Archive for 07/30/2008

「パラダイス鎖国」を読んで

2週間ほど前になるが、「パラダイス鎖国」の著者である海部美知さんの講演会にお邪魔した。彼女の本に関しては友人の湯川さんから「こんな本でたで~えんちゃんがいつも言ってたことや」と紹介された記憶があったのだが残念ながら、なぜか今まで読むタイミングを逃していた。今回の講演では、主に通信の立場からみたネット世界に関しての内容が中心だったが、本音をいうと自分としては海部さんを一目拝見したかったのと(失礼)、著書である「パラダイス鎖国」という本の中身に関することも少しは話題に上るのかな?という点に実は参加の目的があった。
さて会場で早速本を購入し(サインも頂いてしまって恐縮です)、ちょっと時間が掛かってしまったが数日前に読了。先ず結論を述べると、かなり面白くかつ感心した。というのは自分が1999年に起業してから感じてきた「日本」のあり方が実に的確に、そして端的にまとめられていたからだ。本の内容は「住みやすく、ビジネスもしやすくなった日本がゆえに日本人は海外にあこがれも興味も無くなってしまった」という現状と、その結果として世界の中から孤立していく状況、そしてその状況を将来的にどう打開するかの指針という構成だが、これが自分が今までもやもやと感じていた日本という国に対する不信感というか危機感を見事に表現し、かつ自分には見出せていなかった将来的にどのように打開していったらいいのかという答えにもなっていると思った。そして自分の中にあった大きな疑問、1990年の初頭、私の元いた会社は、OKI、MITUBISHI、PANASONIC、NECをはじめ多くの日系携帯電話(当時は自動車電話も含まれる)メーカーのアメリカとメキシコの工場を相手に商売をしていたのだが、1996年を過ぎたころから本当にスッと潮が引くように殆どの会社が撤退してしまったという状況(当時は撤退に関して色々な噂があって日本の携帯は小さすぎでアメリカ人の指では押せないとか、携帯が小さすぎて顔の大きさに合わないとか、そんな話もあったけど)があって、会社の業績に大打撃を受けた記憶があったのだが、この本当の理由に関しても本書の中で詳細に説明がされていた(ありがとうございました)。
 さて自分がその後、独立、起業して、アメリカにある日系の製造メーカーを相手に商売をはじめてから今日まで、自身も色々な側面で日系メーカーと日本人の消極的な姿勢を目の当たりにしてきた。日本の中小企業の優れた技術や製品の紹介で日本のものつくりの復権に貢献したいという自分のミッションに対して、かつては多くの会社が賛同、つまり商いの申し出をすると積極的に話しに乗ってきてくれたのが2000年の頭ぐらいから徐々に「うちは日本で十分間に合っているから・・・」的な返事をもらうことが増えたという現状があったり、アメリカの製造メーカー(日系も含めて)、それも品質や性能にこだわる製品を製造している現場で、独断場だった日本製の優れた副資材の数々がその地位を失い品質もそこそこで低価格なアジアの製品が積極的に採用されるという状況がいまでは一般的になっていたり、アメリカにある日系の大手製造メーカーにおいても韓国、そして台湾勢の猛攻に対して価格競争に巻き込まれ、どこと無く覇気を欠いてしまったような感じを受けてしまったり…とにかくこれらの全てが「パラダイス鎖国」という言葉で見事に表現され、そしてその現況に起因してしまっていることが理解できた気がする。この状況に対して、海部さんは「21世紀の緩やかな開国」という項で具体的な現状とそれに対しての急激では無く、できる範囲での打開策を挙げ、そして「アメリカに何を学ぶか」の項ではさらにアメリカこそが本当の「パラダイス鎖国」(確かにいわれてみればその通り!)という観点から、そのアメリカがどのようにして、その状況を替えてきたかを検証し、そして「日本人とパラダイス鎖国」の項でこれからの日本、そして日本人のあり方について説いておられるが、特に最後の「脱鎖国の日本人」に書かれている一寸した意識改革こそが本当に今一番必要なことではないかと、特に日本の若い人たちを見ていると感じるこことが多い。このような考えは自分のようなオジンの考えかもしれないけど、若い人を見ていると自国である日本の現状を憂うという気持ちがまったく感じられないのだ。 これに加えて本書の最初の章に記されていた「パラダイス鎖国。産業編」で、携帯市場からの一斉撤退の理由も把握はできたのだが、この状況を目の当たりにして感じた私の日本企業に対する強い懸念がある。その気持ちは今でも変わらないのだが、それは「日本の企業というのは、なぜ皆右へ習えなのだろう?」と言うこと。これは過去にもブログに書いた記憶があるが、何故あのとき、莫大な投資をしていながらせめて一社ぐらいは、その投資を回収するまで頑張るぞ!という大和魂を貫き通さなかったのか?そして日本で限られた市場の奪い合いをいまだに性懲りも無く継続するのではなく(こんなことしているうちにまさに漁夫の利でI-PHONEあたりに徹底的にしてやられてしまう気がしてならない)、海部さんが書かれておられるような中国、アジアを主体とした大市場に、かつてのSONYやHONDAのように黒船を豪快に乗りつけ再度挑戦状を韓国勢やNOKIA、モトローラに突きつけるような気概溢れる独創的な志を持った会社がせめて一社ぐらいあってもいいのでは、と思うのだけれど、この辺はいかがなものだろうか…。海外に生きる日本人、そして日本に未だに誇りを持つ身としては、これが非常にむなしさを感じるところであるが、機会があれば、ぜひ海部さんにこのあたりのご意見を伺ってみたい。

