Archive for 07/08/2009

ソニーの凋落

 最近のソニーは方向性を間違ってしまったと思えてならない。特にアメリカ人が経営のトップになってからは、会社の方針だけでなくスピリットも残念ながら欧米流になってしまったようだ。米国市場でのTV販売台数はSAMSUNG, LG-フィリップスに続いて日系企業では唯一気をはいて3位につけていたSONY.しかしながら昨年より始まった景気減退のあおりをまともに受けて大きく方向転換。米国とメキシコにあった3つの工場のうち、昨年11月にピッツバーグを、そしてこの7月には、メキシコにある2つの工場のうちのひとつを閉鎖。今後は、なんと同じく国境に隣接するメキシコの町にある台湾系の工場でODM生産をするらしい。つまりまったくSONYとは関係のない工場で、SONYのロゴを付けたTVが生産されるわけだ。それも生産形態はODM.つまり設計もすべてこの台湾系の会社が請け負うシステムであると聞いて、残念ながら大いに失望した。
 自分たちの若いころ、70年代、80年代、SONYは家電製品、それも若者に不可欠な製品の王道を行く存在だった。トリニトロンを駆使した鮮明なカラーTV,一世を風靡したウォークマンの発売、そして音質とデザインに優れた数々のオーディオ機器、そのどれもが当時の若者にとっては神器に等しかったのではなかったかと思う。やがて自分が社会人になり、仕事を通じて同社と取引するようになって、まさにそれらの製品を次々に生み出すクリエーティビティと、それを生産するエンジニアリングのレベルの高さは、「なるほど」と思わせる部分が多々あり、自分自身もこのような素晴らしい会社を取引ができたことが嬉しく、かつ色々と勉強にもなった。とにかく生産技術力が優れていて、独自の製造工程や歩留まりの向上に不可欠な数々の独自冶工具の開発。そして優れた検査技術等どれをとっても素晴らしく、かつ本当に他社に比べてエンジニアも若く、活気というより熱気を感じることが多々あった。これがさまさしく「技術のソニー」なのだなと、肌身で感じられたものだ。
 それが数年前に日本人からアメリカ人の社長になったとたん、「技術のソニー」の真骨頂は本当に音をたてて崩れ始めてしまった。今まで付き合いのあったメキシコの工場も、ちょうどデジタルTVの製造がピークを迎えつつあった時期で、そういう意味では変革期だったのだが、それでも工場の製造現場からは熱気も活気も伝わらなくなってしまい、ただ歯車が動いてものをつくっているといった雰囲気になってしまったことをよく覚えている。そして今回の決定。これはもう凋落というしかない。本来ソニーはものつくりを通じ、その開発力と生産技術力で世界を席捲しリードしてきたた会社ではなかったか?それが確かに今のデジタルTVは、極端な話、キットで簡単に作れてしまうのだが、設計まで丸投げしてしまい製造もしないとなっては、将来的に革新を起こすことはまず不可能だと思われる。まだTVの委託生産は全体の3分の1にとどまるということなのだが、少なくとも製造をやめてしまう姿勢を打ち出してしまったメーカーに未来はない気がする。それもソニーには一番頑張ってもらいたかったテレビ事業においての事なので、その思いはなおさらだ。
 かつてアメリカには、本当に優れた家電メーカーがたくさんあった。ジェネラルエレクトリック、RCA,ゼニス等々。。でも彼らが海外に生産拠点を移し、自らの生産を断念してしまった80年代から90年の前半にかけて、一社残らず家電市場から姿を消してしまったという事実を、同じ市場でしのぎを削ずっていたSONYは十分理解しているはずなのだが…。
 欧米人のリーダーとオペレーションの向かう先が、このような結末にならない事を長うばかりである。

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