Archive for 05/02/2019

最強の製造技術を支える総合力で挑め!

今シーズンのカリフォルニアの雨季は雨と降雪が多く例年の160%と過去最高の降水量となった。これで毎年のように懸念されるこの夏の水不足は問題なく解消されるようだが、シリコンバレーからシエラネバダ山脈を越えたネバダ州にあるT社のGIGAファクトリーへの出張は、この雪の影響でなかなか苦戦を強いられた。そんな山奥の平原の中に建てられた世界最大の電池工場は順調に立ち上がり、P社の部隊はわずか2年半で従業員数も数千人規模の巨大工場へと成長。その熱気を帯びた勢いと垂直立ち上げを確実に遂行する日本の技術力、そして組織力はもちろん、種々の難問を抱えながらも目標に向けて一丸となって取り組む姿勢は現場でみていて本当に感動ものだ。

そんな巨大なプロジェクトに携わって早3年が経過。目まぐるしく変わる状況に伴う客先との業務の中、自分自身も本当に多くのことを勉強し経験させてもらっている。以前からこのブログにも記述してるが、自分の担当の一つに「消耗部材の現地化」がある。壮大な自動化された生産ラインに必要な部材を日本ではなくアメリカの地場で供給できる体制(インフラ)を構築することだが、この中で見えてきた日本勢だからこそできる可能性を1年以上前に「現場を知って10%の可能性をさがせ!」でまとめてみた。その内容は今でも全く変わっておらず、このあたりをしっかり押さえればチャンスは、まだまだ山のようにあると思うのだが、最近ではそれに加え日本が誇る製造技術もやはり世界最強だと改めて感じることが多い。
特に感心するのは、生産の自動化におけるライン設備とその技術。自分がかかわっている工場で月に数百万本のセルを製造するラインは全自動で1分間に数百本という単位の製品を確実に組み上げていく。大きいものならまだしも小さなものを、そのスピードの中で歩留まりなく確実に自動で組み上げていくための技術は本当に凄いものがある。工程は多岐にわたるのでラインの長さも半端ないが、それぞれの工程を確実にこなしていくために必要となる数万点の部品精度も100分の1ミリレベルが要求される。この100分の1ミリの誤差がちょっとしたラインの継ぎ目に生じるだけで歩留まりに影響が生じるのは必至で、この要求を確実にクリアできる日本の製造部材はやはり世界最高峰であるといえる。もちろんドイツやスイスをはじめヨーロッパ勢にも凄いところはたくさんあるが、そのような製造ラインの要求を的確に捉え、かつ安価で供給できるのは、下請けという体制下で地道に試行錯誤を重ねてきた日本のメーカーならではだと思う。大手では自動化ラインに不可欠とされるLMガイド生産のTHKや自動製造ロボットの世界的企業、不二越などの製品は中国での半導体製造設備やスマートフォーンの量産需要で現在納期が半年以上待ち。世界でどれだけその精度と性能が認められ引っ張りだこなのかがよくわかる。彼らに限らず製造関連設備を販売している日本メーカーはどこも好景気だ。

彼らの製品の部材供給を支える日本の中小町工場も然り。ポイントはその彼らの持つ力を独自に展開できないか?という事。特に自分が実際に現場からの要求に基づいたリサーチから、このような個々の部品の精度や品質だけでなく、日本勢の中小町工場がかなり卓越していると感じるのは総合力だ。
通常(自分の知る限りだけど)、日本の場合には一つの大企業の周りに複数の中小町工場が集結し、向こう三軒両隣状態で親元から出てくる膨大な量の仕事をこなしている。まあこれが見方によれば典型的な下請け体質の温床であり、また一所懸命といった独自の忠誠心を生み出している基盤にもなっているのだが、時として、このような連携を含めた体制がアメリカでは見られない総合力として非常に価値がある。例えば「切削した部材に特殊な表面処理を施し、そこに緩衝材を張り付けて板金のフレームに固定する」みたいな部材の複合アッセンブリの要求を一社に頼めば、向こう三軒両隣を巻き込んで対応してしまうといったサービス受けることができるのだ。

アメリカでも勿論、対応できる会社はあるとは思うけれど、この手の依頼をかなり受け自分も何とか客先の希望である現地での対応を実現するためにリサーチをしているが、正直シリコンバレーにおいて総合的な対応を適正な価格と納期で対応できるところは殆どない。その理由はなにか? 少し例えが違うかもしれないがアメリカの場合、歯医者は、虫歯を治療する歯医者と歯茎を治療する歯医者、矯正をする歯医者は全て異なる。つまり分業が普通。これは多分、専門的な技術や習得の過程においての分業が一般化している点もあると思うが、ポイントは責任の所在の明確化でないからだと思う。製造現場でも然り。例えば精密加工に特殊な表面処理の場合、万が一完成品の公差に問題があったとしたら、それが切削加工精度に起因するのか表面処理のプロセスによるものなのかを明確にすることが難しい。お国柄このあたりの責任の所在の明確化が難しいことを嫌うために多分、分業が明確化しているのではないかと愚考している。

当然アメリカにおいても、特に製造ラインをつかさどる部材に関しては、このような複合アッセンブリが必要な部材の要求は非常に多いはず。そんな対応ができる日本の中小町工場には実際かなりのアドバンテージがあると考えられるのだ。そして、アメリカに比べて圧倒的に工賃の安い(良くも悪くも)日本で信頼のおけるパーツを短納期で入手ができるという事になれば、これはきっとかなりの潜在需要ではないか?
勿論、十分なマーケティングが必要になることは大前提だが、製造技術を支える制度と品質に基づいた総合力にフォーカスしてアメリカの市場をリサーチしてみるのも、この手の対応が可能な企業にとっては有意義かもしれない。そして是非高い志をもって市場参入に挑んでもらいたい!

 

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