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「言われた仕事はやるな!」を読んで

友人の石黒さんが本を書いた。彼女は90年代初頭からシリコンバレーで奮闘してきた仲間の一人だ。現在は日本に戻り、彼女の会社である<ネットイヤーグループ>のCEOとして活躍し今年の3月に同社を見事にマザーズ上場に導いた女傑である。いつも会う時には、本当に気さくで気兼ねなく冗談を言い合い、時には私のくだらないオヤジギャグにも付き合ってるお茶目(失礼)な女性なのだが、この本を読んで彼女の仕事における信念と情熱、そしてその芯の強さとバイタリティを形成してきた生い立ちなどを、ようやく理解することができ(いまごろ、石黒さんごめんなさい)、いつも素敵な彼女に対する敬意の念がますます高まった。
この本「言われた仕事はやるな!」は、そのタイトルだけからみれば「なにいってるの?わかんな~い」という感じなのだが、これを理解する内容が、この本の中には具象化されていて、それのみならず彼女の生い立ち、スタンフォード入学、シリコンバレーでの起業、そして日本での会社経営という内容を通して、今の時代を生きるための処方箋と納得のいく人生を送るための指針を提供している。生い立ちによって形成された彼女の性格とスタイルが、スタンフォード大学という土壌によりさらにはぐぐまれることによって立派な太い幹に成長し、そして起業したシリコンバレーでの環境によって、より太い樹となり大輪を咲かせるまでに成長するに至った内容には、もちろん日本から見れば環境も違うし、教育も違うということで一蹴されかねない可能性も否めないのだが、少なくとも、これからの人間形成には非常に重要なヒントがいくつもりちばめられている気がするし、スタンフォードに入学しなくても、シリコンバレーで働かなくとも、そこで得られるのと同じ情報やビジネスの指針が、この本には豊富に語られている。特に自分が参考になったのは第5章の「失敗を許す」で、失敗に対する寛大なこの地の性格が、ここで成功したビジョナリー(伝導者)達の名言や逸話で分かりやすく説明されていて、これが「言われた仕事はやるな!」という変わった社風(かな?)の同社の根底にあるモチーフのような気がするのだが、自分にとっても同じような立場において、このような失敗を許容する懐の大きさをもつことの重要性を強く感じた。そのモチーフの上で「好き」を生かす組織の役割を構築し、自由とコミットメントの中で「言われた仕事」はやらずに120%のパフォーマンスを出し、そして自分の自由度を高めるために投資をさせる、という見方を変えれば「そんなことできるわけないでしょ!」と誰からも言われてしまいそうな会社を日本で運営しながら、その会社=若樹に上場というかたちで大輪を見事に開花させた彼女のパフォーマンスと生きざまは、やはり何物よりも説得力がある気がするのだ。そして立派に育って大輪を咲かせた若い樹がこのユニークな会社で次は花に限らずどんな素晴らしいものをさかせるのかが、実はちょっと楽しみでもある。彼女には大いにエールを送りたい!頑張ってね~!

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