アメリカ製造業復活の兆しを考えてみた。

アメリカにおける製造業が、にわかに復活の兆しだ。自分がアメリカに来た80年代の終わりは、まだ国内で販売されてるPCの大半がアメリカ製だったと記憶している。確かにサンマイクロシステムやAPPLEのPCは自分のオフィスの近くで生産されていた。それが90年代に入ると製品のコモデティ化に伴いどんどん東南アジアを中心とした地域に移管。90年代の半ばに入るとEMSによる生産体制が一般化し、そのEMS企業も2000年の頭ぐらいまではまだアメリカで気を吐いていたのだが、FOXCONNを中心とした巨大EMSメーカーにその市場をどんどん凌駕され2000年代の半ば以降ソレクトロン、フレクトロニクス、SCIといった大手はほとんど姿を消してしまい、その後のリーマンショックが致命傷となり、シリコンバレーからは完全に大手の製造メーカーはなくなってしまった。そして失業率も高止まりの状態が続いているのが現状だ。ちなみに全米の失業率は大体9%強なのだが、ここシリコンバレーは12%と異様に高い。これはこの地域の特殊性が大きく影響している。世界中から一攫千金を求めて集まる優れたエンジニアたちが限られたエリア、業種に集中しているために競争が激化しているからだ。
ところが去年の秋を過ぎるころから、その製造を取り巻く状況が少しずづ変わってきた。まずアメリカ市場向けの一大生産拠点であるメキシコに生産が戻ってきた。2~3年前までは価格的に中国に対抗できず、大手のメーカーが廃業や東南アジアに生産を移管し一時はかなり深刻な状況だったのだが、ここにきてPANASONICがマレーシアから生産を引き戻したり、メキシコの製造メーカーには、今まで中国をメインに生産されてきた電動工具や通信系のデバイスなどの部材や製品自身のアウトソーシングの見積依頼がだいぶ増えているという。
このような状況について、なぜ再び製造業がアメリカ(もしくは近接するでメキシコ)で復活しそうなのかその要因を考えてみた。まずアメリカ国内における失業率対策に政府が動き出したからではないかと思う。実際に高い失業率は国の景気を良くは見せない。APPLEが月に100万台のI-PHONEを製造販売し最高の利益を上げても、そのほとんどを中国で生産していたのでは、アメリカ国内の雇用にはまったくと言っていいほど寄与していないわけだ。オバマ政権はこのあたりを重視し、先般の演説ではアメリカ国内で製造を行うメーカーには税金優遇を適用し、国外で製造を行うメーカーは法人税を引き上げるといった措置を示唆している。つまり雇用対策としての製造業の復活が大きく貢献するわけだ。次に考えられるのは、これは私の個人的な推測なのだが、アメリカの国内需要の低下があげられるのではないかと思う。この根拠はTVだ。一昨年までとにかくアメリカ市場向けのTVは、とにかく安いことが大前提だった。そのために大量生産を実施しコストを極限まで抑えた韓国勢が市場を席巻し、日本勢はことごとく敗北してしまった(なんせSHARPの60”のAQUOSは、いまこちらで10万円ですから…)。当時は安く売ればいくらでも売れたのだ。ところが昨年の上期の段階では、市場を席巻しているSAMSUNGもLGも大量の在庫を抱えて赤字転落。つまりこれは、ほかのメーカの物が売れているのではなく需要が低下したことに他ならない。ということは今まで大量に生産することによって製造コストのみならず輸送コストなどを軽減できた中国生産の意味が薄れてきてしまったわけだ。限られた需要(生産数)であれば、大量購入による不良在庫のリスクがなくなり、短納期(現状中国からのOCEAN出荷はどんなに早くとも3週間以上かかる)と市場でのクレームのフィードバックも早くできるアメリカもしくはメキシコでの生産が非常にメリットがある。おまけに人件費もインフレが進む中国とメキシコでは大きな差がなくなってきているとも言われている。ここに(TVに限らず)製造業がアメリカにもどってくる要因があると思う。そして、最後に日系メーカーのアメリカへの製造移管に関して言えば円高の回避だ。アメリカで10万人以上の雇用を誇るTOYOTAは、先の震災や洪水による天災の影響を考慮し、また円高回避策として今後はアメリカを製造の一大拠点にすると、デトロイトのショウで副社長が発表している。確かに1円の差で何億円もの損益が生じる企業では、今回の円高対策としてはごもっともといえる策だ。おまけに円高であればドルベースの決算なら差益で今までより数十パーセントも安く進出が可能だ。TOYOTAに呼応するかのようにHONDAやMAZDA,そして日産もアメリカとメキシコに大規模な生産工場の進出を今年から来年にかけて予定している。円高回避の点では、ほかの製造業にもメリットはあるはずだ。
いづれにしても製造業のアメリカでの復活は、同国の景気対策だけでなく、日本の中小企業にとっては今まで新興国に流れるだけだった製造プロセスが、源流に近づくことによって、よりグローバルな展開ができる可能性もあり大歓迎である。この状況、今後も注視しながら、ことあるごとにレポートしてみたい。

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