もう石橋は叩いて渡るな!

 昨今の半導体不足に伴う大幅な設備投資の関係で、特にまだ製造設備ではアドバンテージがある日本国内のメーカーの特需(?)の関係からか、日本の中小製造業は、どこもそこそこの好景気のようだ。自分の会社と付き合いのある協力ベンダーも、発注した部材の納期の短縮や量産物の対応は難しいような状態が続いている。これはこれで良い感じなのだが、前回も書いたように世の中の動きはそんな中でドラスティックに変わっている。状況からみればアメリカも同じ。シリコンバレーにある半導体設備の最大手アプライドマテリアルズをはじめ、KLA TENCORなど、こちらの関連会社も大忙し。当然INTELやAMD, 新興のNVIDEAをはじめとしたCHIPメーカーも活況を呈している。おまけに新しいハードウェア産業の将来的な隆盛に伴う試作の需要で、当然それらの製造をつかさどっているこちらの製造町工場も、ひっ迫状態。最近は自分の取引先も、仕事をなかなか受けてくれない状況だ。

 さて、米国におけるこのような市場の需要は、日本の中小町工場にとっても間違いなくグローバル化のきっかけを作る非常に良いタイミングになっていて、これはコロナ禍になる以前から、ここではずっと(と言ってもBLOGをアップする3か月に一回だけど^^;)主張しているのだが、そこに興味を持ち、名乗りを上げた日本の中小製造メーカー数社と打ち合わせする機会をもった。各社とも、それなりに日本国内では実績もあり、現在の状況下でも安定した財政的余裕もあっての判断だと思うのだが、傾向としては非常にイイ感じで、自分としても持てる知識を提供し協力したいと考え、それぞれの相談に乗ることにした。

 大阪にある従業員100人ほどの精密機械加工業者。日本では、大手医療機器メーカーを中心に、作業的には難加工が必要なチタンなどの材料を利用した加工を得意としている。こちらへの進出に関しては、手術ロボットをはじめ自動化が進む医療機器や省人化に呼応した各種産業ロボットなどの試作加工市場への参入を希望。そのような見込み客は、こちらには山のようにあるので、そこに上手く参入して将来的な量産にもつなげたい考えで、まずRESEACHと市場の把握から進めたいとの事。現在、自分の会社では、大手の新規プロジェクトやスタートアップの試作案件もあり、その依頼を提供することで同社の力量を確認できるのではと思い、図面を出す前にNDAの締結を依頼しFORMを送ったところ、内容に関して「項目の中にある”万が一問題が生じた場合の処置に関してはアメリカの法規に準ずる”という部分には合意できない」との返事…

えええええ????

ちょっと何を言い出したのか、よくわからなかったので確認してみたところ、「何か問題が生じた際に製造は日本でするので、日本の法規に従ってもらわないと困る」との事…。いやいや、少なくとも仕事を依頼するのは、アメリカの会社、それも最先端の競争激しい分野でしのぎを削ってるところばかりなので、当然図面の内容はトップシークレット、それを実績のない海外の業者にお願いするのだから、そのリスクは大きく何かあった場合には
全てこちらで対処するのが常識だ。という事で、この部分を説明したのだが「それであれば諦めます。」という事であっさりおしまい…。
  う~ん、この状況どう解釈すればよいのか…。確かに海外進出に関してはPLをはじめ回収を含めたリスクは考慮する必要があるけど、これらを踏まえたうえでのチャレンジは大前提になる。これはどんなビジネスでも同じだと思うのだが、そのあたりの認識にかなりズレがあるようだ。確かに日本の中小町工場は、日本で長年、契約などとは無縁の中で生業を続けてきているので、その固定された考えを変える事は難しいし、それなりに慎重になるのかもしれないけれど、それが日本流でいけると思っている時点で既にグローバル化は不可能だ…。

 もう一社、これも大阪にある日本を代表する工場なら必ず使っている部品の専業メーカー。ここが経験と独自のR&Dでユニークな商品構成を持っていて、それを武器にアメリカに食い込みたいとの事。自分的にも、その製品群のうち、3種類は非常に興味がありアメリカでも需要があると見込めたので、まずそれに特化したマーケティングツールの製作をスタートして本格的に市場参入しようという事で、話を進めていた。
 ところが途中の段階で、その製品の中の1つはアメリカでの販売はしたくないとの事…

えええええ????

 この没になった商品、実はアメリカでは見たことないし、非常に需要もありそうで自分的には一押しと思っていたので、既に日本で販売もして実績あるんですよね?という事を前提に理由を聞いてみたところ、同社社長が「この商品はちょっとしたメカも入っていて、もしかして問題おこしたりすると厄介そうだから」との回答。そんなリスクは当然じゃないか!!
 市場のリサーチを含めて、まず製品をリリースし、それぞれの商品の反応を見たうえで戦略を立てることがポイントだと思っているのに、初めの一歩も踏み出さないのは、単に慎重になりすぎての判断としか思えない…。
これではヒット商品(勿論保証はないけど、売ってみる価値は十分あり)になる芽を自分で積んでるようなもんじゃないか…T_T。
 何とか食い下がったものの、社長の一存という事でおしまい…。

う~ん、やはり、日本の中小町工場の体質なんだろうか…。以前にも書いたけど、海外でも十分需要のありそうな優れた商材を持っている会社でも、未だに「日本での販売に限定してる」とか「海外への直送、直販はしない」というところが山のようにある。まあ、言い換えれば、そこまで無理しなくても食っていく事ができるんだろうな。

 確かに日本は中途半場に(というかそこそこの)市場があって、物価をはじめ、リビングコストも安いし、年金や保険制度も充実していて、それなりに収入を確保できれば生活するには十分という環境も、リスクを取らず保守にまわってしまう大きな要因の一つだと思う。
 ただ、この先その状況が保証されるかとうかは不透明。特にオリンピックの見込み収入減や、コロナによる拠出金の増大、そして経済自身の衰退に伴う将来的な需要低迷など行く先が見えない時期だからこそ、可能性を見出して是非海外を視野に入れてもらいたいと思う。加えて中小町工場が今までの安泰に満足することなく、これからは「うちは大卒の初任給1000万円出します!」みたいなところが増えて、大手を凌駕する勢いを是非持ってもらいたいと思うのだ。
 そのためには、やはり考え方を根本的に変えなければいけない。海外との取引も昔とは異なり、今は情報収集が簡易で、小口の物流システムもしっかり確立され、また売り上げ回収もLCのような旧態依然の方式な消えてなくなり、WISEのように銀行にサポートさせて送金対応が可能になったりと、誰でもチャレンジできる土台は出来上がっている。
 石橋も昔の構造ではなく今はITの力でしっかり強度も安全性も保障されているはずだ。そこを昔のように叩いて渡る必要はないという事を理解して、是非とも果敢に世界にチャレンジもらえればと思う。


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