スピード感はあるのか??

今年の春から日系の大手家電メーカーの既存のメキシコ工場における新規プロジェクト立ち上げに携わっている。日系大手メーカーがアメリカで辛酸をなめさせられている中、日本の得意としている家電製品で再挑戦を図る同社を自分としては諸手を挙げて応援したいのだが、そのアクションの遅さが気になっている。
自分が、関わっているのは品質管理の部分で、同社は既存の検査システムを再び使用する計画なのだが「日本と使用している機種が違うので検査内容の詳細を確認したい、また機能的に問題がないか検証したい…」と細かい内容の質問が来たので、これに関してはスタンダードなデータ提供とシステム自身の過去の機能データなどを速やかに提出。それに対してすごく時間がたってから「実は今回使用する部品に関しての詳細な検査データが必要」みたいな質問が来て、これにも真摯に対応したにもかかわらず、最後に「この検査機に使用する治具の価格が日本のものとだいぶ開きがあるので、価格の検証が必要…」と、まあ次から次へを新しい要求が入ってくる…。このプロジェクト、勿論、明確なスケジュールがあり、この秋には新規ラインの稼働を予定しているのだが、こんなやり取りであっという間に1か月近くが経過、おまけにこれから価格の交渉と、ちょっとウンザリするほど手間がかかっているのだ。 品質管理の部分なので慎重になるのは十分にわかる。ただ何で、そんなに時間がかかるのか??というか先ず考えられるポイントをまとめ一括で確認する。という事は十分に可能なはずだ。う~ん…。
実は、このような動きの遅さは今まで他の大手メーカーでも何度か経験している。かつて別会社の工場では新規生産ラインの品質改善の際、メキシコ人はTACOSなど食事を手で取る習慣があり素手の作業では油脂が製品に残る可能性がある。しかしながら慣習上、現場に戻る際に彼らに手洗いを励行させることが難しいので全員(と言っても20人ぐらい)にニトリルゴムの手袋を装着させたらどうか?という提案をしたのだが、その決済に日本の承認やら何やら本当に細かいことで時間がかかり、結局生産開始時に間に合わず、案の定問題が発生してしまった…。なんてこともあった。
シリコンバレーでも(もしかしたら未だにそうかもしれないけど…)、ITバブルの頃は日本の大手のこちらの事務所には必ずBUSINESS DEVELOPMENTという肩書を持った駐在員がいて、こちらの先端技術やスタートアップをリサーチして日本サイドとの提携をさせる業務をしていたのだが、せっかく可能性のある会社を見つけても承認にいくつもハンコが必要な決済システムの為、もたもたと時間がかかり、それら会社はことごとく台湾や韓国、インドの会社に持って行かれてしまったという例も数多く見てきた…。要はそんな体質が今でも全然変わっていない様子を残念ながら身近に感じてしまって、何か本当にがっかりている次第…。
そして危惧するのは、そんな大企業の体質の中で長年働いてきた社員にも、そういう体質が染み付いてしまっていないか?という事だ。一生懸命開発や設計をしても承認や決済を取るために時間がかかる「だったらのんびりやってもいいや。」みたいな体質。加えて、たいして金もかからないのに上司の判断が気になり細かいところを気にし過ぎて何も決まらないといった体質だ。実際に中堅どころのコネクター製造の会社の友人から早期退職した未だ現役の大手メーカーの開発担当者を採用したのはいいが、そのプロセスの進め方の遅さに困惑した…という話を聞いたこともある…。

シリコンバレーに長年住んでよく感じる事。それはスピード感だ。あらゆるもの、特にソフトもハードも含めて新しい製品が市場に投入される速度、これらがものすごく速い。ITバブルの90年代後半から、ここはドッグイヤーの地だといわれていた。つまり他の地域の1年で、ここは7年は先に進んでいるというのだ。まあ、これはSOFTWARE産業に関しての見解であるにしても、ハードウェアでさえ少なくともその半分の3年半は他の環境より高速で動いている感じがする。APPLEが年内に発表するといっていたIーWATCHの発表が来年に延びるというだけで、その情報が早速今日のNEWSで流れていた。それほど時間とタイミングに関してはシビアなエリアでもあることは言うまでもない。特に話題が先行している新製品に関してはなおさらだ。
このスピード感が、ある意味、世界のデファクトスタンダードになりつつある。サムスンはその市場の流れに呼応すべく、この地に大規模なR&Dセンターを設置することを既に決定、今その建設が始まろうとしている。果たして日系大手企業はこの状況をきちんと理解しているのだろうか?少なくとも自分が今直面している状況からすると、未だに、よく理解できていないように思えてならない。

さて、これらの大手メーカーと仕事を共にしてきた中小町工場の皆さんにスピード感はあるであろうか? そんな大手の体質、というか仕事の進め方が実は染み付いてはいないだろうか?勿論、仕様決定に時間がかかりすぎて納期だけをひたすら急かされるという状況がほとんどかもしれないが、それでも仕事に関するスピード感がないとしたら、残念ながら、それは今の世界のスタンダードではないと敢えて断言したい。
「はい!納期は4週間で最高品質のものを製作します!」は、もう世界では通用しない。「要求された品質のものを1週間でお届けします」が今のスタンダードである。過剰品質は不要だ。機会があれば是非そのあたりを再考してほしい。少なくとも最高の技術を持っている日本の中小町工場であれば、このスピード感を持つことによって、間違いなくグローバル展開ができると自分は確信している。

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