Archive for 07/06/2016

新陳代謝を意識する!

  自分の取引先に業務用マイクや、ヘッドセットで世界的にも有名なオーディオテクニカという会社がある。同社はもともとレコード針の専業メーカーだった。レコードプレーヤーが全盛だったころ、同社のレコード針は、かなりのシェアを誇っていたのだが、レコード針がどんなに優れていても、レコード盤にホコリがついていたりすると鮮明に音源を再現することはできない。そこで同社はレコードをきれいにするレコードクリーナーを独自開発。ブチルゴムを使用したこのクリーナーは非常に高い性能で音楽愛好者の標準となった。しかしながら時代の流れはレコードからCDが全盛に。残念ながらレコード針の需要はなくなってしまったが、このクリーナー技術で同社はあらゆるものの塵やホコリを取ることが可能なところに着目。当時需要が増えてきた液晶パネルの積層フィルムのクリーナーとして大型のクリーニング装置を開発。これが業界標準となり、現在ではフィルムやスクリーンの製造プロセスを中心に販売を展開、同社の事業の大きな柱となっている。

また自分の顧客であるPANASONICのメキシコ工場では、エレキギターで世界的に有名なFENDERのスピーカーシステムを生産している。かつては世界を風靡し、有名ミュージシャンの必携アイテムだった同社のギターもデジタル化の流れと、若者のバンド離れから売り上げは激減、かなりの苦境に立たされていたが、自社が持つピックアップのアンプ技術を利用し、カーオーディオの業界に参入、今はフォルクスワーゲンの車種に採用されるなど新分野での業績を伸ばしている。

 実は今回このような事を例としてここに挙げたのは、同じようなアクションで、躍進している「ものづくり」のスタートアップと出会ったからだ。東大阪にあるDGタカノは節水ノズルの専業メーカー。90%の水量を削減する驚異の節水ノズルで飛躍的に事業を拡大。わずか1年で10億円の売り上げをたたき出している。
 同社社長、高野さんの実家は東大阪にある町工場。同社は3代にわたってガス栓のコックだけを生産する専業メーカーだった。しかし無煙ロースターなどが主流になりガス栓の需要は激減。それでも残る需要に対してガス栓という安全性が重要視される製品ゆえ、1000分の3ミリという精度を具象化できる職人技が不可欠で細々とだが経営は続いていた。そのような状況のなか、高野さんとしては毛頭家業を継ぐ気はなく、大学卒業後は起業をめざしWEB制作会社を立ち上げた。そこに仕事を依頼してきた1号のお客が節水ノズルの会社だった。WEB制作を始めるに当たり、その商品をみた高野さんは「こんなものがこんな高く売れるんだ」と驚愕。これならうちの工場でいくらでも性能の良いものが作れると判断。現場を身近に見てきた彼は、さっそく試作をスタート。試行錯誤のうえ素晴らしい節水ノズルを作り上げる。これが同社のヒット商品であるBUBBLE90だ。空気と水を極限まで水量を制限しながら混合させて吐出させる技術は、まさに100分の3ミリの精度が確立できて初めて実現できるものだ。この技術をフル活用した構造で既に各国での特許を取得。昨年からアジアをはじめとした海外でもリサーチを続け、年内には本格的に水不足が深刻なカリフォルニアを起点に全米展開を計画している。

いままで多くの中小町工場のオーナーの皆さんと会ってきて感じる事の一つに、「何が特徴(売り)かわからない」というのがある。企業のWEBサイトを拝見しても「不可能を可能にします」「難加工ならお任せください」「ISO取得による優れた信頼性」「高品質、短納期、低価格」等々、ほとんどの会社が同じ言葉が並べているだけ。
これらは、はっきり言ってしまえば誰でもできている事で特徴でもなんでもないと思う。仮にこのような主張を継続しても問題ないというのならそれはそれでよし。ただグローバル化を意識するのであれば、これではダメだ。

新陳代謝という表現が先に挙げた例に的確かどうかはわからない。しかしながら、もしその気があるのなら、きっとどの会社も自社の持つ自身も気づいていないような優れた技術があるはずだと私は考えたい。何とか、それを見出し光を当てる事はできないか?それにはやはりマーケティングが非常に重要だと思うのだ(いつもここに帰結してしまう感があるけど…^^;;;)。そしてそれを発見する事が先ず新陳代謝の第一歩だ。

これからの生き残りには、この新陳代謝がきっと不可欠になるだろう。そのためには、今皆さんが得意だと思っている技術も対応も品質も殆どアドバンテージはないということを理解することが非常に重要だと思う。特にグローバル化に関してはこの理解が肝心。例えばシリコンバレーには、試作に特化した中小町工場が数千社あり、自社製品を除いて、皆さんが自慢げに語っている「ものづくり」や「匠の技」の類は殆どこちらにあると思って間違いない。
必要なのは、そのような状況を踏まえたうえで新たに考え方や体質を変えていく志だと思う。先の例のように、自分たちが今製造して客先に納品しているものが、ただ単に品質や価格や納期で評価されるだけでなく(勿論、これに特化することができればそれでOKだが)、そこで培われた技術や経験を駆使して新たな市場を創出するためのリサーチやマーケティングを始める事で、既存からの脱却を意識し、新たな展開を考えてみることは、シリコンバレーを見るにつけ、グローバル化を目指す中小町工場には不可欠だと感じるのだ。是非、自社の新陳代謝を意識してほしい。

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