Archive for 08/19/2019

盛田昭夫会長の教え

 今から30年前の1989年7月1日に公開されたSONYの盛田会長のWALKMANに関する社内向けビデオ(動画)が、その長い時を経て先月の7月1日にNIKKEIのサイトからリリースされたことを知り、早速拝観した(是非リンクを観てください)。 このビデオは1979年の発売以来10年間で5000万台を売り上げ大ヒット商品となった同製品の誕生秘話(録音機能を付ける付けないで揉めた話等)や、その極めて和製英語なネーミングでイギリス、アメリカでは全く受け入れられなかったものが何と英語圏以外で瞬く間に浸透し最終的にはイギリスの権威あるオックスフォードの辞書に掲載された逸話など本製品のエピソードで構成され同氏のウィットに富んだ話しぶりも交えて非常に示唆のある内容だった。
 その13分弱のビデオの後半で盛田会長が「この製品を構成するプレーヤーとヘッドホンは、それぞれ既存の製品で、それを音楽を常に聴きたいという市場のニーズに合わせて改造したものだ。大きな発明、発見ではなく、製品の組み合わせで新たな産業をつくることができた。そこに大きな意味がある」と語っていた。本人は、それを

「プロダクトプランニング」

と表現していたが、今風に言えばまさに「マーケットイン」の発想だ。今から40年も前に、そのコンセプトを駆使して世界に浸透する素晴らしい商品を作り上げた同氏の先見性とビジネス手腕は、今のIT大手のFOUNDERに引けを取らない偉大なものだと思う。

 そのWALKMANの誕生から28年後の2007年に、APPLEのスティーブジョブズは既存の製品と技術に新しいテクノロジーのインフラを盛り込んだI-PHONEをリリースして一世を風靡した。既にSONYのCLIEやSHARPのザウルス、PALMのPDAが存在していたのに、盛田会長を唯一尊敬していたといわれているSTEVE率いるAPPLEがそれらをインテグレートして製品化したことに、盛田会長が提唱したプロダクトプランニングのコンセプトがあったのでは?と自分は思うのだ。
 
 このように考えると、既存の技術や製品をMODIFYすることによってマーケットインできれば、まだまだビジネスの可能性は山のようにあるはずだ。新規のスタートアップ企業が何もない0の状態から1を作り出すより、既に1となる既存の技術や商品をプランニングできれば、その可能性は10どころか100になるかもしれない。

 さて、自分の分野である中小町工場の今ある状況においても、まさに同じ可能性があると考えている。既に職人技の精度技術や、その中から培われてきた製品などは市場の需要をしっかりと把握し、うまくマーケットインすることができれば、何十倍、何百倍になる可能性があるという事だ。

 先般テレビ東京の「ガイアの夜明け」で紹介されたDG TAKANOは、先代が培ってきた業務用ガスコックに使用される1000分の2ミリという超高精度の職人技を、節水ノズルに応用して製品化し今大成功を収めている。この例に漏れずまだまだポテンシャルのある無数の技術や製品は世の中に沢山あるだろう。
 勿論、それをマーケットインさせるためには、市場や世の中の需要をしっかりと把握し、解析する能力は必要だが、このあたりを意識すれば新しいビジネスへ大きく開ける可能性は十分にあると考えたい。
 もし将来を考えて新たな道に挑む気概があるのなら是非とも、そんな目線で自分たちの技術や製品を考えてもらいたいと思うのだ。
 
盛田会長のビデオからそんな事を考えました。日本の偉大なアントレプレナーに最大の敬意を表します。






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試作市場の厳しさを知れ!

