Archive for 04/01/2014

「技術は売れてこそ価値がある」という認識

2月と3月は、日本の中小町工場の若手オーナーたちをはじめ、JETROでお手伝いしているイノベーションプログラムの参加企業、そして若きメーカーズのリーダー達など多くの方々と会い、色々と意見交換させてもらった。自分にとっても、ものすごく勉強になる話をたくさん聞けたばかりでなく、これからの日本の将来に対し海外にいる自分たちはいったいどのような応援ができるのか?何を持って貢献できるか?という自分の志のヒントになるような内容も数多く含まれていた。
そんな中で強く思ったのは、以前からこのブログで何回も触れている「技術は売れてなんぼ」つまり「技術は売れてこそ価値がある」という認識の重要性だ。
以前、自分のメンターでもある方との会食の際に日本の製造業の行く末において、この言葉を伺い自分も激しく同意すると共に、このあたりの意識改革が重要という事で大いに盛り上がり、それ以降、事あるごとに表現を変えて、この認識を主張してきたのだが、今回、製造業に携わる色々な皆さんの話を聞いて、これは「もっとストレートにも主張すべきだ!」という思いを新たにした。

以前、日本で航空宇宙関係や原子力関係の仕事に携わっているような高いレベルを持つ日本の町工場の皆さんの視察のお手伝いで、シリコンバレーの板金、切削加工を行っている工場に案内したことがある。中国人経営のその工場は、お世辞にもきれいとは言えず、日本ではもう見なくなってしまったような古い切削機や旋盤を使用し、もちろん5Sなどとは無縁の環境で作業をしていて、現場を見た皆さんからは口々に「よくこんな工場に発注するお客さんがいますね…」、「製品の仕上げはかなりいいかげんですね」、「品質の基準はきちんとできているんでしょうか?」など口々に言いたいことを言っていた。しかし、実際には半導体製造機器の大手アプライドマテリアルやインテルからこの工場は仕事を取っていたのだ。 つまり彼らのスタンダードでは重要と位置付けられている5Sや過剰品質は、業界の最大手で先端を行く企業から仕事を取ることには、あまり関係がないという事を裏付けていたわけである。
そして、この話には続きがあって、あまりにもお連れした皆さんが、「うちのものづくり技術なら何でもできる」的な主張をするので、この工場の中国人社長に「彼らは凄く難しいものでも作れると言っている。もし何かオタクの技術や設備で不可能な製品の依頼がきたら彼らに依頼してみてはどうか?」と話したところ、果たして後日その工場長が、少しばかり複雑な曲面加工のある大型の切削部品の依頼をしてきた。そこで、先の視察に参加した工場5社に投げたところ、結論はというと結局できる会社は一社もなかった…。確かに技術的にできる会社は2社ほどあったのだが、価格は途方もなく、納期も全然要求には合わないものだった…。
この結果から見るまでもなく、どんな素晴らしい技術があっても条件がそろわず売れなければ価値はないのだ。

お手伝いをしているJETROのイノベーションプログラムに採択された企業は、25mのプールにコップ一杯の液体を入れてもその成分を解析してしまう、吐息からその成分を解析しガンを告知できる、そして次世代の金属結合方法で、従来の冷却装置(ヒートシンク)の概念を変えてしまう新しいヒートシンクや熱交換器の従来サイズを数十分の1に縮小できるなど、とにかく聞いていてワクワクしてしまうような技術をお持ちなのだが、当然、先ずマーケットがあることが前提になるし、その技術が適正な価格でニーズに確実にマッチするかといったような、いくつもの要因が必要になるわけで、これらがクリアされなければ製品は売れない。やはり技術は「売れてなんぼ」なのである。

かたや今回話をしたハード系スタートアップの若者たち、例えばMoffの高萩君の製品は独自の技術に立脚したものではなく、極端な言い方をすれば、あるものを組み合わせたイメージが強い。ところがその組み合わせを独特の感性とマーケティングデータによって具象化し、さらにワイヤレスとウェアラブルという最新のトレンドをつなげる事によって、あっという間にクラウドファンディングで$70,000近い資金を集めるような有望な製品に仕上げている。つまり現状では、このようにマーケティングオリエンテッドという状況が明白なのだ。

それだからこそ、中小町工場の皆さんで独自の技術や既にオリジナル製品を持っているのであれば、売りこめる市場を見出し、それに関するデータを集めR&Dによってさらに洗練し、そして最近のトレンドにもうまく立脚させることが可能なら、技術的には十分アドバンテージがあるのだから、とてつもない製品や商品が生まれるチャンスがあるのではないか?とさらに強く考えるに至った次第である。
つまり「技術は売れてこそ価値がある」という認識を新たに肝に銘じることによって、マーケティングを基軸とした戦略を考えて、是非、新しい可能性に挑戦してもらいたいと思うのだ。

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