Archive for 01/07/2016

「下町ロケット」を観て年頭に考えた事

2016年が明けました。今年もよろしくお願いします。

昨年、日本で高い視聴率を誇ったドラマ「下町ロケット」をクリスマス休暇を利用して鑑賞した。ドラマとしては秀逸! 構成や考証なども素晴らしく胸のすくような展開で非常に楽しませてもらった。研究開発を通じて夢を追い続ける佃社長と状況を直視する殿村経理部長とのやり取りも現実味があったし、随所にみられる下請け軽視の大手というよりは銀行の対応なども、自分にも思い当たる経験があるだけに、懐かしさも併せてあっという間に観終ってしまった。

さて、ドラマとしては素晴らしかったこの物語だが、今まで日本の多くの中小町工場と携わってきた自分の感想としては、欲を言えば、ほんの少しだけでも「世界を意識した内容が加わっていればなあ~」と考えてしまった。勿論、本当に余計なお世話なのだが、グローバル化に対して意識が低下している感のある昨今の日本の中小町工場の視聴者に対して、ちょっとでもそれに向けた気持ちを高揚してもらえたらと思った次第。

正直なところ、今まで過去数年間に200社近い日本の中小町工場の経営者にお会いしてきたのだが、番組で殿村部場が話していた目先の利益を最優先させる事がやはり先決で(勿論これは重要なことだが)、将来に向けての研究開発を実際に進めているところは少数派、進めているところも殆どがプロダクトアウトの場合が多かった。そしてグローバル化を意識し実際に川上であるアメリカ進出を実現した企業は僅か5,6社しかなかったのが現状だ…。

安倍政権になって、新たな政策の施行(補助金のバラマキ…^^;)に加え、2020年にオリンピックが決まり日本国内の景気が上向きになったことに呼応するかのように「何だ日本でも十分行けるじゃん!」的な状況は非常に顕著になってしまった。民主党政権で仕分けをどんどん行っていたころ、中小機構のアドバイザーをしていた私のもとには月に1件ぐらい(それでも少ないけど)は、アメリカ進出に関する調査依頼があったが去年は年間を通じて僅か1件。 昨年11月に山梨県で講演会を行った際、主催者は「これからの先行き不安もあり、個別に声もかけて100社ぐらいの企業が集まる予定」という事で、披露宴会場を準備し多くの参加者を収容できる手配をしていたにも関わらず、実際には4分の1程度の参加者しか集まらなかった(勿論、私の話というところが一番大きな原因だったと思うけど…^^;)という現状。
これらを考えると、グローバル化という認識に関して言えば、その言葉のみが先行し、実際には笛吹けど踊らずといった状況が強く感じられたのが昨年だった。

しかしながら、これは何としても変えていかなければならない。先のブログに書いたように、世の中、特にシリコンバレーは、ガソリン自動車の既存産業の破壊と新規自動車(EVと自動運転車)の創造を物凄いスピードで進めている。日本が世界に誇る最後の牙城を怒涛の勢いで攻め崩そうとしているのだ。本来であれば、その需要に対して一番アドバンテージのある日本の中小町工場が、このチャンスを何とか生さなければ、かつて栄華を誇っていた半導体やTVをはじめとした諸産業と同じ末路をたどる可能性は非常に高いと言わざるを得ない。
メディアの力を借りてでも、この状況を理解してもらい、2016年はグローバル化の意識をもってもらう必要がある。この時期を逃すと本当に手遅れになりかねない…。そんなことも、このドラマを観て考えてしまった。最終回では、出来ればNASAやSPACE Xのロケットに世界一の技術を誇る佃のバルブが採用され、その打ち上げを社員が見守っている場面を作ってもらえたら、少しでも視聴者の意識が高まったかもしれないと思うとちょっと残念だ…。

遅ればせながら、「世界一受けたい授業」の講師である神戸国際大学、中村教授のFEEDで、PANASONICのTV事業部の総本山であった茨木工場がなんと既に閉鎖されて更地になり、YAMATO運輸の備蓄倉庫と宅地になった事を知った(2014年には決定していたとの事)。かつては世界を席巻した日本のTVメーカーの中でも最高の生産設備と能力を有し生前のダイアナ妃や鄧小平副主席をはじめ世界の要人の視察コースに常に選ばれていた名工場、自分も同社のメキシコ工場のプラズマテレビ生産の事業計画の際には日本に帰るたびに訪問していた工場だった。閉鎖に伴い、そこに仕事があった数百社の協力工場の事を考えると、やはり複雑な気持ちになる。同じようなことがこの先、日本の自動車メーカーの工場では起こってほしくないのだが、その可能性も考慮したうえで、出来れば今年は真剣にグローバル化を意識してもらえたらと思う。

今まで何度もこのブログでは触れているが、自動車産業に限らずあらゆる産業で日本はまだまだ可能性を秘めている。それをつかさどる99%の中小企業、町工場が世界を意識し、今年もきっと新しく出会うであろう会社の中から、全てとは言わないまでも1社でも多く真剣に海外相手のビジネスを考えてくれる事に2016年は期待したい!

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