AI時代の製造プロセス革新に気づいているか?

スミマセン!またまた年明けから時間が空いてしまいました…。
さて2年前から本格的に始まった世界最大の電池工場立ち上げのプロジェクトはようやく当初の予定をほぼ完遂し、今までの怒涛のような忙しさも少し落ち着いてきた感があるが、やはり製造ラインの立ち上げに伴うサプライチェーンの構築には、まだまだ時間がかかりそうだ。その中でも自分が担当している部材のローカライズプロジェクトは、日本の製造インフラのまま、こちらでの対応を余儀なくされているため、なかなか思うようにいかないことが多い。特に依頼のあった部材の加工など日本で作成された図面を元に、こちらのVENDERで製造しようとすると、具体的に言えばインチとミリの違いに始まり、加工条件の表現などを含め難航することが多い。そのために具体的な見積もりが出るまでに5日とか、それなりの時間を要してしまう。ただこれは日本のVENDERにおいても同様で、特に見積もった価格イコール一回注文が出てしまったら「一切の融通や変更を許さない=不具合があればお金をもらえない」といった下請け特有の主従関係(?)の影響か見積もりにおいてはじっくり検討の時間を要するところが殆どで同じように時間がかかることが多い。しかしながらアメリカにおける製造業というのは基本的に「スピード感が命!」。今回のプロジェクトもT社の廉価版EVの量産に呼応するために待ったなしの状態が続いており、その要求とVENDERの対応ギャップにかなりのジレンマを感じてしまう状況が多々ある。

そんな中、昨年あたりから、このような製造における初期(特に試作段階におけるプロセス)の諸工程をAIやIOTを使って、迅速に処理/対応し、新規の製品化のスピードアップを実現しようとするスタートアップが現われ始めた。ハードウェアの新規開発とその迅速な市場投入に懸命になっているシリコンバレーのハード系企業のサポートを中心に注目を集めてきたFICTIVPlethoraという企業がそれだ。両社とも製造に関しての

依頼ー見積もりー受注ー試作-納品

までのプロセスの簡素化と効率化を高めるビジネスモデルで注目を浴びており、大手製造メーカーとの提携がNEWSになったり、既に日本の大手商社も両社には投資を実施しているようだ。

FICTIVは自社の持つオリジナルのCADシステムに各社各様の設計CADデータをコンパイルすることで、オリジナルのCADシステムが持つAIによる設計データの最適化と工数計算により、瞬時(1分以内)に見積もりと実際に制作した場合の最短納期を算出し提示、そして正式受注の際には既に同社と提携している加工/製造業者のデータベースから各社の繁忙状況なども随時把握し、生産に余裕があり納期の早い業者へ発注、切削品なら3~5日で仕上げて客先への配送までを一貫したサービスとして提供している。形式的には自社独自のシステムによる生産前プロセスの簡素化と加工業者のデーターベースを確保し、そのシェアリングによって納期の最短化を図るモデルだ。

一方のPLETHORAは、同じように自社オリジナルのCADデータプラットホームを持ち、そこへのコンパイルによって、自社で保有しているCNCマシーンなどによって短納期(3,4日)で試作を完成させるというサービスになる。こちらは自社で製造するというところにアドバンテージがあり、工程管理や納品までのプロセスを自社で完結させることが可能で、そこが客先への信頼にもつながっているようだ。
もちろん、決まった材料でアッセンブリもなく単純な部品加工(難易度は別にして)であればこれらのビジネスモデルは非常に効果があり、昨今の短納期がアドバンテージになる市場状況においては需要はかなりありそうだ。ただし、試作といっても通常は何度もキャッチ&トライが必要になり、その都度細かいやり取りが必要になる点、またタフトライドやDLCなどの特殊な表面処理やヘリサート挿入、コーキングなど付加的な作業依頼があった時の対応など、信じられないくらい多岐に及ぶ作業を一括で処理できるというカユイところに手が届く日本の中小町工場のスタイルから見れば、まだまだ稚拙で恐るに至らずかもしれない。
ただ、ポイントはスピードがアドバンテージになる今のハードウェア市場の状況からみたら間違いなく需要はあるという点だ。例えばBOEINGのような老舗をはじめ、ECHOで一挙にハードウェアメーカーとなったAMAZONなどが彼らのサービスを採用し短期間で試作ができるという流れが主流になってしまったら見積もりに最短でも数日かかってしまう今の日本的スタンダードは通用しなくなる可能性は大だ。加えてこのようなプロセスのインフラが現在試作製造のHUBとして中心になりつつある中国の深圳あたりのデファクトスタンダードになってしまえば、試作のサポートを武器としてグローバル化を進めようとしている日本勢にとっては間違いなく脅威となるだろう。

では我々は、どう考えるかだ。先に描いたような日本勢がもつ統合的な管理、複数の異なるプロセス(切削、実装、表面処理など)を一括に保証できるシステムなどは、まだまだアドバンテージがあるかもしれない。加えてこれらを統合し、さらに上記のスタートアップが武器としているAIを利用したデータ処理を利用し、さらに効率のよい自動見積もり生成システムを開発するなど、新興勢力にはない膨大なデータを有する日本の中小町工場ならではの対応策と、さらに上をいくシステムの開発など可能性はたくさんあると思う。

一番重要なのは、既にハードウェアの需要が急激に増えているアメリカ(特にシリコンバレー)そして試作から量産までのサポートで世界の製造工場に君臨しようとしている深圳をはじめとした中国勢が、どのようなトレンドでハードウェア市場のインテグレ―ションを進めているかを常にリサーチ(少なくともトレンドの把握)するような意識を持つ事だと思う。気づいた時には外堀は全て埋められているといった状態にならないよう少しでもこのような動きに注意を払うことによって、日本独自のインテグレートされた、世界には追従できない製造技術インフラの確立を早い段階で構築してもらいたい!

 

 

 

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