Archive for 06/16/2012

テスラモーターズの戦略から考える。

5月の終わりに、世界ではじめての民間宇宙貨物船が宇宙ステーションへの運搬任務を完了し無事地球に帰還したニュースが流れた。この宇宙貨物船を開発した会社はSPACE X。シリコンバレーのもっとも成功した起業家の一人であるイーロンマスクが2002年に設立した会社だ。イーロンマスクはアメリカでもっとも普及しているオンライン決済システムであるPAYPAL(最近日本でも普及しつつあるらしいが)の開発者で、その会社を世界一のオンラインオークション会社であるebayに売却して得た巨万の富で、2002年にこのSPACE X社を設立。これまでに何回かの打ち上げを行ってきたがいづれも失敗に終わり今回が最初の成功になった。この成功により、本格的な宇宙開発にも弾みがつくとNASAをはじめとした関係者は語っている。
実はこのイーロンマスク、電気自動車(以下EV)のベンチャー会社テスラモーターズの創業者でもある。SPACE Xに遅れること2年後の2004年に設立されたテスラモーターズは4年の開発期間を経て2008年に最初のロードスターモデルを発表しセンセーショナルなデビューを果たした。その後2009年に新しいセダンを発表したが実際の発売は今年(2012年)になる予定(6月22日に販売開始になりました)。同社にはトヨタが2010年に50億円の出資をしたことでも話題になっている(って過去の話になってはいるけど)。そして2013年にはRAV4のEVモデルを発売するという話もあるが未だに不透明だ。自動車メーカーとして鳴り物入りで参入してきた割には未だに発売されたモデルは2車種のみであり実際には何をしているのだろう??という疑問も少し抱かざるを得ないのだが、実はこの会社が最も力を入れているのは高性能車載用バッテリーの開発だ。自社ブランドの車であれば車種が多ければ話は別だが、当然モデル数をある程度確保し台数を売らなければ会社の利潤を維持することは難しい。特にものすごい額の初期投資が必要な自動車メーカーへの参入ということになればなおさらだ。ところが将来的に電気自動車には不可欠になるバッテリーであれば自社のモデルに限らず性能が評価されれば、当然不特定多数のメーカーへ販売ができるわけだ。この方が会社としての利潤を確保することは容易だし車種別の生産ラインの構築も必要なくなるので投資も抑えることができる。決済システムという物販には必ず必要になるインフラで巨万の富を得たイーロンマスクが考える自動車メーカーのゴールがここにありそうだという事は容易に考えられる。同社は既にメルセデスやVW向けのバッテリー供給に関する提携を結んでいるという。
実はこのEV用のバッテリーに限らず、家庭用蓄電池をはじめ、細かいものでは長寿命のタブレットPCやスマートフォン用のバッテリーなど、この分野の需要は急激に伸びてきている。そんな需要に呼応するかのように、アメリカ国内だけでも既に24社のバッテリーメーカーがあるようだ。彼らが、EV用に限らず、いろいろなマーケットにおける覇権の確保に精力的に技術開発をおこなっている。かつて日本は高性能バッテリーの一大生産国でもあった。SANYOはもとよりPANASONICやSONYの高性能バッテリーや電池は世界中で評価されていたのだが、SANYOが亡くなりPANASONCやSONYも巨額損失を余儀なくされた今、これらの事業にも少なからず影響が出ていると思われる。そして本当の意味で彼らの実績を支えてきた数多くの中小協力工場はどのようにして今後を考えていけばいいのか??2次電池用材料の精製技術をはじめ殆どの技術は彼らによって確立されたものだ。現在では韓国、中国のメーカーが、こぞってこれらの技術をもった会社との提携を進めようとしているという。日本人としては何とも歯がゆいのだが、これも今後の方策としてはありかもしれない。そして、可能であれば今アメリカでHOTな産業になりつつあるこちらのバッテリーメーカーにも自分たちの培われてきた技術を元に積極的にアプローチをしていけば、間違いなく日本の大企業に依存しているよりはポテンシャルがある展開ができるのではないか思う。志のある中小企業には、できればこんなアクションを早期に起こして何とかアメリカでの躍進を実現してもらいたい。

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