 このブログでも何度か紹介しているが、今メインで携わっているGIGAファクトリーのプロジェクトの関係で、2か月ほど前からシリコンバレーで新規で地元の町工場2社と取引を始めている(既に付き合いのある町工場を含めると現在5社と取引があります)。
 板金加工を手掛けるS社はベトナム人の社長(というより町工場の職人のオッサンという感じ)を含めて従業員は5名、サンノゼの東のはずれにある工業地帯の入り口がどこにあるかもわからないような長屋風の建物の一角にあり、もしかしたらVINTAGEの部類に入りそうなAMADAの工作機が2台。工場の中は、雑然としていて床には削りカス、物置き台の上には図面が散乱。空調もきちんと動いてないのか、出入口のガレージドアは開けっ放しという、どう見ても日本で提唱されている3Sや5Sとは異次元の空間で淡々と客先の注文をこなしている。多くても100枚までの生産でメインは1~10枚の試作が中心。本当にその状況から見たら日本だったら「一体誰がこんなところに注文をだすんだろう?」という感じなのだが、彼らがこなしている仕事は、半導体製造設備の最大手であるアプライドマテリアルや、KLA TENCORといった超一流のメーカーからの依頼だ。見た感じ間違いなくオーバーフローも少ない分、価格も非常に安く、既に色々頼んでいるが納期はしっかり2週間以内で対応してくれる。そして品質でも問題になったことはない。これはきっと超高品質を要求される大手半導体メーカーとの付き合いの中で培われてきた結果であろう。
 切削加工を手掛けるインド人経営のJ社は従業員30名。サンノゼの南のはずれの、これも入り口がどこにあるかわからないようなこじんまりした工業団地の一角にある。ここにはOKKやMORI SEIKIなどの切削機を中心に工作機が10台ほど。またデザインルームや検査室も完備し、そこそこのオペレーションだ。顧客も半導体設備メーカーをはじめ、巨大企業GAFAの雄であるGやF、新興勢力のUBERやWYMOなどの試作部材を中心に手掛けている。またEVメーカーT社のスペアパーツなども生産しているようだ。
この会社も納期は大体2週間。価格も日本と比べて遜色のないレベル。見積もりに対する対応などは迅速で全くストレスを感じさせない。そして特筆すべきは、この会社が入っている団地に、なんと同じような切削加工を生業とする町工場が10社も以上あるという事。これがアメリカの試作市場を支えている連中の素顔だ。
 
さて昨今、日本では、JETROなどがバックアップし、アメリカの試作市場参入のプロモーションを行っているようだが、果たして例えばシリコンバレーを例に挙げれば未だに1000社以上存在するこのような切削、板金、成形、アッセンブリを得意とする連中を相手に、どのように立ち向かえばいいのか?先ず本当の意味でそこを徹底的に吟味する必要あると考える。 
 そうでなくとも日本で製造をした場合、そこには製品価格に加え国際輸送の送料や関税(特に金属)が必要。また最短でも現状は日本4日かかる日数は納期に加算しなければならない。当然それを加味しても受注を獲れるアドバンテージが不可欠だ。勿論最初から潤沢な資金があり、アメリカに工場を設立できるという企業であれば話は別かもしれないが、それでも、価格競争が厳しい中で一つ$100~$1,000程度の少量の試作部品の製造で、こちらでの設備投資や法外な給与ベースの従業員の確保、そしてこれまた法外な生活費などの経費を通常の償却ベースで採算に乗せていくのは至難の業だと思う。だからこそ、綿密にリサーチを行い、自社の持つアドバンテージがこの市場に対してどのように貢献できるかを、しっかりと見極め戦略を立てなければならない。アメリカで大成功を収めている日本の加工メーカーの雄HILLTOPは進出する数年前からこちらに足繁く通い、こちらの市場を把握、品質や技術力ではない自社のアドバンテージを生かした戦略で臨みビジネスを軌道に乗せている。このようにしっかりしたマーケティングリサーチを実施し戦略を立てれば可能性は十分にある。昨今の自動車革新、AIによる自動化やロボット急速な普及を考えると、こちらの市場は日本の何倍もあることは間違いないのだ。

ただ、いつも同じことを言っているが、その前にアメリカに本気で食い込んでやろうという高い志があることが大前提だ。

 日本のぬるま湯的環境で、景気が悪くなれば補助金を無心することで延命できるようなシステムはこちらには存在しない。今活動している1000社以上の町工場も、補助金などの制度がないこの地で弱肉強食の中で生き残ってきた会社だ。当然生半可な気持ちでは歯もたたないだろう。それでも、こんな連中を相手に高い志を持って「アメリカで勝負してやろう!」という町工場があれば、力になれるかわからないけれども自分は是非とも応援していきたいと思っている。

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