Archive for 12/28/2017

現場を知って10%の可能性を捜せ!

2年前からTESLAのGIGAファクトリー内でセル生産を手掛けるPANASONICのプロジェクトに携わっている。特に今年は急ビッチで進む動きに息もつけないような忙しさだった。一辺が1キロ近くある世界最大の電池工場に総工費2000億円以上をかけた大プロジェクト。日本から常時400人近い出張者が入れ替わりで常駐し、昼夜週末を問わず立ち上げ作業に従事している。
アメリカに来た30年近く前、自分がメインで携わっていたのは当時世界を席巻していた日系TVメーカーのアメリカ/メキシコ工場の品質管理プロセスの立ち上げだった。最盛期のSONYはサンディエゴに近接するメキシコ、ティファナの工場に3,000人以上の従業員を有してトリニトロン技術のTVとPC用ディスプレイを生産。アメリカ市場に確固たる地位を築いていた。SONYのみならず、PANASONIC, HITACHI, JVCなど、最盛期には日本メーカーだけでアメリカのシェア40%。物凄く勢いがあり若い自分は各社のプロジェクトに携われたことが本当に嬉しく夢中になって仕事に没頭していた。今回のプロジェクトは, そんな当時の自分を彷彿させる。この歳になって日本企業の壮大なプロジェクトに再び参加できることは本当に嬉しく老体に鞭打って(笑)頑張っている。

ところで今回のプロジェクトにおける自分のミッションは、生産現場における必要部材の日本および海外からの調達と消耗品や生産技術関連治工具生産の現地化だ。特に後者は、日本から搬送し設置された巨大な生産設備とプロセスラインに使用するパッキン等の消耗部品をこちらでも調達可能にしようというもの。切削部品やプレス部品など日本の協力工場で作られていた多種の部材を自分の地元であるシリコンバレーの町工場での生産に切り替える試みだ。

以前から何十回も言い続けているが、シリコンバレーはITのメッカだけでなく、実はハードウェアの一大生産拠点。70年代から半導体産業をつかさどる生産、製造設備の殆どがこの地で作られてきた。そしてその状況は今も変わっていない。クリーンルームで使用される高精度な設備に使用される部材、メディカル機器に使用されるチタンをはじめとした特殊材料の加工や精密板金加工、I-phoneをはじめとした超精密実装などは、正直言ってお手の物だ。そんな事ができる町工場が未だに2,000社以上存在している。実際のところ今回の依頼に関しても、殆どの部材が製作可能。日本では未だ一般的なメートル法の紙の図面でも(勿論DXF等のファイルがあればさらに簡単)対応してしまうところがすごい。現状約90%は現地化を実現できている。

ただ、そんな中、自分も携わってきて分かったことは、残りの10%近くは確実に日本にアドバンテージがあるという事だ。これらの部材は実際に日本の町工場に製造のお願いをしている。

例えば、まず加工材料からいくと圧延されたSUSの鋼材など寸法や公差の精度は日本のものが圧倒的に優れている。ものにもよるが同じ板材で測定場所で0.2mm程度の誤差は一般的。そして日本基準の1.0mm厚の鋼材はアメリカには存在しない。またSUSの5㎜角の棒材なども自分の知る限り入手は不可能だ。加えて日本が誇るプラスチック材料でも耐熱部材(例えばポリアミドロイドなど)はDUPONTなどが商品を供給しているが、ユニチカのUNILATE等の特殊硬質部材は、あまり一般的ではない為、加工部材として少量の入手が難しかったりする。コスト面では板金加工など圧倒的に日本の方が安価だ。このあたり輸送費のコストがかからない小物などは確実に可能性があると考えられる。最後に納期も現状アメリカにおいては暗黙の了解的に2週間というのが一般的で日本で言う即日製作や5日以内の短納期というのは殆ど存在しない。つまり、このような現場の状況を具体的に精査して知る事ができれば、日本の技術や生産体制でアメリカでも勝負できる可能性は十分あるという事が言える。上記の例からだと全体のわずか10%程度かもしれないが、それこそ探せばまだまだ山のようにあるはず。そして追従を許さない製造技術や製品があれば恒久的な需要も見込めそうだ。勿論、そこに食い込んでやろうという志はいつも言ってる通り一番大切になるが…。

昨今の日本の中小町工場は2020年のオリンピック景気や中国の空前の半導体需要など国内景気の良さもあって、少しグローバル化に対する意識が薄れている気がする。行政の支援活動を通じて、また実際に話を聞いても残念ながらその傾向が顕著だ。しかしながら、確実に押し寄せる自動車産業の破壊と創造、中国の深圳地区に見られるICTを駆使した新しい「ものづくり」のインフラと開発、製造力の強大化を考えると来たるべき日本の製造業における革新とグローバル化は間違いなく必須。そして、それを今実行に移すか移さないかが将来を握っていると言っても間違いではあるまい。

2017年もあと少しで終わろうとしているが、2018年は更に世界の動きに目を向けて自身の武装と将来の展望に関して関心を持つことが重要だと思う。上記のように現場を知れば、今ならまだまだチャンスはある。この芽が他のアジア勢に摘まれないうちにアクションを起こせるかが生き残りのカギになると強く言いたい。

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