Archive for 07/01/2010

TOYOTAとTESLAの提携をどう見るか?

 一昨日、シリコンバレーの電気自動車メーカー<TESLA MOTOR>が、ナサダック市場に上場を果たした。目標株価の$17をはるかに上回り、初日は$23まで上昇、幸先のよいスタートになったようだ。TESLAは、2003年に設立。代表者のイーロンマスクは先月39歳になったばかりの若手起業家だが、インターネット決済システム、PAYPALの創業と売却で財をなした億万長者だ。その彼が私財とVCからの資金を調達して運営しているTESLAは2006年に最初の電気自動車「ロードスター」を発売。1000万円という価格にもかかわらず、発売台数はすべて完売。今でも数百台のバックオーダーを抱えているという。しかしながら会社自身は、莫大な先行投資の関係でまた一度も利益を上げていない。そんな、TESLAがどうして上場できたのか?その背景には5月に発表された世界一の自動車メーカーであるTOYOTAとの事業提携と同社からの50億円の資本投資が大きく関与していると思われる。
 2008年のリーマンショック以降のアメリカでのTOYOTAは、ご存じの通り、その急速な業績の悪化に加え今年に入ってからは、GMとクライスラー倒産の腹いせとも思える(個人的にはそういう要素もあると思う)、リコール問題の嵐に襲われ、それこそ瀕死の状態。そこへ今年の3月にはGMと合弁で設立された西海岸最大の自動車工場であるNUMIの完全閉鎖を敢行し、5,000人近い従業員の解雇と数百社にもおよぶ関連企業へ多大な影響を与えたということで、これまた矢面に立たされ完全に四面楚歌の状態だった。このNUMIの工場は結局売却することもできず、空家のまま今日に至っていたのだが、5月のTESLAとの提携発表の際には、この工場の再利用(もちろんすべてではないと思われるが)と、従業員の再雇用(解雇した従業員の3分の1程度)を明言し、その提携発表にはシュワルツネガー州知事も同席するという非常に大々的なものになった。そこに50億という大規模な投資を加えたということが、今回のTESLAの上場に大きく寄与しているといっても過言ではないだろう。
 さて、これから両社の提携はどのようなかたちで進んでいくのだろうか? 当然日本のTOYOTAとの連携であるから自分的に期待したいのは、もちろん電気自動車という全く新しい分野なので一体どれだけのTOYOTAの協力メーカーが、この新規のプロジェクトに参画できるかは全く分からないのだが、少なくとも関連の機構部材や電装品をはじめとした多くの協力メーカーが、この提携によってこちらへ進出し、これらの供給にとどまらず技術面にくわえ製造、生産の分野においてもどんどん参画して電気自動車という新たな分野で再びアメリカ市場において、中国をはじめとした新興勢力の追従を許さない市場の核を築き、日本企業の発展に期待したいところなのだが、創業わずか7年の新しい会社、それも完全にアメリカのIT産業の礎の上で運営されている会社が、どれだけカンバン方式をはじめとした日本の生産性重視の体制を理解し咀嚼し組み入れて行くことができるか。つまり電気自動車という全く新しいコンセプトによってデザインされた製品に、どれだけ日本のそのような経験値に基づく技術が寄与できるのか?ということを考えると、ここには大きなクエスチョンがのこってしまう。
 考えてみると、今回の提携自身、上記のようなTOYOTA側のアメリカにおける立場という点からみると、もしかしたらTOYOTAの米国での起死回生を図るための一つの手段ではなかったかということも十分に考えられる。つまり、この提携によってスタートアップ、それも創業7年、トップもわずか30代という企業に50億もの資金を提供し、その会社が上場するという話題性でTOYOTAのアメリカに対する貢献(?)という立場を確保し、加えて閉鎖したプラントと雇用の救済も同時に解決するというシナリオが実はできていたのではないだとろうか?
 う~ん、もしかしたら後者に部がありそうな気がだんだんしてきてしまった。もしこれがそうだとしたら、いつもアメリカにおける日本の製造業の踏ん張りを期待している自分にとってはかなり残念だが。。。とりあえずはこの先の動向を見守るしかあるまい。少なくとも2012年に発売予定の同社の廉価版セダンに、どれだけTOYOTAの技術が寄与しているかが見ものだ。
 かつてITバブル華やかなりしころ、日本で携帯市場に君臨していたNTTドコモは、料理の鉄人風に「私の記憶が確かならならば」アメリカでの同社の通信方式の採用と普及を目指し、当時のAT&Tに1兆円近い投資をしたと思うのだが、今この地では「ドコモはどこ(も)?」と聞きたいくらい、その名前は聞かないし、彼らの持っていた技術が採用されたという話も聞かないところをみるとあの投資はすでに霧散してしまっただろう(1兆円ですよ。1兆円)。
 少なくとも現実に湯水のごとく開発費を使い、いまだに利益を出したことのないTESLAに投資された50億円が、TOYOTAの名誉回復のためのこの一過性のNEWの広告費だけとなり、いつの間にかどこかへ消えてしまったということだけは、何としても避けてもらいたいものだ。

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