本とは違う-その4

当たり前だが日本とは違う。その3  ドキュメントの重要性

とにかくアメリカは広大です。それゆえ商品の販売はもとよりサービスに関しても莫大な時間と費用を要します。どこに行くにもまず飛行機は不可欠、現地ではレンタカーを借り、ホテル宿泊が当たり前です。日本のように電車で出向ける営業先は皆無です。

そこで必要になるのが商品をユーザーに理解してもらうための完成度の高いドキュメント(製品カタログ、仕様書、取扱い説明書、保守説明書など)です。これらが充実すると、トラブルを未然に防ぐだけでなく起こってしまったトラブルへの対処はもとより、製品の販売でも実際にセールスマンの営業を代行し、カタログ販売やレップ(前号参照)による販売でも素晴らしい効果をあげることができます。

ところが日本の場合ドキュメント、特に取扱い説明書と保守説明書(サービスマニュアル)が貧弱な場合が多い。製品を開発したエンジニアが持ち回りでそれらを作成しているケースが多い(というかそれしか方法がない?)からでしょうか? それでもサービスの人間が簡単に客先に出向いて不足部分を補うことが出来るし、アジア地域では勤勉なオペレーターが限られたドキュメントの中で必死に勉強するので、実際的な支障は少ない。それでドキュメントの存在や質があまり重要視されていないようです。

けれどもアメリカの場合は、このドキュメントの充実度(完成度)が非常に重要です。私の経験でも製品の売り込みに行くと、よくユーザーから取り説を見せてほしいと言われました。ユーザーには、その取扱い説明書のわかりやすさも評価の対象の重要なポイントなのです。しつこいぐらい触れていますがアメリカは広大な国。製品を購入する側も簡単にサービスを受けられないこと、そのサービスにはかなりの出費を覚悟しなければならないことをよく理解しています。だから、いかに取扱い説明書、特に保守説明書が充実しているかという点に対する関心は高いし評価もシビアです。

そうでなくても完成度が高いとはいえない日本の取扱い説明書。ましてその英語版を準備するとなると、非常にややこしい問題に直面します。お恥ずかしい話ですが、私もかつて勤務していた会社の製品ドキュメントをアメリカのトランスレーター(翻訳家、こちらではTECH WRITWERともいいます)にお願いして、よく英語化してもらっていました。その時、一番多かった質問は「すみません、この日本語の言い回しというか意味がよくわからないのですが…」でした。製品以前に日本語そのものが問題なのです。したがって、基本中の基本として日本語としてきちんと内容が把握できるレベルであることが最低条件になります。例えば技術サイドで作成された文書を、きちんと営業サイドで推敲するというプロセスは不可欠でしょう。

さらに厄介なのはカタカナ語の扱い。たとえば自動車に関するカタカナ語でも、ハンドルはステアリングホイール、パンクはフラットタイヤ、屋根につけるキャリアはルーフラックと英語では表現が変わります。日本で使われているカタカナ語は出処不明語の宝庫です。しかも、意味まで変わるものも多い。例えばバイクはアメリカでは自転車で、日本でいうバイクはモーターサイクルと言います。

ましてやカタカナ語の氾濫している電気関係の製品となると一歩間違えたらまったく不可解な表現になりかねません。基本的なところでは、コンデンサーはキャパシター、コイルはインダクターとするのが一般的です。

社内に英語に精通したエンジニアがいれば、このような問題の回避は比較的容易かもしれません。でも概してそういう社員はそうでなくても忙しい立場にいるものです。やはりドキュメントの翻訳を行う場合は、英語のできる女性社員にまかせてしまうなど社内で全てを片付けようとしないで、多少の出費でも専門の技術翻訳業者に見てもらうことをお勧めします。ただし、翻訳業者を探し出す場合、いくつか確実に英文化されている内容でトライアルするなど事前のレベル確認をお勧めします。電気関係で言えば、部品の実装されていない基板はベアボードといいますが、これをBEARBOARD(熊の板?)と訳してしまうような業者は避けたほうが無難でしょう。

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